来年は、どのファンドを軸にするか、あるいは新たに何を組み合わせるか。年末は、そんなことに思いを巡らせるタイミングでもあります。


一方で、投資はマラソンに例えられることもあるように、10年単位で取り組むのが当たり前の長期戦です。目先のリターンだけでなく、長い期間で見て、どれだけリスクに見合った形で資産を増やせるかという「運用効率」の視点が欠かせません。

そこで今回は、SBI証券投資情報部のシニア・ファンドアナリスト・川上雅人さんに、10年という長期で見たときに、リスクを抑えながら安定したリターンを積み上げてきたファンドと、リスクは大きいものの、それに見合ったリターンを獲得してきたファンドを紹介してもらいます。

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S&P500ファンド超え!? 10年の運用効率に優れたファンドとは?

2025年も残りわずかとなってきました。この時期は2026年におけるNISAの投資戦略について検討している方も多いのではないかと思われます。

2025年を振り返るとNISAで人気のeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)(愛称:オルカン)やS&P500インデックスファンドよりも、金(ゴールド)ファンドやAI(人工知能)に関連した株式ファンド、国内や新興国の株式ファンドなどが相対的に好成績を収めました。2025年は米国株式インデックスだけでなく、様々な国・地域の株式、様々な資産や有望テーマに分散投資した方が良かったといえます。

そこで今回は2026年からのNISAを見据えて、オルカン+αの投資戦略、S&P500+αの投資戦略をご紹介します。

有望と考えられるファンドの探し方は様々ですが、1つの方法としては、長期といえる10年間でみて、リスク(値動きの振れ幅)をある程度抑えて、安定したリターンを上げたファンド、つまり運用効率が高いファンドが候補となります。運用効率が高いファンドは、リスクは大きいものの、それに見合った高いリターンを獲得しているファンドも入ってきます。

運用効率はリスクに対して、どれだけ効率よくリターンを得られたかを見る指標であるシャープレシオ(=(リターン-安全資産利子率)÷標準偏差(リスク))で確認することができます。シャープレシオは金融商品の投資効率性を評価する際に使用する代表的な指標の1つです。
運用で取ったリスクに見合うリターンを上げたかどうかを測る指標で、リスク1単位あたりの超過リターンを計測し、この数値が大きいほど投資効率が高いことを示します。

SBI証券取り扱いで、NISA(成長投資枠)で買える10年シャープレシオ上位ファンド10本が図表1となります。

5位にS&P500インデックスファンドが入りました。6位から10位までのファンドもS&P500インデックスファンドには僅かに見劣りするものの相対的に運用効率が高いファンドといえます。
それぞれのファンドの特徴についてコメントします。
NISAで買える10年高効率ファンド10選
金(ゴールド)で安定した運用効率を示したファンド

1位:iシェアーズ ゴールドインデックス・ファンド(為替ヘッジなし)
2位:三菱UFJ 純金ファンド(愛称:ファインゴールド)

1位と2位はいずれも金価格との連動を目指す、いわゆる金(ゴールド)ファンドです。1位が海外の金ETFに連動を目指すファンドで、2位が国内の金ETFに連動を目指すファンドとなります。金(ゴールド)ファンドは直近3年間のリターンがS&P500ファンドよりも高かったことに加えて、リスクが相対的に抑えられていることから、10年で高い運用効率を実現しています。
成長テーマに集中投資し、高リターンを狙ったファンド

3位:野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)

このファンドは、各国・地域のマクロ投資環境見通しを考慮しつつ、技術力、価格決定力、利益構造、財務内容などの観点からファンダメンタルズ分析を行い、半導体関連企業の組入銘柄を決定しています。組入上位銘柄はエヌビディア、ブロードコム、台湾セミコンダクター(TSMC)、マイクロン・テクノロジー、ASMLホールディングなどとなっており、組入銘柄数は24銘柄です(※)。エヌビディア、ブロードコム、TSMCの組入が高いのが特徴で、リスクは大きいもののそれに見合った高いリターンを獲得しています。

8位:情報エレクトロニクスファンド

電気機器、精密機器などエレクトロニクスに関連する企業群や情報ソフトサービス、通信など情報通信に関連する企業群の株式を主要投資対象としているファンドです。
組入上位銘柄はフジクラ、東京エレクトロン、古河電気工業、富士通、ソニーグループなどとなっており、組入銘柄数は44銘柄です(※)。国内株式ファンドの中ではリスクは大きいもののそれに見合った高いリターンとなっています。

