返納のタイミングは「すべてがうまく重なった」
2024年に自動車の運転免許を返納した、マジシャンのMr.マリック。最近はタクシーの利用頻度が上がり、配車アプリサービスも便利に利用しているという。車を運転しなくなった現在の生活と、昔と変わらぬ姿で“ハンドパワー”を披露できる秘密とは。本人に直撃した――。
○きっかけは孫の一言「危ない!!」
「ハンドパワーです!」「きてます!」といったフレーズで一世を風靡した、Mr.マリック。現在76歳を迎えているが、マジシャンとしてはいまなお現役。いまも時代の先端を行く“超魔術師”として、観客に驚きを届けている。
そんなMr.マリックだが、自動車の運転免許を返納したことが、2024年に話題に上った。そのきっかけは、孫の一言にあったという。
「ちょうど免許更新だったんですよ。でもそのちょっと前、車を駐車場に入れようとしたら、孫に後ろの席から“危ない!!”って言われたことがあって、ずっと頭の中に残っていました。最初は免許を更新するつもりで順番待ちをしていたんですが、ふと免許返納を促すポスターが目に入りまして。そうしたら係の人が“どうされましたか?”と声をかけてくれたので、孫の言葉を改めて考えて、“返納しようかなと思っている”と話したんです」(Mr.マリック、以下同)
声をかけられたMr.マリックは、そのまま免許返納の受付へ。孫のエピソードを聞いた係の人からも「ぜひ返納してください」と促され、手続きを行った。「75歳だから返納したわけではなく、孫の声、更新のタイミング、ポスターが目に入ったこと、係の方の声がけ、すべてがうまく重なって、返すときが来たのかなと思いました」と振り返る。
○返納後はUberタクシー配車アプリを活用
それから、移動手段は主にタクシーになった。もともと地方のマジックショーに呼ばれたときはよくタクシーを利用していたそうだが、現在は身近な場所でもUberのタクシー配車アプリを積極的に利用しており、改めてタクシーの便利さを実感しているそうだ。
「昔はそんな便利な乗り物じゃなかったです。道で手を挙げて止めて、いつ拾えるかわからないからヒヤヒヤしながら待っていました。でもいまはアプリから配車できるようになったり、自宅まで来てくれるようになったりして、タクシーがすごく身近になりました。当時から近距離でも対応していただきましたが、今では距離にかかわらず“ありがとうございます”と迎えて協力していただきますね」
さらに支払い方法の変化について言及し、返納してもなんの不自由もないと語る。
「昔はおつりがめちゃくちゃややこしかったです。細かいお金を用意しなければならなくて、チップを渡すと偉そうに見えるし、少額のおつりだと“もういいです”と言うのが習慣みたいなところがあって、運転手と乗客の間にだけ特別な空気感があった感じがします。それがいまやキャッシュレス決済だけで料金が支払えるようになりました」
配車アプリの進化に感心「あれはとてもいいですよ」
Mr.マリックはもともとUber Eatsをよく使っており、ピザなどを食べる際に利用していたという。そんな中、娘がハワイでUber アプリを使ったという話を聞いた。「海外では、日本でいうタクシーの運転手ではなく、普通の人が自家用車で来てくれるライドシェアというサービスがあると聞きました。以前の海外では、タクシーを利用すると料金がとんでもない金額になることもありましたよね。
でもUberは事前に目安の料金が分かるので、そういう心配もなくなりました。世界中で先にUberが使われているから、日本にも来たのかなと思います」
現在は仕事でもUberを利用しており、快適かつ高級感のある車両を、タクシーのような手軽さで配車できるUber プレミアムも利用したことがあるとか。
「とにかく日本のタクシーはきれいになってきて、スッキリしています。昔はタクシーの形にノスタルジーがありましたが、今はジャパンタクシーの形が増えてきましたね。この間は、仕事でUber プレミアムに乗せてもらいました。最新のアルファードが来たんですが、いや~、あれはとてもいいですよ。昔、個人タクシーの高級車を手配していた人なんかはみんなプレミアムを呼ぶんじゃないかな」
○SNSがバズると「宝くじに当たったみたい」
長年にわたって活躍を続けているMr.マリックだが、そのイメージはほぼ変わっていない。若々しさを保つ秘けつを聞いてみると、「若い人と話すこと」という答えが返ってきた。
「自分の周りが同世代や年上の人ばかりだと、話題が限られてしまいます。若い人と一緒にいると、新しい話題などを教えてもらえるんです。SNSなんかの知識も若い人の方が先を行っていますから、昔のように年寄りが威張っている時代は終わりましたね。若い人となるべく話して、そういう世界の中に自分から入っていった方が若さは保てると思っています」
UberやUber Eatsの使い方も若い方に教わったというが、そのほかにTikTokやLINEなどのSNSも活用しているという。
「TikTokを見ていますし、自分でも投稿しています。なにがバズるかわからないけど、800万回とか1,000万回再生されると宝くじに当たったみたいでうれしいものです。こちらは淡々と投稿しているだけで、なぜそれが人気になるのかわからないんですけれどもね」
特にLINEは、家族とのやり取りに大きな役割を果たしてくれたようだ。
「娘と少し距離があった時期があったのですが、テレビ番組で“娘さんと連絡を”と言われて、手紙を書くのも気恥ずかしいので、LINEで連絡してみました。“大丈夫?”と送ったら“大丈夫”と返ってきて、それで何十年ぶりかの娘とのやり取りができたんです。手紙では重すぎるし電話もかけづらいなか、LINEは中間的な存在として助けられました」
Mr.マリックは、さまざまな出会いが重なって運転免許を返納した。「これまでの人生も多くの出会いがあり、その一つでも欠けたらいまここにはいない。あきらめずに一つのことを続けていくと、それを手助けしてくれる人と出会える」と話す。
「私はマジックだけをずっとやってきました。よくセカンドキャリアとか人生100年時代と言いますが、“やりがい”と“生きがい”だったら、やはり“生きがい”を取るべきです。“やりがい”は誰かに言われたことをやることですが、“生きがい”は好きなことをやることです。好きなことをやっていると年を取らないんです。
私は20歳のときに一生懸命やったマジックを同じように続けているので、これまで年齢を意識することなく過ごしてきた感じがしています」
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