Uber TechnologiesのCEO、ダラ・コスロシャヒ氏とUber Japan代表の山中志郎氏が12月8日、石川県の加賀市役所に山田利明市長を表敬訪問した。加賀市は2024年3月に日本の自治体で初めてとなる公共ライドシェア「加賀市版ライドシェア」をスタートさせており、この日はUberのアプリを使った配車マッチング及び試乗体験が行われた。
その詳細を紹介する。

ダラCEOとUber Japan代表が加賀市長を表敬訪問

公共ライドシェアは、一般ドライバーが自家用車を用いて有償で客を運ぶ仕組みで、とりわけ利用可能な交通機関が不足している地方都市において、地元住民や観光客輸送の課題解決への貢献が期待される。加賀市はそのモデルケースと位置づけられ、観光客が主要駅などを訪れた先の二次交通を拡大するため2024年3月12日に導入が開始された。

この日はまず、ダラCEOや山田市長らによる対談が行われ、対談には国土交通省北陸信越運輸局の佐橋真人局長も加わった。

山田市長は「加賀市は2024年の北陸新幹線延伸により観光客増加を予想していましたが、コロナ禍でタクシー運転手が少なくなり、二次交通が大きな課題となっていました。そこでUberの力を借り、公共ライドシェアというシステムを取り入れることにしました」とスピーチを展開し、ダラCEOらの来訪を歓迎した。

これに対してダラCEOは「Uberは大都市圏でサービスを始めましたが、我々の目的は都市の大きさに関係なく全国津々浦々にモビリティを行きわたらせるところにあります」と返答。

さらに「タクシー運転手は高齢化が進み、人数も不足しているため、特に規模の小さな都市においては交通網のモビリティ充実が難しい状況です。今回、加賀市との連携によって公共ライドシェアを実現できたのは非常に重要で、当社が大都市以外でもモビリティに関する解決策を出せることを証明できました。今後さらにこの連携が発展することを楽しみにしています」と続けた。
自らのアプリでマッチングし、ライドシェアで市内を視察

対談後、ダラCEOと山田市長は市役所玄関前に立ち、ダラCEOがUberアプリで自ら車両を予約。到着した車で市役所周辺をライドシェア体験した。
ダラCEOが日本の公共ライドシェアに試乗するのは初とのことだ。

初めて加賀市を来訪しライドシェアを体験したダラCEOは、市役所に戻った後に開口一番「日本の都市部以外を訪れるのは初めてです。大都市以外の日本の風景を楽しむことができ、本当にうれしく思っています」と笑顔。

Uberが12月15日から岩手、佐賀の両県でサービスを開始することで全都道府県展開を達成することを踏まえ、「Uberは日本の全47都道府県でサービス提供を開始するので、これからは日本政府はもちろん地元自治体やタクシー会社、そして公共ライドシェアに貢献してくださる運転手の方々とも協力しながら、モビリティを展開していきたい」と語った。

高齢化が進む中でスマートフォンやアプリをうまく使えず、デジタル化に追いつけない人が今後増えてくることも予想されるが、「テクノロジーと年齢の問題はすべての社会が直面しています。Uberとしてはインターフェースの簡素化を図ることで選択肢や複雑性を軽減したり、AIの搭載や音声機能によって配車依頼をできるようにしたりなど、年齢に関係なくより使いやすいものを提供していきます」と答えた。

実際、Uberはすでにシニア世代向けの新機能「Uber シニア」および「シンプルモード」の提供を日本でも開始。超高齢社会においてもサービスが浸透しやすいように戦略を展開している。

また、全都道府県展開を達成するUberが2026年以降に注力していきたいポイントとして「大都市圏外でUberのサービスを提供」を掲げた。

「やはり我々の最重要課題は、大都市圏外でUberのサービスを提供することにより、観光やモビリティを必要としている地域の経済を盛り上げていくことで、そこに貢献していきたい。もちろん自動運転など非常にワクワクするテクノロジーも日本で導入される日が来ると思いますが、目の前にある公共ライドシェアはいますぐ提供できるソリューションであり、2026年もここに注力していきたいと考えています」(ダラCEO)
利用増加傾向にある加賀市版ライドシェアの現状と今後

加賀市担当者によると、北陸新幹線の加賀市までの延伸に合わせて2024年3月にスタートした加賀市版ライドシェアは、2025年11月末時点までに3,311件の利用があったという。毎月概ね200件前後の利用があり、2025年11月は334件と増えたとのことで、まだ詳しい分析はしていないものの増加傾向にあるとの認識を示した。


ちなみに、利用者の国籍情報などを収集しているわけではないのであくまで推計値としたうえで、2025年4月以降の外国人利用者の割合は48%とほぼ半数に達していることを明かした。

加賀市版ライドシェアは7時から23時まで(金土のみ翌2時まで)サービスを提供。現在の登録ドライバー数は35人で、1日平均6~7台程度が利用されているという。地元住民向けには別途、乗り合いタクシーという仕組みが用意されていることから、利用は観光客が中心になっているようだが、乗り合いタクシーのサービス時間が終了した後の夜間にライドシェアを利用する地元住民もいるとのことだ。

なお、加賀市では本格稼働しているこの公共ライドシェアに加えて、2025年3月から6月にかけて公共ライドシェア運転手による貨客混載の実証事業もUber Japan、日本郵便とともに日本で初めて展開し、運転手が配車の手配を待つ間に「ゆうパック」の配達を行った。こちらについては2026年に第2弾を開催する予定となっており、Uberの公共ライドシェアを活用した地域課題解決の取り組みは今後も進んでいきそうだ。
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