日本社会全体で脱炭素への取り組みが加速している中、自治体だけでなく、地域に根差した産業界との連携により、この活動をさらに広げようという試みが各所で展開されている。その取り組みの中で、各自の得意分野を持ち寄ることで、新たな可能性を感じさせる事業も始まりつつある。
今回は埼玉県の越谷市、NTT東日本、イハシライフの官民連携により生まれた新たな一歩となる事業を紹介したいと思う。
○■コンバージョンEVを活用し、災害対策と脱炭素化を両立
埼玉県越谷市は埼玉県の南部に位置する人口約34万人(2025年9月現在)の都市だ。様々な施策を繰り広げているが、その中のひとつの取り組みとして、2024年7月25日に設立された「こしがや脱炭素コンソーシアム」がある。官民連携により活動が開始されたこの施策は、発足に伴い同市が目標として掲げた「2030年市域からの温室効果ガス排出量46%以上削減」および「環境面から社会・経済課題の同時解決を図ること」の達成を目指している。
越谷市ならびに同市域で活動する企業・団体が相互連携しながら取り組みを始める中、今回は防災力の向上と再生可能エネルギーの有効活用を両立する「災害時における電気自動車搭載可搬型バッテリーを活用した電力供給に関する協定」が締結される運びとなり、2025年9月29日に式典が開催された。
取り組みの概要は、NTT東日本社用車のコンバージョンEVに搭載された可搬型バッテリーを、イハシライフが保有する太陽光発電設備で充電し、災害時に電力不足へ陥った避難所などに運搬して電力を供給するというもの。式典では今回の取り組みにおいて、主に活躍した3団体がそれぞれ調印を交わした。
「本協定は災害時において、イハシ様、NTT東日本様が所有する設備を有効活用させていただくことで、避難所等で電力不足が生じた場合の電力確保を図ることを目的としています。官民11団体で構成される『こしがや脱炭素コンソーシアム』における事業検討より着想を得た取り組みであり、脱炭素を通じた地域課題の解決にも資するものだと考えています。災害はいつどこで発生してもおかしくない状況であり、平常時から行政のみならず民間事業者の皆様と連携して災害対策に取り組むことが、さらなる市民の安心安全の確保につながるものと考えております」と、今回の締結に際して経緯と狙いを語る越谷市 市長 福田 晃氏。
「エネルギーの安定供給、カーボンニュートラルといった社会課題に対して、私たちは常に新しい価値を提供したいと思い活動してきました。今回の取り組みに際して、越谷市様、NTT東日本様と協力体制を築けたことが、大きな一歩になったと思っています。
「今回の取り組みは弊社の可搬型バッテリーを搭載したEVによる電力供給を実現したものになります。災害時における電力の確保は、地域の皆様にとって、安心安全に直結する非常に重要な課題と考えています。今回の取り組みは災害に強いまちづくりと地域の脱炭素化の両立を目指しています。今後も『こしがや脱炭素コンソーシアム』の一員として、官民で連携しながら頑張って活動していきたいと思っています」と語るNTT東日本 埼玉南支店 支店長 霜鳥 正隆氏。
○■コンソーシアムによる官民連携が実現させたもの
取り組みの中で使われるEV(Electrified Vehicle)は、NTT東日本の営業車として使われているもので、もともとはガソリンエンジンを搭載した軽自動車が原型となっている。これをイハシグループのイハシエネルギーが、エンジンやマフラーといった装備を排除し、代わりにモーターやバッテリーを搭載する改造、すなわちコンバージョンしたのちにEVとして認可を取り、これをNTT東日本が運用するという流れになっている。
なお、市販されているEVではなく、コンバージョンEVを採用した理由として、それにかかる費用やエネルギーはもちろん、改造や運用のノウハウなどにおいても地域で循環されることを想定しているのだという。
コンバージョンEVには可搬型バッテリーが1基搭載されており、予備バッテリーも積み込むことが可能。そのスペックは蓄電容量11.84kwh、重量約190kg、サイズが475×680×650cm、出力の仕様はAC100V×4口、AC200V×1口で最大出力は3,000Wとなっている。これはスマートフォンの充電に換算すると1,000台以上というスペックになる。
また、この方式の特徴として、可搬型バッテリーを太陽光パネルなどが設置された再エネ施設と連携させることで、本体への充電も可能な点が挙げられる。現在は充電先として、NTT東日本の埼玉南支店がある蒲生ビルや、イハシライフが設置している太陽光パネルを持つ、大相模中学校、同社のガソリンスタンドなどが予定されている。
今後の運用スケジュールとして、2025年11月には先に触れた大相模中学校に可搬型バッテリー充電用のコンセントを設置、実運用が開始され、同月23日には総合防災訓練が大相模中学校で開かれることになっているため、そこで初の試行が予定されている。
可搬型バッテリーのような災害用蓄電池は未使用のまま放置されるケースが多いという話もある。今回の取り組みにおいては、日常的にNTT東日本が社用車として運用することを前提としながら、被災時に即時転用ができることも特長となるので、そのような心配は不要だ。
この取り組みによって災害対策に厚みが増すことで市民の安心安全が向上するとともに、CO2削減においても効果が望めることは確かだ。今後も「こしがや脱炭素コンソーシアム」の活動の広がりに注目していきたい。
○■コンバージョンEVを活用した取り組みを関係者が振り返る
締結式を終えた後、各社の関係者に話を伺う機会をもらったので、最後にその内容をお伝えしたいと思う。
――こしがや脱炭素コンソーシアムにとって大きな一歩を踏み出しましたね。いつ頃から今回の取り組みについて考えていらっしゃったのですか?
