渋谷を拠点に、お酒を飲む人・飲まない人が互いをリスペクトし合う「新しい飲酒文化」を広げる活動として始まった「渋谷スマートドリンキングプロジェクト(スマドリ)」が4年目を迎えた。

10月3日に開催された報告イベントでは、MZ世代(20~39歳)の飲酒観や人間関係に関する最新調査の結果を発表。
渋谷区長の長谷部 健さん、スマドリ取締役CMOの元田 済さん、一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長の長田 新子さん、渋谷109lab.所長の長田 麻衣さん、そして大学生や若手社会人がトークセッションを通じ、街・人・企業が共に築く“スマートな飲み方”の未来像について語った。
スマドリで広げる飲酒の選択肢

スマドリはアサヒビール株式会社と株式会社電通デジタルの合弁会社であるスマドリ株式会社を中心に、一般社団法人渋谷未来デザインが協力し、渋谷を拠点とする企業や自治体が手を取り合って進めているプロジェクトだ。

立ち上げの背景には「お酒を飲む・飲まない」という選択の違いを理由に人が分断されてしまう社会を変えたいという思いがある。飲み方を“自由で自分らしいもの”と捉え、誰もが心地よく共生できる文化をつくることを目的に活動を続けている。

「活動の柱となるのは、『ウェルビーイング』『アンコンシャス・バイアス』『ダイバーシティ』という3つのキーワードです。約9,000万人の成人が“お酒とのよりよい関係”を楽しみながら築いていけるよう、多様性のある飲酒文化の創造と責任ある適正飲酒の推進に取り組んでいます」(元田さん)

SNSはつながりは増えるけど、深い関係は築きにくい

スマドリ株式会社と一般社団法人渋谷未来デザインは、2025年6月、全国のMZ世代1,101人を対象に調査(インテージ実査)を実施。その結果、全国平均で「お酒は無理して飲むものではない」と回答した人は約7割にのぼることが判明した。

さらに、非アルコール飲料を選ぶ人の割合は全国の33.7%に対し、渋谷では45.6%と高い結果となっていることもわかった。

現在、スマドリの全国での認知率は約50%にまで拡大しており、特に20~30代では60%台に達している。渋谷が“多様な飲み方”を象徴するエリアとして定着しつつある。

イベント後半では「Z世代のリアルな飲酒意識」をテーマにしたトークセッションを開催。ファシリテーターを務めた渋谷109エンタテインメントの長田 麻衣さんは、「デジタルネイティブ世代の間ではSNSでつながりは広がっているのに、深い関係が築きにくいという声が多い」と解説した。
実際、学生を対象にしたスマドリの調査では約56%が「スマホ依存」を自覚し、その理由として「寂しさ」を挙げているという。

登壇した大学生2人も、「SNSで他人の日常が見えるほど、自分との違いを感じて寂しさが増す。だからあえて対面で会う時間を作るようにしている」「学校外で会うことで関係が深まる。あえてプライベートな領域に踏み込むことを意識している」と話し、対面で会うことの大切さを語り合った。

さらに、飲み会における“気遣いと気疲れ”問題も盛り上がった。Z世代の間では「飲みに行こう」より「ご飯に行こう」という誘い方が一般的なため、お酒を飲む人と飲まない人が一緒に過ごす場では、自然と周囲への思いやりや配慮が求められるようになっているという。

登壇した若手社会人は「翌日の予定や体調を考えて、飲みではなく食事に切り替えるようにしている。誘う側も無理をさせないよう気を遣う」と話した。

この話題に対し、長谷部区長は「昔の飲み会は“飲めることが前提”だった。度数重視で無理して飲む人も多かったが、今は“自分のペースで楽しむ”文化に変わりつつある。ノンアルの選択肢が増え、健康を意識して飲み方を選べるのはよい傾向」と、ポジティブなコメントを寄せた。

今後も渋谷スマートドリンキングプロジェクトでは企業や大学、団体と連携し、適正飲酒啓発セミナーなどを実施し、飲み方の多様性を尊重しあえる社会の実現に取り組んでいく。
編集部おすすめ