芸能界に飛び込むきっかけをくれた父親に感謝

現在放送中のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』や映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』(公開中)など、話題の作品に数多く出演し活躍している中村蒼。今年は、芸能界入りしてから20年の節目でもある。中村にインタビューし、デビュー当時を振り返るとともに、20年での変化や今後について話を聞いた。


――2005年11月に雑誌のコンテストでグランプリを受賞されてから今年で20年になりますね。

20年続けられてよかったなと思いますし、こんなに長い間続けられていることは、これ以外ないですし、『沈黙の艦隊』のような作品に出られているというのは、役者としてすごく贅沢な環境だと思うので、ありがたいなと思います。

――コンテストへの応募は、人前が苦手な中村さんを心配してお父様が応募し、本人としては乗り気ではなかったというのは本当でしょうか。

本当です。乗り気じゃなかったですし、詳しいこともよくわかってないし、みたいな感じでした。

――グランプリに決まった瞬間の心境は覚えていますか?

覚えています。あまりうれしくないというか、グランプリの人はもれなく芸能界に入っていくんだろうなと思ったので、自分もそうなってしまうのかとすごく不安で、お先真っ暗な感じでした。

――翌2006年に俳優デビューされましたが、その時はどんな心境でしたか?

最初はよくわかってなかったというか、そうしないといけないんだと思いながらやっていました。あまり考える暇もなく、最初は舞台をやらせていただきましたが、無知だからこそ逆に飛び込んでいけたのかなと思います。

――俳優の道でやっていくんだと覚悟が決まったのはいつ頃でしたか?

東京に出てきた時(2007年)にはそういう気持ちになっていたと思いますが、上京して一つ一つ作品をやるごとに固まっていった感じです。ご一緒する先輩方などがすごくいい人たちばかりで、自分もそういう風になれたらいいなと思いながらやってきました。

――演じる楽しさも初期の段階で感じられたのでしょうか。


楽しさはなかなかですね。今もそうですが、難しさや苦しさの方が大きいです。楽しい瞬間は、作品が出来上がって、わざわざ劇場に足を運んでくれている姿を見たり、そういったときにうれしさを感じます。

――これまでに俳優を辞めようと思ったことはなかったですか?

それはないですね。人様の人生を、疑似ではありますが体験させてもらうということは、すごく光栄なことだなと感じています。

――この世界に飛び込むきっかけをくれたお父様に感謝ですね。

本当にそう思います。

大沢たかおとの共演で刺激「役者としても、人間としても」

――今34歳でいらっしゃいますが、この先の俳優人生はどのように思い描いていますか?

なかなか何年か先のことを想像しづらい仕事なので、どうなっているんだろうなという感じです。でも、(『沈黙の艦隊』の主演)大沢たかおさんなど、自分より長くこの業界にいて、第一線で活躍されている人の姿を間近で見るとすごく刺激を受けますし、自分もそうなれたらいいなと。役者としてもそうですが、人間としても、そういう風になれたらいいなと感じるので、これからも一つ一つ大切に向き合っていくしかないなと思います。

――大沢さんとの共演がすごく大きな経験になったようですね。

大沢さんは役者以外のことに関しても知識が豊富で、人間としてとても豊かな人なので、自分もそうでありたいなと思います。


――お父様が心配されるくらい人前が苦手だったということですが、長く芸能界で活動されてきて、ご自身の変化や成長をどのように感じていますか?

この世界に入る前の自分と地続きで、大きく変わったなという感じはないですが、気づいたら舞台挨拶など人前で話せるようになっていて、昔の自分が見たらびっくりするだろうなと。不思議な感じがします。

――俳優として、人として、大切にしていることがありましたら教えてください。

この業界に入る時に、まず人としてちゃんとしていないといけないということを、両親からすごく言われたことは覚えています。俳優である前に社会人であるということをしっかり意識しないといけないと言われ、そういうことは意識しているのかなと思います。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

いつもありがとうございます。『沈黙の艦隊』で僕が演じた山中栄治は、また新たな一面というか、これまで見せてこなかったような表情などが出ているので、ぜひ劇場に足を運んで見てもらいたいなと思います。そして、応援していて恥ずかしくない存在でありたいと思っているので、これからも頑張ります。

■中村蒼
1991年3月4日生まれ、福岡県出身。2006年、舞台『田園に死す』で俳優デビュー。近年の主な出演作は、ドラマ『エール』(20)、『らんまん』(23)、『大奥』(23)、『ギークス~警察署の変人たち~』(24)、『宙わたる教室』(24)、『東京サラダボウル』(25)、映画『沈黙の艦隊』(23)、『アイミタガイ』(24)、『室町無頼』(25)、『早乙女カナコの場合は』(25)、『宝島』(25)など。
現在、NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に出演中。10月10日スタートのTBS系金曜ドラマ『フェイクマミー』への出演も決定している。
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