東京・白金台の「八芳園」は、2025年10月1日のグランドオープンに合わせ、本館内に新たなレストラン「ALL DAY DINING FUDO(以下、FUDO)」を誕生させる。全国の生産者から届くこだわりの食材を店内の石窯で仕上げる、新たな美食体験とは? 今回は一足先にその全貌を紹介しよう。
○シェフが産地に足を運び選んだ旬の食材を、400度の石窯で仕上げる料理
「FUDO」のコンセプトは、"旬の食材で今を感じるひとさら"。「八芳園」が連携協定を結ぶ自治体を中心に、料理長をはじめとするシェフ自らが産地に足を運び、信頼する農家から直接届けられる新鮮な野菜をふんだんに使用している。
「FUDO」の大きな特徴は、店内に設えられたシンボルともいえる石窯だ。400度を超える高温で一気に焼き上げることで、食材の旨みや香りを余すことなく閉じ込める。看板メニューは、旬の野菜をたっぷりと使った「石窯ピッツァ」。シェフが一枚一枚丁寧に練り上げるもちもちのナポリ風生地と、野菜の甘みが凝縮された味わいは、まさに店の顔というべき逸品だ。
このレストランを率いるのが、料理長の小栗直也氏。小栗氏は「素材のおいしさを最大に生かし、生産者の想いまで込めた料理をつくり上げていきたい」と語る。その言葉通り、過度な味付けをせず、食材本来の持つ力を最大限に引き出す料理が特徴だ。身近な食材であっても「こんなにおいしいブロッコリーは初めてだ」と記憶に残るような、感動を呼ぶ一皿を追求し続けている。
○看板メニューの石窯ピッツァや、食感を楽しむムニエルなど多彩なメニュー
メニューには、野菜を使用した料理を中心に、窯で丁寧に仕上げた肉料理や魚料理が並ぶ。今回はアペタイザー、スープ、魚料理、肉料理、デザート、コーヒーもしくは紅茶がついて8,800円のディナーコースから抜粋して、いくつかおすすめを紹介したい。
アペタイザーの「八ヶ岳名水赤鶏のチャイニーズチキンサラダ」は、八ヶ岳の清らかな水で育った「名水赤鶏」にフォーカスを当てたサラダ。トマトやサツマイモのチップス、エディブルフラワーなどカラフルで多彩な食感の野菜との組み合わせが楽しい。
「窯焼き人参 ロメスコとアーモンドのソース」は、石窯でじっくりと熱を加え、甘みを最大限に引き出した人参が印象的だ。香ばしいロメスコとアーモンドのソースがその風味を一層引き立てる。
「宮城県産アカエイのムニエル」は、三陸の海を守る活動を行う生産者から仕入れたもの。ナンコツまで食感を楽しめるように仕上げた、斬新な魚料理だ。
名物ピッツァの一つが、長野県の「信州ゆめクジラ農園」から届く、新鮮で力強い味わいの野菜を主役にしたマルゲリータ。この日はトマト、トウモロコシ、ナスがふんだんに使われていて、ヘルシーながら食べ応え抜群だ。
栃木県の「チーズ工房那須の森」が手掛ける、4種類のチーズを贅沢に使用した濃厚「クアトロフォルマッジ」ももう一つの名物。このほか「山形県産洋梨のピッツァ」など果実の甘みとチーズの塩味を掛け合わせた、デザートに近いピッツァも用意されている。
デザートには、「八芳園」で長年愛されてきた伝統の「アップルパイ」がラインアップ。店内の石窯で焼き上げることでパイの香ばしさと、リンゴの自然な甘さが引き出されていた。
○朝食からカフェ、バータイムまで一日楽しめるオールデイダイニング
ドリンクメニューもまた、料理と同様に素材へのこだわりが貫かれている。「八芳園」オリジナルのクラフトビール「EIGHT CRAFT」は、東京産の柚子を使った爽やかさが、食前酒にも食中酒にもピッタリな味わい。
カクテルには、「あんがとう農園」で育ったフレッシュミントをふんだんに使った「モヒート」や、爽やかな「柚子ジントニック」、そして「瀬戸内レモンサワー」など、素材の産地や作り手の顔が見えるものが並ぶ。日本ワインも、白の「萌黄 ~もえぎ~」と赤の「藍茜 ~あいあかね~」が用意され、料理とのペアリングを豊かにしてくれる。
ノンアルコールドリンクも充実しており、「柚子ソーダ」や「瀬戸内レモンソーダ」、「あんがとう農園ミントのノンアルコールモヒート」など、アルコールが苦手な方でも素材の風味を存分に楽しめる選択肢が揃っている。
「FUDO」は、様々なシーンで利用できる懐の深さも魅力だ。メインを5種類から選べるランチセット(3,200円)のほか、土・日・祝日限定のモーニングでは、「焼き魚御膳」や「モーニングカレー」(各2,500円)といった和洋のメニューが揃う。
メインロビーから続く3階に位置し、店内はバーカウンターとテーブル席で構成される落ち着いた隠れ家のような雰囲気の「FUDO」。生産者の想いが込められた記憶に残る一皿を、友人や家族、ビジネスパートナーと体験してみてはいかがだろうか。
中森りほ 中森りほ グルメ系Webメディアの編集を経て2017年よりフリーライターに。毎月各地を訪れ、ホテルや飲食店を中心に取材、撮影、執筆。フードアナリストの資格も持つ。