日本労働組合総連合会は10月1日、「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025」の結果を発表した。調査は2025年6月27日~7月1日、全国の20歳以上の男女でフリーランスとして働く1,000人を対象に、インターネットで行われた。

○フリーランスとして働き始めたきっかけ最多は「好きなことを仕事にしたい」

全回答者(1,000名)に、フリーランスとして働き始めたきっかけを聞いたところ、「好きなことを仕事にしたいから」(34.5%)が最も高くなり、「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」「自分の専門性を活かすため」(いずれも29.7%)、「フリーランス以外に選択肢がないから」(18.0%)、「選択したつもりはなく気づいたらフリーランスだった」(16.7%)が続いた。

世代別にみると、20代では「新しいことにチャレンジしたいから」(21.4%)が全体と比べて10ポイント以上高くなった。また、60代以上では「自分の専門性を活かすため」(42.2%)が1位だった。

仕事内容別にみると、文化・芸能・芸術とからだ・健康関連では「好きなことを仕事にしたいから」(順に49.0%、49.1%)、事務・ビジネス関連と暮らし・学び関連では「自分の専門性を活かすため」(順に39.7%、56.1%※暮らし・学び関連では「好きなことを仕事にしたいから」と同率)、IT関連とクリエイティブ関連では「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」(順に35.4%、32.1%)が1位となった。

○仕事に「満足」が半数超

全回答者(1,000名)に、フリーランスとしての働き方について、どのくらい満足しているか聞いたところ、「仕事全体的に」では「非常に満足している」が14.4%、「やや満足している」が39.0%で「満足している(計)」は53.4%、「全く満足していない」が4.8%、「あまり満足していない」が10.6%で「満足していない(計)」は15.4%となった。フリーランスとして働く人の半数以上が、総合的にみて、満足のいく働き方ができていると感じているようだ。

世代別にみると、満足している人の割合が最も高くなったのは20代(61.4%)、最も低くなったのは40代(46.4%)だった。

昨年の調査結果と世代別に比較すると、満足している人の割合は、20代では9.7ポイントの上昇(2024年51.7%、2025年61.4%)となった。

「仕事内容・質」では「満足している(計)」は60.9%、「労働時間」では「満足している(計)」は58.0%と、いずれも約6割の人が満足していることがわかった。他方、「収入」では「満足している(計)」は26.0%、「満足していない(計)」は46.8%となり、半数近くが収入に満足できていない実態が明らかになった。

「働きがい・やりがい」では「満足している(計)」は61.0%、「プライベートとの両立」では「満足している(計)」は66.8%と、いずれも満足している人が多数となった。

○「将来の展望がある」は27%

フリーランスとしての働き方について、将来への展望はどのくらいあるか聞いたところ、「とてもある」が10.2%、「少しある」が16.8%で合計した「ある(計)」は27.0%、「全くない」が10.9%、「あまりない」が19.5%で合計した「ない(計)」は30.4%となった。


世代別にみると、将来への展望があると回答した人の割合が最も高くなったのは20代(42.9%)、ないと回答した人の割合が最も高くなったのは40代(36.9%)だった。

仕事内容別にみると、将来への展望がないと回答した人の割合は、クリエイティブ関連(38.1%)では4割近くとなった。

昨年の調査結果と世代別に比較すると、将来への展望があると回答した人の割合は、20代から40代では上昇し、20代では12.9ポイントの上昇(2024年30.0%、2025年42.9%)となった。他方、50代以上では下降し、60代以上では9.9ポイントの下降(2024年33.6%、2025年23.7%)となった。

○フリーランスの働き方の実態

全回答者(1,000名)に、それぞれの働き方について質問した。

「発注者からの仕事の依頼を断ることができない」では、「よくある」は9.0%、「時々ある」は15.1%で、合計した「ある(計)」は24.1%、「全くない」は16.7%、「ほとんどない」は24.6%で、合計した「ない(計)」は41.3%となった。

仕事内容別にみると、「ある(計)」と回答した人の割合は、クリエイティブ関連では29.8%と、他の層と比べて高くなった。

「発注者からの仕事を行う期間中、もしくは契約期間終了後、他の企業等の仕事を受けないように求められたことがある」では、「ある(計)」は8.4%、「ない(計)」は61.9%と、求められたことがない人が多数だった。

「受注した仕事の進め方、時間配分、順序、手法の選択等について、発注者から指示を受けている」では、「ある(計)」は25.2%となった。

仕事内容別にみると、「ある(計)」と回答した人の割合は、暮らし・学び関連では41.5%と4割を超えた。

「仕事を行う場所、時間を決められたり、作業時間や休憩時間などを管理されている」では、「ある(計)」は19.2%となった。

仕事内容別にみると、「ある(計)」と回答した人の割合は、事務・ビジネス関連(4.4%)では1割未満だったのに対し、暮らし・学び関連(36.6%)では約3人に1人の割合となり、仕事内容によって作業場所や業務時間の管理状況に差がみられる結果となった。


