NTTドコモは1月28日、マネックス証券の口座開設などのサポートをドコモショップで提供するサービスを開始すると発表した。ドコモショップの代理店が金融サービス仲介業の登録を行い、証券外務員資格を持つショップスタッフが店頭で証券に関するサポートを提供する。
キャリアショップのスタッフが証券口座の開設案内を行うのは業界初の取り組みだという。

当初は35店舗からスタートし、早期に100店舗への拡大を目指す。ドコモのコンシューマサービスカンパニーウォレットサービス部長の田原務氏は、将来的には1000店舗まで対応を広げ、全国展開を図る方針を示した。

○ショップでの携帯契約のついでに証券口座開設も

ドコモをはじめとした携帯4社は、モバイル事業と金融・決済事業との連携を推進している。ドコモは銀行業へ参入として住信SBIネット銀行を子会社化したほか、証券分野では2024年1月にマネックス証券を子会社化。クレジットカード「dカード」を使った投信積立サービスを開始するなど、グループ間での連携を強化してきた。

背景には、政府がNISAの拡大を進めるなど、国内で資産形成の気運が高まっていることが挙げられる。ドコモの調査ではNISAの認知率は78.4%に達しているものの、実際のNISA利用者は44.9%にとどまり、半数以上が利用していないのという結果となっていた。

同調査では、NISA利用者の45.7%が開始時に「誰かに相談した」と回答しており、身近な相談相手の存在がNISAを始めるきっかけになっているとドコモは分析する。一方で、NISAを利用していない人の76.7%が「身近に相談できる場所がない」と回答しており、対面による相談の場の必要性が浮き彫りとなった。

こうした状況を受けて田原氏は「大切なお金のことだから相談したいが、どこに行けばいいのか分からないとい悩みに対して、ドコモとして気軽に相談できるリアルな場所を広げる」と述べ、ドコモショップを活用した相談窓口の開設が実現することとなった。

ドコモショップは、携帯電話の契約、端末購入、料金プランの相談などの窓口として全国に約2000店が整備されている。
一部のドコモ直営店を除けば、ほとんどで代理店と呼ばれる事業者が店舗を運営している。今回の取り組みでは、代理店のコネクシオが運営する35店舗からスタートする。

証券などの金融サービスの提供は法的制約があるため、コネクシオが金融サービス仲介業としての登録を行った上で、ショップスタッフが外務員資格を取得し、専門スタッフとして利用者からの相談に応じる。現状、ドコモショップは基本的に予約制となっており、金融サービスの相談でも予約を前提として、専門スタッフが在席しているタイミングを予約する形となるようだ。

提供するのは、マネックス証券総合取引口座の開設にあたっての手順の案内、設定方法の操作サポート、NISA制度の解説、NISA設定の操作サポートによって、口座開設を支援する。その後は、dカード積立の各種設定、dアカウント連携の設定、「かんたん資産運用」の操作・設定のサポートを提供する。基本的には、制度や機能の説明と、操作方法の説明が主で、例えば特定の銘柄の推奨や投資判断などの投資勧誘は行わない。具体的な資産運用の相談に関しては、マネックス証券のサポートを案内する形になる。

「何を選べばいいか」といったような投資相談ではなく、「どう設定したらいいか」という操作支援のサービスとなる。それでも、「なにをしていいか分からない」、「操作が不慣れ」といった人でも、リアルの場で相談しながら口座開設からカード積立の設定までが完結できる点はメリットだろう。
○「運命的」なドコモショップとマネックス証券の組み合わせ

マネックス証券の清明祐子社長は、オンライン証券では「顔が見えない」という不安感があるという課題を挙げる。それを解消するために、これまでも全国での投資セミナーや直接顧客と社員が対話する機会も設けるなど、「顔が見える安心感」も大切にしてきたという。


マネックス証券は1999年に創業し、オンライン証券として手数料の安さと利便性でサービスを拡大してきたが、オフラインでも対応できるようになる今回の取り組みについて清明社長は「運命的」だとアピール。「店舗を持たないマネックス証券が店頭で対応できるようになる。ネットの利便性と対面の安心感という、難しかった両立が可能になる」として、投資をする人の層を拡大する、画期的な一歩になると期待する。

清明社長は、「携帯電話の料金プラン変更や機種変更のついでに、証券の相談が可能になる」と利便性を説明。「使い方が分からなければまた来店すればいい、という安心感こそが、店頭チャネルの最大の価値」と強調した。

ドコモ側も、d払いアプリ内から資産運用を行える「かんたん資産運用」を提供しているほか、dカード積立も含めてNISAの浸透が進んでいるとしつつ、「ドコモ経済圏でも7割程度はNISAを始めていない」(田原氏)と指摘し、開拓余地の大きさに期待する。

当初は35店舗とスモールスタートながら、早期に100店舗まで拡大して、将来的には1000店舗規模を目指すのがドコモの方針だが、これには代理店側の協力も不可欠だ。相談時間が長時間化しやすい証券サービスの相談に対して、予約が必要とはいえ、ドコモ側から代理店への十分難船ティブがなければ、事業の継続が難しくなる懸念もある。

金融商品取引法などの規制により、いわゆる「レ点ビジネス」や無理な勧誘は起こりにくいが、契約獲得だけを指標とした場合には代理店の負担が大きくなる。このあたりの詳細は語られなかったが、携帯に関する知識に加えて金融に関する知識も求められるハードルの高さはともかくとして、外務員をある程度確保できれば、代理店としても新たな収益源となりうるだけに一定のニーズはありえるだろう。

ドコモショップではdカードの紹介もしており、100万契約を突破した「dカード PLATINUM」では、マネックス証券の積立におけるdポイント還元が最大3.1%となるなど還元が手厚く、ショップでの紹介もしやすい。店頭でのdカード契約とNISA口座開設、積立設定がセットで提案しやすい点は、ドコモや代理店の双方にメリットだし、ユーザーにとっても相談しながらまとめて設定できる利便性もある。


金融・決済のビジネス拡大にショップというリアル店舗を活用する戦略は、携帯各社がこれまでも模索していたが、ドコモが先行して取り組むことになり、その成否が注目される。

小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら
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