東京都とNTT東日本が進める“公衆電話ボックスを活用したフリーWi-Fi設備”の第一号が、運用開始にあたってメディアに公開されました。両者は2025年8月に、「公衆電話ボックスを活用したOpenRoaming対応Wi-Fiの整備・普及啓発等に関する基本協定」を締結していて、現在、都内にある公衆電話ボックスへの設備の設置が進められています。


○都内約1,500カ所の公衆電話ボックスに、災害時にも使えるWi-Fiを整備

この取り組みは、"デジタルの力で暮らしをより豊かにし、いつでも、だれでも、どこでも、何があってもネットワークにつながる環境を確保する"という、東京都が目指す「つながる東京」の実現に向けた、3年間のアクションプランに基づいて実施されています。2027年までに都内約1,500カ所の公衆電話ボックスに展開する予定で、Wi-Fiの整備費用を東京都が負担し、NTT東日本が運用・管理を担います。

導入されるWi-Fi設備は、WBA(Wireless Broadband Alliance)が推進するOpenRoamingに対応しています。OpenRoamingは、アクセスポイントごとの設定や登録、ログインなどの操作が不要で、一度スマートフォンにプロファイルをダウンロードして設定すれば、世界中の対応Wi-Fiに自動でつながる、いわばWi-Fiの国際ローミングのようなしくみです。暗号化による高いセキュリティも特徴で、安全かつ自動でグローバルにつながることができます。

公衆電話ボックスはこれまでも、災害時に優先してつながる通信拠点と位置づけられてきましたが、今回のWi-Fi設備の設置にあわせて、あらたにバックアップ電源も導入されるなど災害対策が強化されています。今後は、NTT東日本が2025年4月に立ち上げた防災研究所とも連携しながら、通信環境の災害対応力をさらに高めていく考えです。
○半径25~50m程度で同時に256台が接続可能

今回メディアに公開された第一号は、新宿御苑駅前交差点近くにある公衆電話ボックスです。東京都が指定する広域避難場所となっている新宿御苑や、帰宅支援対象道路である甲州街道が近いことから、この場所が選ばれました。Wi-Fiアンテナは電話ボックスの上に設置されていて、電波の届く範囲は周辺の環境によって半径25~50m程度。同時に256台が接続でき、バックアップ電源によって停電時にも6時間程度は接続が可能です。

東京都の小宮さんによれば、災害時だけでなく、インバウンド需要に応えることも目的のひとつで、まずは乗降客数の多い主要駅の周辺や、避難場所になっているような屋外の公園に近い場所を重点的に整備していくとのこと。
東京都では「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の際にもWi-Fiの整備を実施していて、都内にはすでに1,000カ所を超えるWi-Fiスポットが展開されていますが、最終的にはその3倍以上となる約3,600カ所までスポットを拡大していく計画です。

なお、対応する公衆電話ボックスには、それを示す緑と白のステッカーが貼付されており、ひとめでそれとわかるようになっています。ステッカーのQRコードからOpenRoaming利用のための事前登録もできます。また東京都では登録手順を示したリーフレットも配布していますので、見かけたらぜひチェックしてみてください。

著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。以降パソコン、携帯電話、スマートフォンからウェアラブルデバイス、IoT機器まで、身近なデジタルガジェットと、それら通じて利用できる様々なサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。 この著者の記事一覧はこちら
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