越谷市 豊田氏:こしがや脱炭素コンソーシアムが始まったのが2024年7月ですから、この1年間、参加団体のみなさまと話し合って決めました。
NTT東日本 霜鳥氏:検討をする中で様々なアイデアが出てきました。
――越谷市を拠点とするイハシさんがコンバージョンEVをカスタマイズ製作したというのも特徴的ですね。
イハシライフ 井橋氏:自動車整備業も弊社の事業領域となっているので、既存の内燃式軽自動車を電動式に変更するということもできるのではないかとチャレンジしました。また、コンバージョンに関するノウハウが得られれば横展開もできますし、様々な方向に発展できるのではないかという期待もあります。弊社の技術者も興味を持って楽しみながら作業してくれたようです。
――今回は締結式であり、今後運用フェーズに入るのだと思いますが、最初の実証も決まっているのですよね。
越谷市 渡邉氏:告知にあるように11月23日に市の防災訓練があるのでそこが最初の実証実験になると思います。偶然なのですが、太陽光パネルが屋上に設置してある大相模中学校でやることが決まっていたので、まさに適材適所のシチュエーションで実施できます。
――そこで最初のノウハウが生まれ、今後に活かされていくのですね。みなさんはどのような期待を抱かれていますか?
NTT東日本 霜鳥氏:将来的に可搬型バッテリーが普及するようになれば分散型のエネルギー源として地域の中で運用していくことになるのだと思います。再生エネルギーを地域の中で余すことなく使い切ることができるので、レジリエンスの向上と脱炭素の同時実現という世界観が作れると思います。
越谷市 豊田氏:越谷市は2030年までに地域全体の温室効果ガスの46%減を目指していますが、この大きな目標へ向かうためのきっかけになると思います。霜鳥様もおっしゃるように、今回の取り組みは脱炭素と災害対策を両立できるのが特長です。市民のみなさまの安心安全にもつながりますので、ぜひ注目していただきたいと考えています。
越谷市 渡邉氏:災害時に利用できるエネルギーの確保は大きな課題となっています。その中のひとつとして大型の可搬型バッテリーという手段が生まれたことは非常に意義深いものだと考えています。同時にすでにある太陽光パネルから充電できるということもあり、循環型のエネルギー活用にもなります。防災の課題解決に大きく貢献できるという意味でありがたい取り組みだと思います。
イハシライフ 井橋氏:今回の取り組みの場合、災害時になってから新たに車両を用意するのではなく、常に稼働しているコンバージョンEVがその役目を担うところもポイントだと思っています。日常的に使える給電場所も増やさないといけませんし、それを管理するスタッフも必要です。今回の取り組みによって地域にこの活動がさらに認知されるようになるとコンソーシアムの輪も広がっていくのだと考えます。コンバージョンEVを複数の組織が協力しあってネットワークの中で運用できるようになれば、もっと違うアイデアも出てくるのではないかと期待しています。
イハシ 廣瀬氏:弊社のグループが取り扱っている自動車関連業やガス、太陽光パネルといったエネルギー分野はこれまでそれぞれが単体で活動していました、今回のコンバージョンEVに関わったことで、すべての分野が協力し合って完成させることができたと思っています。今回得たノウハウを既存のビジネスと組み合わせることでもっと強力な取り組みができるのではないかと期待しています。











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