オンラインデザインプラットフォーム大手のCanvaは10月29日、写真編集、ベクターデザイン、レイアウトツールを統合した新しいデザインソフト「Affinity」を発表、Windows版とMac版を無料公開した。iPad版も近日公開する予定である。


2024年にCanvaが買収したAffinityはこれまで、「Affinity Photo」(写真編集)、「Affinity Designer」(ベクターデザイン)、「Affinity Publisher」(ページレイアウト・DTP)を買い切り型ライセンスで提供してきた。新しい「Affinity」は、それらのプロ向けデザインツールの主要機能を削ることなく1つのプラットフォームに統合し、無料で提供する。多くのデザインツールが有料サブスクリプション制を採用する中、Affinityは公式サイトで、「Stop renting software. Move in here.」(もう“借りる”時代じゃない。Affinityがあなたの新しい制作拠点だ)と掲げ、サブスクモデルへの対抗姿勢を打ち出している。

Affinityの写真編集ツールは、RAW現像からレタッチ、合成まで、非破壊編集に対応し、元の作品を損なうことなく作業を進められる。GPUアクセラレーションによる軽快な動作に加え、ライブフィルター、スマート選択、バッチ処理など、反復作業を効率化する機能も充実している。ベクターデザインツールでは、グリッドやスナップ機能を活用して、ベジェ曲線の細かな調整、パス編集を直感的に扱える。応答性も高い。レイアウトツールでは、画像・グラフィック・テキストをドキュメント内で直接編集でき、変更内容がリアルタイムで反映される。スマートマスターページや共有テキストスタイル、高度なタイポグラフィ制御により、一貫性を保ちながら創造的な試行を行える環境を整えている。

従来は、写真編集、ベクターデザイン、レイアウトのツールを行き来する必要があったが、Affinityでは単一アプリ内でそれらの機能を横断して利用できる。ワークスペース(スタジオ)は用途に応じて自由にカスタマイズでき、ベクター/ピクセル/レイアウトの各ツールを組み合わせ、自分のワークフローに最適化することが可能。
パネル配置やツール選択も柔軟に行え、複数の設定を保存してプロジェクトごとに切り替えられる。カスタムスタジオは共有やダウンロードにも対応し、チームやクリエイティブコミュニティ間で効率的にワークフローを交換できる。

作業データのインポートについては、PSD、AI、PDF、SVG、TIFF、IDMLなどに対応している。

Affinityのデザインツールの無料化とともに、AffinityとCanvaの連携が強化された。Affinityに「Canva AI Studio」が組み込まれ、Canvaの有料プランの利用者はAffinity上で直接、生成塗りつぶしや背景除去などのAI機能を利用できる。また、Affinityのプロジェクトを数クリックでCanvaにエキスポートすることが可能である。これにより、デザイナーが精密に作り込んだデザインアセットを、Canva上でチーム全体が共有・活用するといったワークフローが容易になる。
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