シャープが11月10日に発表した2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比13.3%減の9503億円、営業利益は前年同期の4億円から289億円に拡大。経常利益は同14億円から335億円に拡大した。
また、当期純利益は前年同期比98.1%増の454億円となった。

この結果を受けて、2025年度(2025年4月~2026年3月)連結業績見通しを上方修正した。売上高は据え置き、前年比13.4%減の1兆8700億円としたが、営業利益は150億円増額の同13.4%%増の450億円、経常利益は180億円増額の前年比154.9%増の450億円、当期純利益は200億円増額の同46.8%増の530億円とした。営業利益と経常利益、当期純利益は今年度2回目の上方修正。当期純利益は、減益計画から増益計画へと見直した。
テレビ構造改革とパソコン事業の上振れで通期見通しも上方修正

シャープの沖津雅浩社長 CEOは、「全社トータルでは減収となったものの、営業利益は大幅に伸長し、想定以上の営業利益となった。また、経常利益、最終利益も大きく改善している。ブランド事業の売上高は、競争環境の激化や為替の影響などがあり、前年同期の実績には及ばなかったものの、営業利益は前年同期に比べて、約1.5倍の増益を達成している。デバイス事業では、SDPの終息などのアセットライトを実行した成果が出ており、売上高は減少したものの、営業赤字は大幅に縮小している」と総括した。

また、2025年度通期見通しの修正については、「第2四半期のPC事業などの業績の上振れ、関税影響の改善などを。営業利益見通しに織り込むとともに、持分法による投資利益などの見直しを、経常利益と最終利益に反映したことが上方修正の要因」と説明した。

シャープ 2025年度 第2四半期(2025年7月~9月) 連結業績

上期のセグメント別業績は、ブランド事業の売上高が前年同期比1.8%減の6996億円、営業利益は同53.1%増の462億円となった。
第2四半期(2025年7月~9月)は前年同期比1.1%増の3699億円、営業利益は同58.4%増の251億円。「ブランド事業は、上期は減収だったが、第2四半期だけを見ると増収になっている。営業利益率も第2四半期は6.8%となり、営業利益額、利益率ともに、第1四半期から上昇している」という。PC事業が予想以上に成長したことが貢献しているほか、米国関税対策の成果、想定以上のコストダウンの成果、高付加価値化の進展、テレビ事業の構造改革の効果などを、大幅な増益の要因にあげた。

そのうち、スマートライフの売上高が前年同期比7.8%減の2911億円、営業利益は同72.0%増の132億円となった。「白物家電事業は、国内外ともに減収になった。国内では、ヘルシオが好調だった調理家電が伸長したが、これまで好調だった洗濯機が足踏みし、エアコンが足を引っ張ったことで減収になった。海外では、米州の調理家電やASEANの洗濯機などが伸長したが、ASEANでは、冷夏の影響からエアコンの売上高が約30%ダウンし、大幅な減収になった。いまは流通在庫の整理にかかっているが、12月までには整理を終え、ASEANでのエアコン販売を回復させたい」とした。

また、テレビ事業については、「国内ではXLEDやOLEDモデルが堅調であり、付加価値ゾーンのシェアが増加したものの、競争環境が厳しく、国内、海外ともに減収になった。しかし、構造改革の成果は出ている。テレビ事業の利益は大きく改善している。
今後、コモディティゾーンではOEMを活用する一方で、差別化できる技術をひとつでも搭載した付加価値商品を展開し、AQUOSブランドのテレビをきちっと訴求したい。テレビも、白物家電も、コストだけを追求するところでは戦わない」と語った。

その一方で、「下期には、付加価値の高い空気清浄機などの販売が増加すること、モデルミックスや、ルートミックスの改善が進むことから、スマートライフ全体では、上期比で71億円の増益を見込んでいる」という。

なお、国内エアコン市場では、2027年度から新たな省エネ基準が適用され、現行の普及モデルの販売ができなくなるという課題があるが、沖津社長 CEOは、「新たな省エネ基準により、2027年度以降は、価格ゾーンが狭まる可能性がある。最上級の省エネモデルは自社開発し、競合と戦える商品を作っていく。普及モデルでは、OEMを活用し、省エネ基準を達成するモデルにより、2027年度以降の省エネ基準に対応していくことになる」と語った。

また、エネルギーソリューション事業の第2四半期実績は、国内の住宅用や蓄電所が伸長したほか、海外事業も堅調で増収になった。

スマートワークプレイスは、売上高が前年同期比2.9%増の4085億円、営業利益は同46.6%増の329億円となった。増収増益に大きく貢献したのがPC事業の好調ぶりである。

「PC事業では、国内のB2BおよびB2Cがともに好調だった。B2Bでは、GIGAスクール向けPCが大きく伸長したほか、官公庁・自治体向け、大企業向けなども引き続き堅調だった。B2Cは、スタイリッシュなデザインが好評で、積極的に販促を実施した効果があった」と振り返った。


また、ビジネスソリューション事業は、国内では、MFPやオフィスソリューションなどが増収となったが、インフォメーションディスプレイなどが減収。海外では、オフィスソリューションが伸長したものの、欧米で競争環境が厳しいインフォメーションディスプレイが減収になった。通信事業では、ハイエンドスマホの販売が底堅く推移。だが、他社攻勢の影響で、同事業全体では減収になっている。

