2025年は携帯電話業界にとってどのような年だったのだろうか? 今回はスマートフォンメーカーの1年を振り返りたい。
携帯各社の戦略などが影響してメーカーの明暗が分かれた一方、消費者を苦しめているスマートフォンの価格高騰に関しては、今後割引が復活する可能性も出てきている。
価格高騰で急増した「ミドルハイ」
2025年のスマートフォンメーカーの動向を振り返ると、やはり市場にとても大きな影響を与えたのは、携帯電話料金と同様、円安の影響によるインフレ、それに伴うスマートフォンの価格高騰であることに間違いない。
とりわけそのことを明確に示したのは、米アップルの「iPhone 16e」と、米グーグルの「Pixel 9a」ではないだろうか。これら2機種はいずれも、両社の低価格モデルとして投入されたもので、とりわけ新機軸のiPhone 16eは「iPhone SE」シリーズの後継モデルと目されたことから、その価格に大きな注目が集まっていた。
だが蓋を開けてみると、iPhone 16eの価格はほぼ10万円と、iPhone SEシリーズと比べ大幅に値上がりしたことが落胆を招く結果となった。同様にPixel 9aも、2024年発売の前機種「Pixel 8a」からさらに値上がりし、ほぼ8万円という価格になったことで、やはり失望感を呼ぶこととなった。
そして2025年も、スマートフォンの価格に大きく影響する為替の傾向に大きな変化はなかったことからスマートフォンの価格高騰は継続し、ハイエンドモデルでは10万円超が当たり前という状況が続いている。メーカー各社は、昨今注目されるAI技術などを取り入れ、機能・性能をアピールしてはいるものの、高性能モデルは高くて買えないので売れない、という悪循環が現在も続いているのが実情だ。
それだけに2025年、急速に増えて存在感を高めたのが「ミドルハイ」スマホの増加である。これは名前の通り、性能的にハイエンドモデルとミドルクラスの中間に位置するスマートフォンなのだが、これまでは立ち位置が中途半端だったため、日本では存在感が薄かった。
だが、ハイエンドモデルの価格が急速に高騰したことで、従来ハイエンドモデルを購入していた人が買い替えづらくなってきている。そこで、そうした人たちの受け皿となるべく、AIやカメラなど、比較的高い性能が求められる機能に対応しながらも、10万円を超えない価格のミドルハイクラスのモデルを積極的に投入する動きが強まったのである。
具体的には、FCNTの「arrows Alpha」やシャープの「AQUOS R10」、米モトローラ・モビリティの「motorola edge 60 pro」などが挙げられる。
手堅さ重視の携帯大手の戦略がメーカーに明暗
そして、スマートフォン価格の高止まりは、国内のスマートフォン販売数で高いシェアを持つNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社の販売動向に少なからず影響を与えている。3社はスマートフォンの価格高騰を受け、より確実に売れるスマートフォンの調達・販売に力を入れる傾向を強めており、それがスマートフォンメーカーの明暗を分けることにもつながっているからだ。
携帯大手3社の動向がメリットにつながっているのが、すでにブランドを確立しているメーカーであり、その代表例がアップルである。実際、楽天モバイルを含む携帯4社は、先に触れたiPhone 16eの価格を、競合の動向をうかがいながら予約開始ぎりぎりまで調整するという、iPhone全盛期のころのような競争を繰り広げていたし、KDDIに至っては約6年ぶりに「iPhone 17」などの発売を記念したカウントダウンイベントまで実施。確実に売れるiPhoneの販売に一層力を注ぐ様子を見せていた。
そしてもう1社、メリットを得て販売を伸ばしたのが韓国サムスン電子ある。2025年にスマートフォンの「Galaxy」シリーズが日本発売から15周年を迎え、日本でもブランドを確立している同社だが、長らく大手3社の一角を占めるソフトバンクからの販売が途絶えていた。
だが、2025年に入ってその関係が改善されたのか、「Galaxy S25」シリーズを皮切りとしてソフトバンクへの端末供給を復活。折り畳んだ状態で8.9mmという薄さで注目された「Galaxy Z Fold7」のヒットなどもあり、国内でのシェア拡大へとつながっている。
一方、ある意味でその割を食う形となったのが中国のシャオミだろう。これまで、ソフトバンクやKDDIを中心にスマートフォンを供給してきたが、2025年は12月発売のローエンドモデル「REDMI 15 5G」をソフトバンクに供給したのみで、前機種まで継続的にソフトバンクに供給してきた「Xiaomi 15T Pro」はSIMフリー版のみの販売となっている。
ただ一方で、シャオミは2025年に国内で独自の実店舗「Xiaomi Store」を相次いでオープンしており、携帯大手によらない販路開拓へと大きく踏み出している。他社もシャオミほどではないとはいえ、オンラインを中心に自社独自の販路開拓に力を入れるようになってきており、価格高騰で細りつつある携帯大手以外の販路をどこまで開拓できるかは、2026年以降の競争にも影響してくる可能性がありそうだ。
そしてもう1社、異なる形で2025年に苦しんだのがソニー。2025年発売のフラッグシップモデル「Xperia 1 VII」で電源関連の不具合が生じ、一時販売を見合わせる事態となった。ソニー製のスマートフォンでこうした不具合が出たことは過去になかっただけに、事業規模を大幅に縮小しているソニーが、不具合の影響でスマートフォン事業から撤退するのでは?という声が多く出たことも確かだ。
ソニーはそうした声を否定し、今後もスマートフォン事業を継続する姿勢を打ち出しているが、一連の不具合はXperia 1 VIIを販売する携帯3社にも影響を与えたことも、また確かである。ソニーがスマートフォン事業を維持していくうえで、国内携帯3社からの販路は非常に重要な存在となっているだけに、その3社からの信頼を維持できるかどうかが、ソニーのスマートフォン事業の今後には非常に大きく影響してくるだろう。
規制見直しでスマホの大幅値引きは復活するか
では、スマートフォンの高止まりは2026年も続くのだろうか? 価格に大きく影響している要素の1つである為替の動向については筆者も予測できないし、2025年末にはAI需要拡大の影響によるメモリー不足がスマートフォンのさらなる高騰をもたらすことも懸念されるのだが、価格高騰を招いているもう1つの要因、政府によるスマートフォンの値引き規制に関しては、年末に入り突如見直しに向けた動きが浮上している。
それを示しているのが、総務省が2025年12月12日より開始した新しい有識者会議「利用者視点を踏まえたモバイル市場の検証に関する専門委員会」である。これは、2019年の電気通信事業法改正以降、携帯電話会社に課してきた規制を、利用者の視点に立って見直すべく設置されたものとなる。
そもそも、法改正でスマートフォンの大幅値引きなどを規制するに至ったのには、楽天モバイルやMVNOなどとの競争を促進して大手3社による寡占を崩し、料金を引き下げることにあった。だが、法改正をしてもなお、大手3社のシェアは依然9割を超えている状況にあるし、料金の引き下げに関しては、2020年から2021年にかけ、当時の首相だった菅義偉氏のトップダウンによって半ば強引に実現されてしまっている。
そして、同種の値引き規制を実施した韓国でも、競争が加速しない一方でスマートフォンの価格が高止まりし消費者にデメリットをもたらすようになったことから、2025年に規制の完全解除へと至っている。厳しい規制を敷くことがスマートフォンの価格高騰を招くなど、日本でもデメリットとなりつつあるだけに、今後の議論次第ではあるものの、スマートフォンの値引き規制がある程度緩和される目途が出てきたといえる。
ただ韓国の事例では、携帯電話会社がモバイル通信から、今後の成長が見込めるAIなどへ投資を大きくシフトしているのに加え、複数の事業者が大規模ハッキングに遭うなどして業績が悪化、規制解除後もかつてのような激しい値引き合戦は復活していないという。国内の携帯電話会社も同様に、最近ではAIなどモバイル通信以外への投資を強化しているのに加え、新規顧客獲得より既存顧客に重きを置く戦略への転換を図りつつあることから、規制が緩和されたとしてもかつてのような大幅値引き合戦が復活する可能性は低いだろう。
とはいえ、消費者の立場からすれば、規制の見直しによって高すぎるスマートフォンの買い替えに一筋の光明が見えてきたことは確かだ。有識者会議での議論は2026年に本格化するだけに、その議論の行く末が非常に気になるところだ。
佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら











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