去る12月18日、NTT東日本神奈川事業部は神奈川・平塚市において、災害時の通信設備復旧の訓練を行う「通信復旧訓練」を実施した。

この訓練は、各種災害対策機器を用いた復旧技術の習得や平準化を図ることを目的としたもの。
実際に被災した状況を想定し、災害対策本部の開設から非常食の炊き出し・配布までさまざまな訓練が行われた。ここでは、その様子をご紹介しよう。

ドローンによる空撮や倒壊した電柱の撤去作業も実施

今回の訓練は、大型台風による被災を想定して行われた。具体的には、相模川が氾濫して平塚市の一部エリアで浸水被害や停電が発生し、電話やネットが繋がらず、電柱が倒れている様子がSNSの投稿やテレビの報道などで報告されているという状況だ。

この状況に対し、まず災害対策本部が開設され、「@InfoCanal」による非常招集が行われた。また早期復旧に向け、本部より各班に指示が出された。さらに、被災した自治体の災害対策本部にリエゾン班を派遣し、通信に関する情報の提供や復旧活動に必要な情報の収集も行われた。

この@InfoCanalは、携帯電話網やWi-FiなどのIP通信網を利用したNTTアドバンステクノロジ社の同報系システムのこと。災害時にはこのサービスを利用して災害対策本部員に情報の一斉送信を行い、各人のスマートフォンで確認してもらう仕組みになっているとのこと。リエゾン班は自治体と連絡をとりながら各種調整を行う人員のことで、災害の際は事前に自治体(今回は平塚市)の災害対策本部に派遣伺いを行い、その許可を得たうえで派遣されるそうだ。

続いて、アクセス設備(NTTと客を結ぶ設備)の点検と復旧が行われた。台風などの通信設備に被害を及ぼす可能性のある災害が発生した場合、まずは被害状況の把握のため現地設備の点検が行われる。
今回の場合は通信ができず孤立したエリアの復旧に向けたピンポイントの点検が実施された。

その状況報告に基づき、バイク隊とドローン隊が出動。倒木のため車では入り込めないエリアに赴き、ドローンを使った空撮映像による被害状況の調査が行われた。

調査の結果、ケーブル切断箇所が判明。復旧作業には倒壊した電柱の撤去が必要になることが分かり、荷台に小型クレーンが搭載されたユニック車の出動が要請された。訓練では、実際に会場に横倒しになった電柱が設置され、ユニック車によってその撤去を行う作業も行われた。

通信孤立エリアの救済や生活関連物資の支援も行われる

アクセス設備復旧訓練のあと、会場では通信孤立エリア救済の訓練も実施。自治体の要望を受けて、ポータブル衛星を利用した災害時用公衆電話、移動基地局車、お困りごと受付窓口などの設置が行われた。

NTT東日本によると、通常、指定避難所には災害時用公衆電話(特設公衆電話)というものがすでに設置されているが、それが使えない場合のためにポータブル衛星を利用する可搬型の臨時公衆電話も用意されているとのこと。会場にはそのアンテナなどが設置されていたが、思った以上にコンパクトで、ミニバンやワンボックスに積み込んで持ち運べる程度のサイズ感だった。

移動基地局車はNTTドコモの特殊車両で、トラックやワンボックスカーに通常の基地局と同じ設備が搭載されており、災害や大規模イベントなどで携帯電話が繋がりにくくなった際に応急的に通信サービスの復旧・確保を行うことができる。会場では車両の屋根から伸縮アンテナを立てるデモンストレーションも行われたが、近くの電柱や二階建ての家屋よりも高くポールが伸びていくのが印象的だった。


お困りごと受付窓口は、その名称の通り通信にかかわるさまざまな困りごとを相談できる窓口。ポータブル電源なども設置されており、スマートフォンやパソコンなどの充電もできるようになっているとのこと。

通信孤立エリア救済の訓練のあと、NTT東日本の中里ビルが停電して非常電源により給電されている状況を想定し、移動電源車による同ビルへの電源救済の訓練も行われた。また、排水を再生して循環利用できる簡易シャワーの設置や、非常食の炊き出し・配布なども行われた。

訓練終了後、会場ではNTT東日本神奈川事業部長の相原朋子氏が登壇。「今年は7月のカムチャツカ半島付近の地震による津波や、10月の八丈島での台風、先日(12月8日)の青森の地震など、災害が人ごとではない一年でした。だからこそ、今日のような訓練が大事だと思っています。想定通りいかなかったこともあると思いますが、それを“学び”と捉えてスキル向上や次の訓練に反映していければ」と講評した。
編集部おすすめ