2025年度通期見通しについては、「MFPやインフォメーションディスプレイの販売増によるプラス影響はあるものの、Windows 11への切り替え特需の反動によってPCの販売減がある。また、メモリをはじめとする部材価格の上昇なども影響し、下期は103億円の減益になると予測している」という。

103億円の減益のうち、80億円強がPC事業であり、「上期は市場全体が1.4倍で成長したのに対して、シャープのPC事業はそれを上回る成長を遂げた。それに対して、下期は、10~12月は好調を維持できるが、1月からは特需の反動の影響が出てくるだろう。これによる販売減が想定される。また、メモリ価格は、2~3割の上昇を想定しているが、これがもっと上昇する可能性もある。メモリ不足と価格上昇は、上期から始まっており、必死になって集めてきた。毎月、生産に必要な数量をかき集めているため、在庫は翌月分まであるという状況ではない。
在庫を持っているわけではないため、すでにメモリの値上がりは、収益に直接影響することになる」と懸念を示した。

ディスプレイデバイスは、売上高が前年同期比6.6%減の2118億円、営業利益は前年同期のマイナス125億円の赤字から改善したものの、マイナス87億円の赤字となった。同セグメントは、中小型ディスプレイのみの業績を示している。

「スマホ向けディスプレイ事業を終息したことに加えて、前年同期にはPCやタブレット向けの顧客需要の非常に強かったことの反動や、車載向けでは米国関税の駆け込み需要の反動があったことが減収の要因になった。営業利益では、コストダウンや経費削減を進めたものの、販売実績の減少などが影響している。だが、ディスプレイデバイスは、構造改革の進展などに伴い、赤字が大幅に縮小した」と述べた。

なお、SDP(堺ディスプレイプロダクト)を含む「その他」では、売上高が前年同期比74.0%減の453億円、営業利益は同前年同期のマイナス75億円の赤字から12億円の黒字に転換した。SDPの終息のほか、カメラモジュール事業の事業終息、半導体子会社の売却および非連結化を進めた結果となっている。

なお、米国関税の影響については、2025年度通期で37億円のマイナス影響を想定していたが、各種対策によって、12億円の改善を見込み、通期ではマイナス25億円の影響に留まるとしている。米国市場では、MFPと調理家電の販売実績が大きいが、「MFPは、業界全体で売価アップがスムーズに行われ、改善ができた。また、調理家電でも、ある程度の売価対応ができた。MFPも、調理家電も、自社設計、自社生産をしており、コストダウンの余地があり、その取り組みの成果も貢献した」という。


2027年度までの中期経営計画、「再成長」へ「半歩先」進む意思

一方、中期経営計画の進捗状況についても説明した。

同中期経営計画は、2025年度からスタートし、2027年度を最終年度とした3カ年の計画であり、「再成長」に取り組むフェーズに位置づけている。

シャープの沖津社長 CEOは、「中期経営計画は順調に進捗しており、財務、事業の両面において、様々な成果が表れている」と自己評価。「財務面では、営業利益が想定を大きく上回るペースで改善しており、資産売却なども進んでいる。この半年間で、自己資本比率は10.5%から14.6%となり、想定以上のペースで上昇している」と述べたほか、「事業面では、AI活用やサービス事業の拡大、新規事業の創出など、成長力の強化に向けた取り組みが進んでいる」と語った。

スマートライフでは、クックトークやCOCORO HOME AIといった生成AI活用サービスの取り組みを開始し、同サービスへの対応機器が、ヘルシオやドラム式洗濯乾燥機にも拡大。スマートワークプレイスでは、データやAIを活用し、顧客のDXを支援する「スマートビジネス」が、上期には前年同期比で1桁台後半の成長を遂げたことに加え、新産業への取り組みでは、Japan Mobility Show 2025において、EVの「LDK+」のコンセプトモデル第二弾を公開し、2027年度にEV市場に参入することを発表。AIデータセンターソリューションの事業化の検討を加速したことなどをあげた。

EVについては、「既存の自動車メーカーに真っ向から戦うことは考えていない。LDK+という名称に相応しいシャープらしいEVを販売していきたい。次の柱のひとつとして、EV事業に取り組みたい」と意気込みをみせた。

また、「アセットライトの総仕上げ」と位置づける亀山第2工場の譲渡についても説明した。


亀山第2工場に関しては、9月15日に鴻海とMOUを締結しており、2025年12月末までには最終契約を締結し、2026年8月までに譲渡を完了することになる。

鴻海では、亀山第2工場における液晶パネルの生産数量を落としながらも生産を継続。シャープが液晶パネルを提供していた一部顧客については継続的に提供し、鴻海からも液晶パネルの販売を行う。一方で、不要な液晶パネル生産の設備を撤去した空きスペースに、AIサーバーの生産ラインを設置することになるという。2026年8月に鴻海に譲渡後、AIサーバーの設備が導入されることになるため、亀山第2工場で、AIサーバーの生産が本格化するのは、2027年度になると想定。これにあわせて、シャープでは、AIデータセンター事業者に対する販売事業の立ち上げを検討することになる。「シャープは、AIサーバーに関しては、プロフェッショナルではない。準備には2年程度は要するだろう。できれば2027年度ぐらいには販売事業を立ち上げたい」とした。

決算会見のなかで、沖津社長 CEOは、「9月10日に、新たなコーポレートスローガンとして、『ひとの願いの、半歩先。』を発表した」とし、「この新たなスローガンのもと、独創的なモノやサービスを次々と創出し、中期経営計画を着実に推進する」と、中期経営計画の達成に強い意思をみせている。
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