「受注した仕事について、自分の判断で第三者に行わせたり、補助者を使うことが認められていない」では、「ある(計)」は17.7%だった。

仕事内容別にみると、「ある(計)」と回答した人の割合は、暮らし・学び関連(29.3%)では3割近くとなった。

「仕事に使用する機械、器具等は発注者が用意している」では、「ある(計)」は20.8%となった。

仕事内容別にみると、「ある(計)」と回答した人の割合は、暮らし・学び関連(36.6%)やIT関連(29.3%)、からだ・健康関連(26.3%)で高くなった。

物価上昇で「生活が苦しくなった」フリーランスは4割超


全回答者(1,000名)に、近年の物価上昇による影響を聞いたところ、「生活が苦しくなった」は33.4%、「業務に必要なコストが上昇した」は15.5%、「生活が苦しくなって、業務コストも上昇した」は12.3%で、「生活が苦しくなった(計)」は45.7%、「業務コストが上昇した(計)」は27.8%となった。また、「特に影響はない」は38.8%だった。

世代別にみると、「生活が苦しくなった(計)」と回答した人の割合は、40代(52.7%)が最も高くなり、半数を超えた。また、「業務コストが上昇した(計)」と回答した人の割合は、60代以上(31.5%)が最も高くなった。

仕事内容別にみると、「生活が苦しくなった(計)」と回答した人の割合は、クリエイティブ関連(66.7%)が最も高くなり、「業務コストが上昇した(計)」と回答した人の割合は、文化・芸能・芸術関連(32.4%)が最も高くなった。

○報酬は引き上げられたか

全回答者(1,000名)に、今年1月から5月までの間に、昨年の12月以前と比較して報酬は引き上げられたか聞いたところ、「引き上げられた(計)」(「引き上げられた」「やや引き上げられた」の合計)は10.2%、「引き上げられていない(計)」(「引き下げられた」「やや引き下げられた」「変わらない」の合計)は89.8%となった。

仕事内容別にみると、「引き上げられた(計)」の割合は、IT関連(16.2%)が最も高くなった一方、事務・ビジネス関連(4.4%)やクリエイティブ関連(4.8%)、からだ・健康関連(5.3%)では、5%前後と低くなった。

「引き上げられた」、「やや引き上げられた」と回答した人の引き上げられた理由をみると、「生活が苦しいから作品の値段を上げざるを得なかった(男性/30代/文化・芸能・芸術関連)」、「物価高を理由に自分から提案した(女性/30代/その他)」、「物価高を考慮した報酬の提示をしてくれる発注元が少し増えた(男性/40代/IT関連)」、「仕事のクオリティが高くなったから(女性/20代/クリエイティブ関連)」といった回答がみられた。


○「フリーランス法」の浸透度は?

全回答者(1,000名)に、2024年11月に施行されたフリーランス法(「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)を知っているか聞いたところ、「フリーランス法を知っていて、法律の内容もよく理解している」は9.6%、「フリーランス法を知っていて、法律の内容を少し理解している」は29.4%で、「理解率(計)」は39.0%となり、「フリーランス法を聞いたことはあるが、法律の内容は理解していない」は33.8%、「フリーランス法を知らない」は27.2%だった。

仕事内容別にみると、「フリーランス法を知らない」と回答した人の割合は、からだ・健康関連では35.1%と、3人に1人が知らないという結果となった。

フリーランス法を理解している人(390名)に、フリーランス法についてどのようにして知り、学んだか聞いたところ、「テレビ・ラジオ・新聞報道」(39.7%)、「公的機関のWebサイト、SNS、動画など」(36.4%)、「公的機関以外のWebサイト、SNS、動画など」(34.1%)、「同業者・フリーランス仲間からの情報」(31.5%)に回答が多く集まった。

世代別にみると、30代では「同業者・フリーランス仲間からの情報」(44.2%)が最も高く、40代では「公的機関のWebサイト、SNS、動画など」(41.8%)が最も高くなった。60代以上では「テレビ・ラジオ・新聞報道」(54.2%)が半数を超えた。

フリーランス法では、期間が6カ月以上の業務委託について、フリーランスで仕事をしている人が育児や介護などと業務を両立できるよう、フリーランスの申し出に応じて配慮をしなくてはならないと定められている。

期間が6カ月以上の業務を受託している人(620名)に、6カ月以上の期間で行う業務委託について、発注者との取引で問題があったか聞いたところ、「自身の申し出に応じて、育児介護等と業務を両立できるような発注者からの配慮がない」では「もともと問題がない」は63.4%、「問題があった」は36.6%、「発注者が契約の解除や不更新をしようとする場合、やむを得ない場合を除いて30日前までにその旨を予告しない」では「もともと問題がない」は65.2%、「問題があった」は34.8%だった。

