中国オッポの日本法人であるオウガ・ジャパンは2025年6月に新製品発表会を実施し、スマートフォンの新機種「OPPO Reno13 A」「OPPO Reno14 5G」などを発表しました。なかでも、ミドルハイクラスのOPPO Reno14 5Gは、日本から世界に向けて打ち出す新機種としてアピールした一方で、携帯大手からの販売はなくFeliCaも搭載していないのですが、そのことからは国内のスマートフォン市場の競争環境が非常に厳しくなっている様子を見て取ることができます。
携帯大手からの販売がなかったOPPO Reno14 5G
今年の5月から6月にかけて、多くのメーカーからスマートフォンの新製品が相次いで発表されました。6月19日に新製品を発表したのが、オッポの日本法人であるオウガ・ジャパンです。
同社は今回、スマートフォンやタブレット、ワイヤレスイヤホンなど複数の新製品を発表しましたが、なかでも大きな注目を集めたのはスマートフォンです。日本ではここ数年来、ミドルクラスの「Reno A」シリーズに注力してきたオッポですが、2024年にはおよそ3年ぶりにハイエンドモデルの「OPPO Find X8」を投入するなど、より上位のスマートフォンを投入する動きを強めています。
それゆえ、今回もスマートフォンの新製品として、Reno Aシリーズの新機種「OPPO Reno13 A」に加え、その1つ上のクラスとなるミドルハイクラスの新機種「OPPO Reno14 5G」も発表しています。しかも、OPPO Reno14 5Gは世界的にも今回が初披露となり、日本から世界に向けて発信されるモデルとしてアピールがなされていました。
OPPO Reno14 5Gは、広角・望遠カメラに約5000万画素のイメージセンサーを搭載し、なおかつ3つの高輝度フラッシュライトを搭載することで、暗い場所でも鮮明な撮影が可能。それに加えて、6,000mAhの大容量バッテリーとIP69の防水・防塵性能を備えるほか、クラウドのAI技術を活用した「OPPO AI」により、写真の加工や文章の要約・翻訳などAIを使ったさまざまな機能を利用できるなど、充実した機能・性能を備えています。
ですが、OPPO Reno14 5Gは日本で発表されたにもかかわらず、日本市場に重きを置いているかというと、そうとは言えない印象も受けます。なぜならこの機種は、日本市場への注力を示すバロメーターとも言われるFeliCaを搭載していないのです。
オッポは、OPPO Reno13 AにはFeliCaを搭載しているだけに、OPPO Reno14 5GがFeliCaを搭載していないことには疑問もあるのですが、そこに大きく影響しているのは販路の違いでしょう。
OPPO Reno13 Aは、オープン市場向けのSIMフリー版に加え、KDDIの「UQ mobile」やソフトバンクの「ワイモバイル」、そして楽天モバイルと携帯3社から販売されました。
FeliCaのニーズはほぼ日本に限られるため、それを搭載するには日本向けのカスタマイズが必要になります。それゆえ、海外メーカーを中心に、国内で多くの台数を販売できる携帯大手が扱わない機種にFeliCaを搭載しないケースが増えていることは確かです。
オッポも、すでにOPPO Find X8で同様の施策を実施しているだけに、SIMフリー版のみとなったOPPO Reno14 5GがFeliCaを搭載しないこと自体に疑問はありません。ですが、OPPO Reno14 5Gは日本発であることを強くアピールしていただけに、FeliCaの非搭載と携帯大手の販路開拓がうまく進んでいない点は非常に気になるところです。
携帯大手の調達は減るが、メーカー間の競争は激化
そこには、国内市場を巡るメーカー間の競争激化と、携帯電話会社の側の状況変化が大きく影響していると考えられます。
まずメーカー間の競争に関してですが、2024年夏はメーカー各社が6万円前後のミドルクラスを相次いで投入し、ミドルクラスを巡る競争が激化していました。ですが、2025年夏はその状況に変化が生じ、8万~10万円くらいで購入できるミドルハイクラスのスマートフォンを巡る競争が激化しているのです。
実際、このクラスの新製品としては、シャープの「AQUOS R10」や中国レノボ・グループ傘下のFCNTが発表した「arrows Alpha」、そして同じくレノボ・グループ傘下の米モトローラ・モビリティの「motorola Edge 60 Pro」などが挙げられます。いずれも、およそ8万~10万円で販売され、79,800円で販売されるOPPO Reno14 5Gの直接的な競合となっています。
なぜミドルハイクラスの競争が激化したのかといえば、米アップルの「iPhone 16e」の存在が大きいと考えられます。iPhone 16eは日本において、かろうじて10万円を切る価格で販売されており、6万円台で販売されていた「iPhone SE」シリーズからの大幅な値上がりに多くの不満の声が挙がっていました。
ですが、携帯各社からしてみると、貴重な低価格iPhoneであることも確か。それだけに、各社がこぞってiPhone 16eの販売を強化したことで、意外と販売は伸びているようです。
それに加えて、米グーグルの「Pixel 9a」も、国内ではおよそ8万円に値上がりして発売されたことから、10万円前後である程度高い性能を持つ、ミドルハイクラスの領域での競争が高まったといえます。従来、この領域に力を入れるメーカーは多くなかっただけに、一層iPhone 16eなどの動きに触発され強化の動きが進んだのではないでしょうか。
そして、もう1つの携帯電話会社に関する動きですが、実はスマートフォンの価格高騰と政府による値引き規制によって販売数が減少したことを受け、ここ数年来携帯各社がスマートフォンの調達数を絞り込む動きが強まっているのです。
この状況が不利に働いているのが、オッポのように国内では後発でブランド力が弱いメーカーです。実際、オッポと同様に日本では後発となる中国のシャオミも、2025年に発表したスマートフォン新機種がいずれも携帯大手に採用されておらず、高額なフラッグシップの「Xiaomi 15 Ultra」だけでなく、ミドルクラスの「Redmi Note 14 Pro 5G」までもが携帯大手から販売されなかったことには驚きがありました。
携帯大手が販売するスマートフォンを絞り込むなか、メーカーが同じ価格帯の新製品を一挙に投入することで競争が激化し、後発のメーカーが支持を得づらくなっています。そうした現状が、オッポのようなメーカーには不利に働き、携帯大手からの採用に至らない機種が増えているのではないでしょうか。
無論、オッポはOPPO Reno13 Aが3社に採用されていることから、携帯大手との関係が失われたわけではありません。ですが、現在の状況が続けば、実店舗を構えたシャオミのように、自社販路に重きを置くことも考えられます。厳しい市場環境を受けた次の一手が大きく問われるところではないでしょうか。
佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら