優れた製品を作り、有名な「The Model」(ザ・モデル)に基づいたセールス&マーケティングフローを構築しているのに、なぜか競合に勝てない、あるいは比較検討の土俵にすら上がれない。多くのB to B企業がいま、この壁に直面しています。
本稿では、現代の購買行動のリアルと、競合に勝つために必要なインサイトの正体を解き明かします。ちなみに、The Modelというモデルは世界にはありません。これを言うと驚かれる方が多いこと......
マーケティングや営業が接触する前に勝負の9割は決まっている
衝撃的なデータがあります。B to Bのバイヤーはベンダーに問い合わせる(コンタクトをとる)時点で、すでに購買プロセスの57%を終えているそうです。ですから、顧客はサーチプロセスに入る前に、すでに独自の候補リスト、英語でいえばショートリストを作成しています。
そうです。顧客は知らないのではなく、選ばない理由があるのです。そして、実際に購入される製品の90%は、その初期リストの中から選ばれています。リードが作成される頃(57%以降)には、すでに他社に有利な仕様や比較軸で固まっており、自社は当て馬としての確認作業に利用されるだけに終わります。つまり、従来のBANT条件(予算・権限・ニーズ・時期)が揃った案件を追うだけのモデルでは、すでに手遅れなのです。
可視化できないダークソーシャルの支配
なぜ、顧客は営業に会わずに意思決定を進められるのでしょうか。その背景には、生成AIによる情報の民主化と、企業の一方的な努力が及ばないダークソーシャルの存在があります。
生成AIが発達したので、製品情報だけではなく、課題解決方法の情報の容易に入手できるようになりました。プロンプトで聞いてみるだけです。ですから、ベンダーにアプローチする頃には、顧客は課題解決方法を知っている可能性が高いのです。それなのに、「御社の課題はこうですね?」と指摘するのは間抜けです。
多くのマーケターはWebサイトの閲覧履歴や資料ダウンロード、広告クリックなど「公式」のタッチポイントのみを追っています。でも、みなさんが商品を買う場合はどうでしょうか?
実際には、SlackやTeamsなどの社内チャット、信頼できる知人とのDM、クローズドな勉強会での口コミといった、ベンダーが追跡不能なチャネルでの情報交換が本音の評判として意思決定を支配しています。これをダークソーシャルと呼びます。怖い名前ですね。このダークソーシャルによって企業や製品ブランドは形成されています。ブランドはもはや、企業が作れるものではないのです。
「何を(What)」から「なぜ(Why)」への転換
ダークソーシャルが当たり前の中、多くの国内ベンダーのWebサイトは、「提供します」「実装します」「サポートします」といった機能紹介(What)で溢れています。バイヤーが求めているのは機能の羅列ではなく、なぜ今、その抜き差しならない課題を解決する必要があるかという切実な理由です。
ポイントは、抜き差しならない課題であるということです。抜き差しならない課題の定義は、放置すれば甚大な損失を招く、顧客にとっての焦眉之急です。以下の3つがポイントです。
1.現状の深刻さ:「これまで騙し騙しやってきたが、ついに限界が来ている」という自覚を促す。
2.放置リスク:「今手を打たなければ、来期に〇〇%の損失が出る」という具体的な危機感。
3.タイミングの必然性:「市場ルールが変わる今こそが最後のチャンスである」という納得感。
ここも多くのベンダーは、「コストが削減できる」「生産性が上がる」など、抜き差しなる課題を述べていることが多いです。
勝利の鍵はコマーシャル・インサイト
「The Model」が前提とする「すでに買う気になっている顧客」を待つのではなく、「0~57%の意思形成プロセス」に介入しなければなりません。ここで重要なのが、単なる情報提供(ソートリーダーシップ)ではなく、コマーシャル・インサイトの提供です。
コマーシャル・インサイトとは、書籍『隠れたキーマンを探せ! データが解明した 最新B2B営業法』(著者:マシュー・ディクソンら 実業之日本社)で学んだことで、以下の属性があります
・常識を覆す:顧客の現状の認識に挑み、型破りな視点を提供する。
・自社への紐付け:その課題を解決できるのは特定のサプライヤー(自社)だけであると想起させる。
コマーシャル・インサイトの事例: SICモデルによるコンテンツ作成
SICモデルとは、同様に書籍「隠れたキーマンを探せ」のコマーシャル・インサイトを作成するための枠組みです。
S:刺激(Spark)
顧客がこれまで正しいと信じてきた常識や現状のやり方に対して、「実は間違っている」「このままではリスクがある」という驚きや気づきを与え、関心を引きつけます。
I:導入(Introduce)
顧客が気づいていなかった新しい課題や、現状を放置した場合に起こりうる損失(リスク)の全体像を詳しく紹介します。顧客自身のビジネスに対する考え方を変えさせることが目的です。
C:直面(Confront)
新しく定義された課題を解決するには、特定の解決策(自社製品・サービス)が必要不可欠であることを突きつけます。これにより、顧客を具体的な検討・購買アクションへと導きます。
筆者はこのSICモデルを使ってマーケティング活動に取り組んでいます。筆者が作成したSICモデル事例の一つでは、人材紹介業界向けに、市場調査を通じて「約9割のハイクラス人材がコンサルタントの専門性に物足りなさを感じている」という事実を突き付けました。
これにより、「クライアント企業ばかりを見ている」という業界の盲点を指摘し、AIによる客観的な分析という自社ソリューションの必然性を生み出すことに成功しました。筆者は転職のプロ?で、人材紹介業界に不満を持っていたというのも、これをテーマに選んだ理由です。
内向きの活動管理から、顧客の意思決定支援へ
従来のパイプライン管理は、デモ実施や見積提出といった自社の活動を追う、内向きなものでした。ここでデモをするとか、提案するとか、価格を提示するとか。
そうすることで、57%以前どころか、0%以前から顧客に伴走できるかもしれません。顧客の成功につながれば、ダークソーシャルでの存在感も増します。
The Modelの枠組みを超え、57%の前に勝負を決める。そのためには、顧客すら気付いていない課題を定義し、ダークソーシャルの中で語られる選ばれる理由を自ら作り出す戦略が求められています。
北川裕康 キタガワヒロヤス 現在は独立して、経営・営業&マーケティングのコンサルティングサービスを上場企業やベンチャー企業、および外資日本法人に提供している。2025年3月末までAI inside株式会社の執行役員CPO(Chief Product Officer)。38年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFS などのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などを歴任。大学は計算機科学を専攻して、富士通とDECにおいてソフトウェア技術者の経験もあり、ITにも精通している。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、学習して、仕事で実践。











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