例えば、こんな会議の場面はないでしょうか。

上司:「A案とB案、以上。
何か意見ある?」
(会議室が静まり返る)
上司:「…誰かない?」
部下:「特にありません」

会議はそのまま進み、終わります。

けれど会議室を出たあと、若手同士ではこんな会話が交わされています。

「何を基準に意見を言えばいいのか分からなかったよね」

管理職の方から
「最近の若手は意見を言わない」
「Z世代は消極的だ」
という声をよく聞きます。

しかし実際には、若手が何も考えていないわけではありません。多くの場合、“考える軸”が共有されていないだけなのです。

前回の記事では、Z世代との関係づくりにおいて「無理に迎合せず、等身大で向き合うこと」が大切だとお伝えしました。

最終回となる今回は、その関係性をさらに前進させるポイントとして、「会議や指示の意味を言語化するマネジメント」について考えてみたいと思います。

会議で意見が出ないのは「考える軸」が示されていないから

多くの管理職は、「自由に意見を言ってほしい」と思っています。しかし実際には、前提や目的が曖昧なまま「何か意見ある?」と聞かれると、若手は戸惑ってしまいます。

【ありがちな会話】
上司:「A案とB案、以上。何か意見ある?」
部下:(どんな観点で考えればいいのだろう…)
部下:「特にありません」

このとき若手が感じているのは、「意見がない」ではなく「何が正解か分からない」という不安です。

判断軸が共有されていない場面では、発言はリスクになります。
結果として、沈黙を選んでしまうのです。

【信頼される会話】
上司:「A案はスピード重視、B案は品質重視。今回は“半年以内にリリースする”のが前提だよね。その前提ならどちらが現実的だと思う?」
部下:「半年以内ならA案の方が合いそうです」

考える軸が示された瞬間、若手は安心して自分の考えを言葉にできます。

意見を出しやすい会議とは、自由な場ではなく、思考の前提が共有された場なのです。
結果だけを褒めても刺さらない
○Z世代は「どう考えたか」を見てほしい

もう一つ、Z世代とのコミュニケーションでよく見られるのが「成果だけを評価する会話」です。

【ありがちな会話】
部下:「企画案をまとめました」
上司:「いいね、この内容でいこう」

一見ポジティブですが、若手はこう感じることがあります。

「どこが良かったのだろう?」
「自分の意図は伝わっているのかな?」

結果だけを評価されると、自分の思考は見てもらえていないと感じるのです。

【信頼される会話】
上司:「この企画、ターゲットの行動の流れを分解して考えているのがいいね。特に“来店前の購買心理”に注目したのは面白い視点だと思った」
部下:「そこを見てもらえて嬉しいです」

Z世代は、アウトプットだけでなく思考プロセスを理解してくれる上司に信頼を抱きます。

どこを評価されたのかが分かると、「ここを伸ばせばいい」という成長の方向も見えてくるからです。
完璧を装う上司より、“温度のある上司”

Z世代が距離を感じやすいのは、完璧な上司です。


【ありがちな会話】
部下:「この施策のリスクってどう考えればいいでしょうか?」
上司:「そんなの経験で分かるだろ。とにかくやってみろ」

この瞬間、部下の中で「もう質問しない方がいい」という判断が生まれます。

心理的安全性は、こうした一言で簡単に崩れます。

【信頼される会話】
上司:「全部見えているわけじゃないけど、過去の案件では〇〇のリスクが起きたことがあるんだ。今回はそれを避けたいから、一緒に整理して考えてみよう」

ここには

自分も完璧ではないという開示
一緒に考える姿勢

が含まれています。

Z世代は威厳で動く世代ではありません。人間味で信頼する世代です。
最終回:Z世代が求めているのは「理解される仕事」

Z世代とのコミュニケーションのカギは

・会議や指示の意味を言語化すること
・完璧を装わず温度を持って向き合うこと

にあります。

多くの管理職は、残業文化の真っただ中で「会社のために身を粉にして働く」ことが当たり前の時代を経験してきました。

一方、Z世代は仕事と人生を対立ではなく“調和”として捉える世代です。

価値観が違うのは当然であり、どちらが正しいという話でもありません。

しかし、働く場所は同じ組織です。


だからこそ大切なのは、若手を理解しようとすることだけではありません。

上司が

「なぜこの仕事をするのか」
「何を大切にしているのか」
「自分は何に迷っているのか」

そうした意味を言葉にすることです。

意味が共有された瞬間、世代の違いは問題ではなくなります。

Z世代が求めているのは、完璧な上司ではありません。

“一緒に考え、意味を共有してくれる“温度のある上司”なのです。

瀬田 千恵子 せた ちえこ
株式会社チームボックス 取締役 COO/リーダーシップ開発・組織開発コンサルタント 国内外の企業で人事・採用・人材開発職を経て、現在は株式会社チームボックスにてCOO(最高執行責任者)を務める。現場の指揮官としても活躍し、数多くのリーダー育成に携わるとともに、日本有数の大手企業の経営層の育成にも取り組んでいる。⽴教⼤学⼤学院 経営学研究科修了(経営学修⼠/専⾨:リーダーシップ開発)。ICC国際コーチング連盟認定プロフェッショナルコーチ。
【登壇実績】日経クロスウーマン主催:悩める管理職のためのオーセンティックリーダーシップ術そのほか大手飲料メーカー、ヘルスケア業界企業をはじめ、業界を問わず企業・団体にて講演実績を持つ。リーダーシップ開発や組織変革をテーマに、現場感覚と理論の両軸を活かした実践的な内容で多くの共感を得ている。
【受賞歴】Japan CxO Award:トップノミネーター この著者の記事一覧はこちら
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