9位:三菱UFJ NASDAQオープン Bコース

新技術・開発力、ビジネスモデル等から成長が期待できるNASDAQ銘柄に投資しているファンドです。組入上位銘柄はエヌビディア、アルファベット、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、ブロードコムなどとなっており、組入銘柄数は49銘柄です(※)。

10位:netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)

テクノロジーの発展により恩恵を受ける米国企業の株式に投資するファンドです。組入上位銘柄はエヌビディア、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズなどとなっており、組入銘柄数は35銘柄です(※)。
配当を軸に、リスクを抑えて積み上げたファンド

4位:三井住友・配当フォーカスオープン

配当に着目し、中長期的な株価の上昇と配当収入による成長を目指すファンドです。組入上位銘柄はみずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、住友電気工業、三菱UFJフィナンシャル・グループ、日本たばこ産業などとなっており、組入銘柄数は96銘柄、予想配当利回りは3.7%です(※)。10年のリターンは国内株式ファンドの中ではそれほど高くはないものの、リスクが抑えられることから高い運用効率を実現しています。

7位:ニュー配当利回り株オープン(愛称:配当物語)

予想配当利回りが市場平均と比較して高いと判断される銘柄を中心に、財務内容の健全性、業績動向、配当方針等を考慮して投資銘柄を選定しています。組入上位銘柄は三菱UFJフィナンシャル・グループ、トヨタ自動車、日立製作所、三井住友フィナンシャルグループ、住友電気工業などとなっており、組入銘柄数は70銘柄で、予想配当利回りは2.79%です(※)。リスクとリターンの特性は4位のファンドと類似しています。

米国株インデックス・成長株の王道ファンド

5位:iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド

10年以上の運用実績があるS&P500インデックスファンドは基準日時点ではこのファンドのみです。インデックスファンドの中ではトップの運用効率ですので、S&P500は運用効率に優れたインデックスといえます。

6位:アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)

成長の可能性が高いと判断される米国株式に投資し、高い利益成長もしくは持続的な利益成長の可能性が高いと判断される企業を発掘しているファンドです。組入上位銘柄はエヌビディア、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン・ドット・コム、ブロードコムなどとなっており、組入銘柄数は61銘柄です(※)。
シャープレシオで見る、長期投資に強いファンドの共通点

10年シャープレシオ上位ファンドのうち金(ゴールド)ファンドとS&P500インデックスファンドを除く7本が、SBI証券が厳選した「長期投資×好実績」ファンドである「SBIセレクト」のファンドとなりました。

10年シャープレシオ上位ファンド10本は、今後、運用実績が10年未満の好成績ファンドが条件を満たすタイミングなどによって順位の入替えが考えられますが、10年の運用効率は、長期の視点で好成績ファンドを選ぶ有効な投資視点といえます。

ファンド選びにおいては、S&P500インデックスファンドとは異なる値動きが期待される、①リターンはまずまずでリスクが抑えられていることで高い運用効率を実現しているファンドと、②リスクは大きいが、リスクに見合った高いリターンを獲得しているため、高い運用効率を実現しているファンドの2種類を組み合わせて投資することが有効と考えます。

(※)ポートフォリオの情報は2025年10月末基準(8位のファンドのみ11月末基準)。個別銘柄の取引を推奨するものではありません。予想配当利回りはファンドの運用利回りを示すものではありません。

掲載されたファンドの情報はこちら

『投資情報メディア』より、記事内容を一部変更して転載。

川上雅人 かわかみまさと SBI証券 投資情報部 シニア・ファンドアナリスト(公益社団法人日本証券アナリスト協会認定アナリスト) 慶應義塾大学卒業。
丸三証券で国内株アナリスト、国内大手運用会社で18年間、商品企画・営業などを担当後、2020年よりauカブコム証券でファンドアナリストとして活動。2022年11月から現職。最新の投資情報を発信する『投資情報メディア』のレポート・コラムなどで投資信託や資産運用(新NISAなど)に関する情報提供を行う。 この著者の記事一覧はこちら
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