物価高が続く中、外食チェーン各社では値上げが相次いでいる。そんな中でも、サイゼリヤは「ミラノ風ドリア300円」をはじめとする低価格路線を崩さず、客単価857円という水準を維持している。
なぜ、ここまで安さを保ちながら、利益も出し続けることができるのか。

今回は、日頃からサイゼリヤをよく利用しているという、名古屋在住の長期投資家・なごちょう氏(@Nagoya_Tyouki)に、低価格を支える仕組みと、同社が今後どこまで成長を広げていけるのかを聞いた。
○ミラノ風ドリア300円は、なぜ維持できるのか

国内に約1060店舗を展開するサイゼリヤは、低価格イタリアンの定番として、外食業界の中でも独自の存在感を放っている。物価上昇が続くなか、多くの外食チェーンが値上げに踏み切る一方で、同社は客単価857円という低水準を維持しているのだ。

この価格設定を支えているのは、緻密に組み立てられた事業構造と、現場の負担を抑えるオペレーションだ。オーストラリアなどの自社工場で食材を加工し、店舗では火を使わず、温めや盛り付けを中心とした工程に絞る。さらに近年は、QRコード注文やセルフレジの導入も進めてきた。

こうした仕組みは省人化にとどまらない。店舗スタッフの作業をできるだけシンプルにし、少人数でもミスなく店を回せる体制をつくることで、現場のストレスそのものを減らしているとか。

「昔から基本のメニューはあまり変わっていません。それでも、このインフレ下で客単価が800円台というのは本当にすごいことだと思います。最近は、調理をしないだけでなく、注文から会計までかなり自動化されました。
店員さんの負担もかなり減っているはずです。以前は国内事業が長く赤字で、『ボランティアみたいだ』とまで言われた時期もありましたが、粉チーズの無料提供を見直すなど、細かいコスト管理を積み重ねたことで、いまは国内事業だけで50億円の利益を出せる体質に変わってきました」(なごちょう氏、以下同)

○マックと“逆”でも勝てる。サイゼリヤの異質な戦略

サイゼリヤの強みは、安さだけではない。同価格帯の外食チェーンと比べても、使い勝手のよさが際立っているとか。

一般的なファストフード店では、回転率を上げるために滞在時間を短くする工夫が取られることが多い。だが、サイゼリヤはむしろ長居しやすい空間を保ち、結果として追加注文につなげる構えを取っている。

食事の場としてだけでなく、ちょっとした休憩や軽い飲みの場としても使えることが、他チェーンにはない強みになっているのだ。

「外食産業の中で、いま一番強いのはサイゼリヤだと思います。マクドナルド(2702)でさえ、ある意味では競合として意識せざるを得ない存在なのではないでしょうか。例えばマクドナルドは長時間座りにくい椅子を置いていたり、松屋は効率重視で、少し落ち着きにくい空間だったりしますよね。それに比べて、サイゼリヤは長居しても気まずくなりにくく、居心地がいい。カフェの代わりにも使えますし、デニーズなら450円ほどするドリンクバーが200円です。
ワインもグラス100円、1.5リットルのマグナムボトルが1100円なので、気軽に飲めるチェーンとしてもかなり強いと思います」

加えて、出店戦略にもサイゼリヤらしさが表れている。一等地の路面店にこだわらず、他店の撤退跡や、駅近でも地下など少し見つけにくい場所を選ぶことで、固定費の大きな負担となる家賃を抑えているとか。

「例えば、名古屋駅周辺にも3店舗ありますが、出口近くの半地下や、スパイラルタワーの地下1階など、普通なら少し見つけにくい場所にあります。私がよく行く名古屋・金山の店舗も、ゲームセンターの跡地の居抜きです。目立つ場所や一等地を取りにいくというより、とにかく家賃コストを抑えられる場所を選んでいる印象があります。それでも、どの店もかなり混んでいて、行列ができることもある。そこがサイゼリヤのすごさですね」

○日本のままで通用する、サイゼリヤ海外展開の強み

こうして磨き上げてきたビジネスモデルを背景に、サイゼリヤの株価はコロナショック時から大きく持ち直してきた。一方で、国内店舗数はすでに1000店規模に達しており、日本国内だけで大きく店舗を増やしていく余地は限られつつある。

そこで次の成長の柱として期待されているのが、海外展開だ。

多くの外食企業は海外進出の際、現地の嗜好に合わせてメニューや味付けを大きく変え、オペレーションも複雑になりがちだ。だが、サイゼリヤは日本で確立した仕組みを大きく崩さず、そのまま海外へ持ち込める点に強みがある。再現性の高さが、そのまま国際展開のしやすさにつながっている。


「サイゼリヤは、すでに海外でかなり大きな利益を上げています。特に中国では景気減速が懸念されていますが、それでも日本の倍近い利益を出しているのは驚きです。客単価も国内と大きく変わらず、現地向けに無理に味を変えるようなこともしていません。2026年8月期末には、国内1073店舗に対し、海外を706店舗まで広げる計画も打ち出しています。これだけ利益率が高くて、日本でつくった仕組みをそのまま他国にも持っていける外食チェーンは、かなり珍しいと思います。日本発の外食企業の中でも、国際競争力はかなり高いのではないでしょうか」

徹底した標準化で無駄を減らし、低コストでも利益を出せる体質を築いてきたサイゼリヤ。その強さは、単に低価格路線にあるのではなく、現場の負担まで含めて無理なく回る仕組みをつくってきた点にある。

国内で磨いてきたこのモデルを海外でも広げていけるのであれば、成長の余地はまだ大きい。日本の外食チェーンのなかでも、サイゼリヤの次の一手は引き続き注目を集めそうだ。

西脇章太 にしわきしょうた 1992年生まれ。三重県出身。県内の大学を卒業後、証券会社に入社し、営業・FPとして従事。
現在はフリーライターの傍ら、YouTubeにてゲーム系のチャンネルを複数運営。専門分野は、金融、不動産、ゲームなど。公式noteはこちら この著者の記事一覧はこちら
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