それぞれの問題があった人に、フリーランス法が施行された2024年11月前後に、問題が改善されたか聞いたところ、「自身の申し出に応じて、育児介護等と業務を両立できるような発注者からの配慮がない」問題がある人(227名)では「改善された(計)」は29.5%、「改善されていない(計)」は70.5%で、大半が改善されていないことががわかった。「発注者が契約の解除や不更新をしようとする場合、やむを得ない場合を除いて30日前までにその旨を予告しない」問題がある人(216名)では「改善された(計)」は36.6%、「改善されていない(計)」は63.4%だった。

○労災保険の特別加入制度については?

"労災保険の特別加入制度"について質問した。"労災保険の特別加入制度"とは、従来では労災保険への加入が認められなかった労働者以外の人のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に、一定の要件のもとに労災保険に加入することを認めている制度のこと。フリーランスの人では、一部の業種・職種のみ加入が認められていたが、2024年1月の制度改正によって、加入対象が拡大され、業種・職種を問わず加入することができるようになった。


全回答者(1,000名)に、"労災保険の特別加入制度"の加入対象が拡大されたことを知っているか聞いたところ、「知っている」と回答した人の割合は27.8%だった。

仕事内容別にみると、「知っている」と回答した人の割合は、事務・ビジネス関連(44.1%)で4割を上回った一方、多くの業種で3割を下回る結果となった。

"労災保険の特別加入制度"を利用したいと思うか聞いたところ、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」は20.3%、「利用したいと思わない」は39.1%、「分からない」は40.6%となった。

仕事内容別にみると、事務・ビジネス関連では、加入対象の拡大の認知率(44.1%)は最も高くなった一方、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」(8.8%)は1割未満にとどまり、「利用したいと思わない」(54.4%)は半数を超えた。

労災保険の特別加入制度の利用について"利用したいと思わない""分からない"と回答した人(797名)に、そのように回答した理由を聞いたところ、上位3つは「金銭的な余裕がないから」(26.7%)、「制度がよく分からないから」(26.6%)、「健康保険証があるから」(25.0%)で、いずれも2割を上回った。次いで、「自分には関係ないから」(17.4%)、「加入等の手続きが面倒そう・苦手だから」(15.7%)となった。

世代別にみると、20代と60代以上では「健康保険証があるから」(順に33.3%、32.8%)が1位となった。また、30代・40代では「制度がよく分からないから」(順に31.9%、31.2%)が3割以上だった。

仕事内容別にみると、クリエイティブ関連と暮らし・学び関連では「金銭的な余裕がないから」(順に41.4%、48.4%)がいずれも4割を上回り、突出して高くなった。事務・ビジネス関連では「健康保険証があるから」(38.7%)が1位だった。

○仕事の悩みと労働環境

全回答者(1,000名)に、普段、仕事に関する悩みについて誰に相談しているか聞いたところ、相談相手では、1位「フリーランス仲間」(26.6%)、2位「同業者」(19.6%)、3位「友人」(16.7%)となった。一方で、回答が最も多く集まったのは「相談する相手がいない」(43.3%)で、半数近くが普段、仕事に関する悩みを相談できていないことがわかった。


世代別にみると、20代では、「家族」(22.9%)が他の世代と比べて高くなった。

仕事内容別にみると、文化・芸能・芸術関連では、「フリーランス仲間」(34.6%)が全体と比べて5ポイント以上高くなった。また、事務・ビジネス関連では、「弁護士等の専門家」(10.3%)が他の仕事と比べて高く、1割となった。からだ・健康関連では、「フリーランス仲間」「家族」(いずれも28.1%)が同率で1位だった。

2023年、アメリカでは、Netflix等の巨大プラットフォームに対して、俳優や歌唱、声優、ダンサー、宣伝業務に携わる人などで結成された全米映画俳優組合が労働条件の改善や、AIの使用に関する保護措置などを求める長期のデモを通じて、権利を獲得したことが日本でも大きく報じられた。

このように、個人では解決できない問題に対するために、フリーランス同士でつながりたいと思うか聞いたところ、「つながりたいと思う」は27.9%、「つながりたいと思わない」は33.8%、「分からない」は38.3%だった。

世代別にみると、「つながりたいと思う」と回答した人の割合は、20代では38.6%と、突出して高くなった。他方、「つながりたいと思わない」と回答した人の割合は、30代では40.3%と、他の世代と比べて高くなった。

仕事内容別にみると、「つながりたいと思う」と回答した人の割合は、からだ・健康関連(36.8%)で最も高くなった。また、「つながりたいと思わない」と回答した人の割合は、事務・ビジネス関連では41.2%と、全体と比べて5ポイント以上高くなった。
編集部おすすめ