三寒四温の横浜に冷たい空気が戻った3月10日、神奈川県立こども医療センターには温かな話題が届いた。同センターでJA共済連神奈川による寄付贈呈式が行われたのだ。


今回の寄付は、一般社団法人ワンスマイルファンデーションが開発した笑顔認証技術「スマイラル」を活用したプロジェクトの成果によるもの。来院した子どもや家族、職員らの“笑顔”をカウントし、1笑顔=1円として寄付につなげる仕組みで、JA共済連より寄付金が贈られた。
○JA共済連神奈川が「笑顔」の収益を寄付!

神奈川県とJA共済連神奈川は2025年3月に包括連携協定を締結。その連携事項の一つである子ども・子育て支援に関する事項として、今回のプロジェクトが始動した。

病院の総合待合や事務局前、さらにはJA共済が協賛する小学生バレーボール大会やJA共済の書道コンクール表彰式の会場に「スマイラル」を搭載したデバイスを設置。来院した子どもたちやその家族、そして現場で働く職員たちの笑顔をカウントし、その総数が寄付額に反映される仕組みだ。

今回贈呈された寄付金は、スマイラルによる成果にJA共済連神奈川としての拠出金を加えた、計13万1333円。贈呈式では、JA支援部、須藤部長より目録が手渡され、石川浩史病院長より感謝状が贈呈された。

石川病院長は「スマイラル」が病院内にもたらした変化について、「実は私自身も、1日に5回ほど端末の前で笑顔を作っていました。そうすると、不思議と気持ちが楽になるんです」と振り返る。

病院という場所は、患者やその家族にとって、どうしても緊張や不安が付きまとう。しかし、端末の前で子どもたちが興味津々で集まり笑顔を作り、楽しそうに過ごす姿は、周囲の空気を変えたという。


「病院に来ることは、病気との戦いで辛いことも多い。けれど、学校では味わえないような楽しいことがここにはある、そう思ってもらえる場所にしたいんです。今回のインタラクティブな取り組みは、子どもたちだけでなく、日々多忙を極める職員にとっても大きな励みになりました」(石川病院長)

さらに石川病院長は病院経営の現状にも言及し、「病院経営は全国的に厳しい状況にあり、予算ベースでは対応が難しいアメニティ関係の充実など課題がある。今回の寄付金は、そうした患者の療養環境向上に有効に活用したい」と話し、今回のような取り組みを通じ、病院を「普通の生活では味わえない楽しい体験ができる場所」に変えていきたいと展望を示した。

システムを開発したワンスマイルファンデーションの辻早紀代表理事は、今回の病院での実施を経て、新たな展望を見出したという。

「病院というフィールドで実施したのは今回が初めてでした。そこで気づかされたのは、病状や状況によって、どうしても笑顔を作ることが難しいお子様もいらっしゃるということです」(辻代表理事)

今回設置した総合待合だけでなく、実施前に多様な病棟を見学する中で、厳しい現実に直面している家族の姿を目の当たりにしたという辻さん。「笑顔」という象徴的なアクションだけでなく、今後は「サムズアップ」や「拍手」など、どんな小さな肯定的なアクションでも幸福の指標として検知し、寄付に繋げられるようなインクルーシブな設計を目指したいと熱く語った。

JA共済支援部、普及管理課の山本課長は、プロジェクトを完遂したことへの手応えを次のように示した。

「まずは無事に最後までやり遂げられたことにホッとしています。バレーボール大会や書道コンクールといった地域貢献活動とスマイラルを掛け合わせることで、多くの方に活動を知っていただけました。次年度以降もこれを活用した取り組みを継続し、さらに活用の場を広げていきたいと考えています」(山本課長)

ひとつの笑顔が、1円の寄付金になる。
そのシンプルで分かりやすい仕組みは、寄付という行為を身近なものにし、医療現場に活気をもたらした。今回の寄付金は、病院のアメニティ向上や、子どもたちのための環境整備に有効に活用される予定だという。

笑顔が笑顔を生み、その積み重ねが支援となって循環していく。この笑顔の連鎖は、これからも多くの人々の心に寄り添いながら、さらに拡大していくに違いない。

猿川佑 さるかわゆう この著者の記事一覧はこちら
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