JA共済連では、平成16年度から、これら全国コンクール応募作品に描かれたテーマを集計し、小・中学生が、今、どのような視点で交通安全を捉えているのかを分析している。

○『スマートフォンの使用マナー』を呼びかける作品が、前年度に引き続きトップ

本年度の全国コンクール応募作品をテーマ別に分類すると、『スマートフォンの使用マナー』に関する作品が構成比19.0%(作品数67点)で最も多く、前年度に続きトップとなった。


学年別にみると、小学校低学年は7.5%、高学年は43.3%、中学生は49.3%と、小学校高学年から大きく増加しており、子どもたちがスマートフォンを持ち始める時期と重なる傾向が見られる。

これを訴求の対象別に分類すると、小学生の作品は、「歩行者」と「自転車」がいずれも31.3%、「自動車」が37.5%と、“ながらスマホ”の危険を道路利用者全体の問題として描いている点が特徴だという。

一方で、中学生では、「歩行者」を対象としたポスターが56.3%と半数を超え、制服姿の学生をはじめ若者が多く描かれている。危険を強い色調で訴える作品に加え、スマートフォンに注意が向くことで周囲の危険に気づけなくなる様子を多様な構図で表現する作品も多く、“歩きスマホ”の危険性を同年代の身近な問題として捉えていることがうかがえる結果となった。

○道路横断の基本ルール『手を挙げて渡ろう』が第2位に。 同じ構図から生まれる多様なメッセージ

続いて、構成比11.4%(作品数40点)を占めた『手を挙げて渡ろう』に関するテーマが第2位に。学年別では、小学校低学年が67.5%、高学年が22.5%、中学生が10.0%と、小学校低学年を中心に多く描かれている。

しかし、同じ「手を挙げて横断する」という場面でも、作品が伝えるメッセージは一様ではない。

自分の存在をドライバーに知らせる合図として表現する作品のほか、「止まってくれてありがとう」といった“思いやり運転”を題材とした作品や「気づいてよ、横断歩道にいる私」など、法規的な側面からドライバーに注意を呼びかける作品なども多く見られた。

道路横断という日常の身近な行為を、子どもたちが多様な視点から捉えていることが伝わってくる結果となった。

○定番テーマの「自転車ヘルメットの着用」が第3位

次いで、『自転車のヘルメット着用』に関する作品が構成比10.8%(作品数38点)で第3位に。学年別では、小学校低学年が28.9%、高学年が34.2%、中学生が36.8%と、幅広い学年でポスターの題材に選ばれている。


内容を見ると、小学校低学年の作品は、「乗る前にかぶる」、「忘れずに持っていく」など、ストレートに呼びかけるものが中心だが、高学年になると、百人一首かるたの取り札を模したポスターや統計的な情報を取り入れた作品など表現の幅が広がっている。

さらに中学生では、「髪型が崩れる」といった等身大の気持ちを交えつつ、「見た目より安全を大切に」と訴える作品が目立った。そのほか、ヘルメットを“命を守る存在”として象徴的に描いたり、ゲームの世界になぞらえて「リセットできないこと」を比喩的に示したりするなど、年齢とともに表現の抽象度や訴求方法が多様化している様子が読み取れる。

同コンクールは、交通事故による死者が急増した昭和47年よりスタート。以来、子どもたちの作品は、その時々の交通安全の課題を端的に映し出してきた。

JA共済は、引き続き、子どもたちの作品に込められた交通安全への願いを広く社会に届けるとともに、交通事故の未然防止に向けたさまざまな取組みを通じて、安全・安心な地域社会づくりに貢献していくとしている。
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