弁護士ドットコムは1月29日、「養育費の制度改正についてのアンケート調査」の結果を発表した。調査は2026年1月15日~1月23日、離婚検討中の100名、離婚協議中の50名、離婚経験者486名を対象にインターネットで行われた。

○離婚協議中の人の過半数が「法定養育費制度」を認知

父母の離婚後の養育費についてのルールが変わる。現在、養育費の未払いや不払いで生活が困窮する家庭が問題になっているが、この新制度により、こどもの利益を確保することや、親の責務が明確になることが期待される。離婚時に取り決めがなくても子ども1人当たり月額2万円を請求できる「法定養育費」や、養育費を優先的に差し押さえることのできる「先取特権」(上限子ども1人当たり月額8万円)が導入される。今回、改正民法施行の2026年4月を前に、制度を利用する可能性の高い層(離婚協議中の人・離婚検討中の人)を中心に意識調査を行った。

まず、離婚視野の回答者(150名)に「法定養育費の制度について知っているか」を尋ねたところ、33.3%が「知っている」、66.7%が「知らない・わからない」と回答した。このうち離婚協議中の50名に絞ると、認知度は54.0%と過半数だった。実際に手続きに入っている人たちにとっては、自身の生活に直結する制度だということが推測される。

また、制度の概要を説明した上で「この新制度に期待ができるか」を尋ねたところ、離婚視野の回答者(150名)の44%が「期待できる」「やや期待できる」と回答した。一方で、「あまり期待できない」「期待できない」と回答する人は20%おり、期待できない理由として「ないよりはいいが、物価高の中、月2万円では、食費にすらならない」や「強制的に養育費を取れるのはとてもありがたいが、少なくとも、3万円ほどは欲しい」など、上限額への不満についての声が目立った。

○「先取特権」への期待度は高め

離婚視野の回答者(150名)に、子ども1人あたり月額上限8万円まで差し押さえがしやすくなる「先取特権」についても尋ねたところ、法定養育費に比べて、認知度はさらに低く、14.7%しかなかった。実際に離婚協議中の人(50名)でも24.0%と、4分の1に満たず「専門用語がわかりにくい」などの声があった。

一方、期待度については、法定養育費より高い回答だった。
離婚視野の該当者(150名)全体で「期待できる」「やや期待できる」の合計は50.7%と半数を超えた。

肯定的な意見としては、「公正証書が無くても強制執行できるなら良い」(50代女性・離婚検討中)や、「不払いが起こった際に心強い仕組みだと思った」(20代女性・離婚検討中)、「差し押さえをするのは、相当な手間と費用が発生する。それが軽減されるのは親権者の負担を減らすことができる」(50代男性・離婚検討中)といった声があった。

一方、否定的な意見としては、「相手が退職したり差し押さえる財産がない場合は、結局払われずに終わってしまう。対策を考えてほしい」(30代女性・離婚検討中)や、「上限金額が少ない」(40代女性・離婚検討中)、「"先取特権"や"優先的回収"といった専門用語が多く、仕組みが直感的に理解しづらく伝わらない」(20代男性・離婚検討中)といった指摘が見られた。
○約80%が「相手の財力や支払い意思」に強い不安と回答

離婚視野の回答者のうち、養育費を受け取る側となる予定と答えた69名に「養育費について不安なこと」を複数回答で尋ねたところ、「相手の財力や支払い意思」が最多の78.3%、「相談や手続きの時間と労力」43.0%、「相談や手続きの費用」が40.9%と続いた。養育費がきちんと支払われるかの確証がないなかで、先行きに不安を抱えていることがわかる。

具体的な意見としては、「請求しても、逃げるだけで、いたちごっこ。裁判費用も弁護士費用も調査費用もかかった後に逃げられる。弁護士からも、逃げる相手は対応しようがないと言われた」(50代女性・離婚検討中)や、「自分から調べに行かないと情報がなく、大変な状況の時に対応していくにはかなりのエネルギーが必要」(50代女性・離婚検討中)といった声があった。また、「物価高で日々の生活が苦しい中、二人の乳幼児(長男3歳、次男1歳)を抱えながら仕事を継続しながら、1日を乗り越えるのにやっと。法定のわずか数万では全く足りない」(40代女性・離婚協議中)といった声も寄せられた。

○最も相談したい(相談している)相手は「弁護士」がトップ

さらに、69名に「最も相談したい(相談している)相手」を単一回答で尋ねたところ、弁護士が46.4%とトップだった。親族・知人などが続き、行政窓口や裁判所などの公的機関は下位となった。実際の交渉に向けて信頼できる相手として専門家が求められていることがみえてくる。

○離婚経験者のほぼ半数が未払い・不払いの経験あり

今回、離婚経験者の回答も分析した。養育費を受け取っている、受け取っていた経験がある離婚経験者(220名)に養育費の支払い頻度について尋ねたところ、46.4%(102名)が養育費の未払いや不払いの経験があったことがわかった。

○不払いに遭った人の4割以上が泣き寝入り

離婚経験者で未払い・不払いの経験があると答えた102名に、「どのような行動をとったか」を複数回答で尋ねた。このうち「何もしなかった・諦めた」という、いわゆる"泣き寝入り"した人が40.2%だった。一方、履行勧告を利用したり、弁護士に相談したりするなど専門的な手続きに進んだ人は20%弱にとどまった。

○泣き寝入りの理由は

離婚経験者で未払い・不払いに遭った経験があり「何もしなかった・諦めた」と答えた41名に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「手続きが複雑で時間がかかりそうだったから」「相手からの報復(DVなど)が怖いから」が31.7%と最多となった。「相手に支払い能力がないとわかっていたから」が24.4%と続いた。

○「頼りになった相手いなかった」が36.8%

離婚経験者(220名)には、「養育費の取り決めや請求で、最も頼りになった(相談した)相手」についても尋ねたところ、離婚視野の人と同様、弁護士が38.6%とトップだったが、一方で「いない」と回答した人も36.8%いた。大きく離して「裁判所」(9.5%)「行政窓口」(3.6%)など公的機関が位置する結果となり、これまで、養育費を受け取るひとり親が手続きのなかで孤立してきた経緯が見て取れる。
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