クアルコムは、スペイン・バルセロナで開催された「MWC26」にあわせて、ウェアラブルデバイス向けの新しいチップセット「Snapdragon Wear Elite」を発表しました。MWCのクアルコムのブースにも、スマートウォッチからグラスまでズラリと並んでいたほか、展示会場でもたくさんのウェアラブルデバイスを目にしました。
スマートグラス元年、実用性増した製品が続々
「スマートグラス元年」とも言われるほど、昨年から今年にかけて新製品が続々登場しているのがメガネ型のデバイスです。日本での展開を明らかにした「Meta Ray-Ban Display」から、日本でも購入可能な「Even G2」「Rokid スマートAIグラス」、眼鏡市場からもカメラを搭載した「Linse」が発売されています。さらに、今年はXREALのAndroid XRグラス「Project Aura」も発売予定。MWCの展示会場でも、たくさんのスマートグラスを目にしました。
TCLのブースに展示されていたのは、CESで発表されたARグラス「RayNeo Air 4 Pro」。世界初のHDR10対応ディスプレイを搭載し、2D-3D変換機能や、Bang & Olufsenによる没入型オーディオが特徴です。すでに日本でも購入可能ですが、MWCでは限定販売のバットマンエディションも展示されていて、注目を集めていました。
かけると目の前に大画面ディスプレイが現れるARグラスに対して、多く見かけたのが、一見すると普通のメガネにしか見えない外観と、AI連携が特徴のAIグラスです。たとえば、Googleが体験ブースを設けていたのは、カメラで捉えた情報をもとに「Gemini」と会話ができるAIグラス。レンズ越しに透過ディスプレイが表示され、視覚的に情報を重ねて見ることもできます。外国語を翻訳してくれたり、レコードジャケットからその曲を聴くことができたり、目的地までナビしてくれる機能も体験できました。
ディスプレイがカラーだったり単色だったり、UIに違いはあるものの、多くのスマートグラスが同様にカメラ、ディスプレイ、マイク&スピーカー、そしてAIという組み合わせでした。Metaの隣にブースを構え、連日多くの行列ができていた「Qwen Glasses」は、アリババの「Qwen AI」と連携。中国では、すでに「Quark AI Glasses S1」として製品化されています。また、プロジェクターメーカーXGIMIのAIグラス「MemoMind」は、軽量かつ多彩なデザインのフレームをカスタムできるのが特徴。いずれもAIとの対話や翻訳、プロンプター、音声メモの録音・要約などが利用できます。
AI搭載デバイスで見えた“スマホの次”
スマートグラス以外にも、カメラとマイク&スピーカー、AIを組み合わせたデバイスとして注目を集めていたのが、モトローラのペンダント型AIデバイス「Project Maxwell」です。CESのほか、2月に日本で開催された「Lenovo Tech World Japan 2026」でもお披露目されました。MWCのレノボブースでは、実際にデバイスによる翻訳などのデモを見ることができました。
「Project Maxwell」について、モトローラ チーフマーケティング&戦略責任者のフランソワ・ラフラム氏は、クアルコムの「Snapdragon Wear Elite」の発表イベントに登壇した際に、次のように説明していました。「たとえば、カメラがコンサートのポスターをとらえたら、ユーザーの指示で連携したAIがそれを分析し、イベントの日時や場所、チケットの空き状況を調べ、購入を代行してくれる。さらに、友人や同僚に情報を共有して、一緒に行く計画を立てることも可能になる」。
なお「Snapdragon Wear Elite」は、ウェアラブル向けのチップセットでは初めて、AI処理に特化したeNPUとNPUを搭載。
クアルコム ウェアラブル・パーソナルAI部門 SVP兼GMのディノ・ベキス氏は、これによって今後ウェアラブルデバイスでは、「すべてを記録してあとから検索」だったり、「24時間体制の予防的な健康サポート」「日常タスクを自律的に代行する」といった新しい体験が可能になると話します。グラス、ウォッチ、リング、ペンダント、ピンなど、さまざまな形状のウェアラブルデバイスがシームレスに連携。ウェアラブルデバイスは、単なるスマートフォンのアクセサリーではなく、ユーザーの文脈を理解して自律的にサポートする「パーソナルAI」や「インテリジェントコンパニオン」へと進化すると言います。
「Snapdragon Wear Elite」を搭載するデバイスも早期に登場予定で、発表会に登壇したサムスン電子のモバイルエクスペリエンス事業部 エグゼクティブバイスプレジデント ソン・インカン氏は、今夏発売される次期「Galaxy Watch」に搭載されると明言しています。なお、クアルコムのブースには「Snapdragon Wear Elite」のリファレンスモデルとして、カメラを搭載したスマートウォッチが展示されていました。このウォッチも気になるところです。
センサーやカメラ、マイクなどから常時さまざまな情報を記録できるだけでなく、ウェアラブルデバイスでもスマートフォンのように、ローカルで処理ができるオンデバイスAIが当たり前になれば、さまざまな可能性が広がります。たとえば、スマートグラスやイヤホンの翻訳機能は、今はスマートフォンやクラウドに処理を委ねているためどうしても遅延が生じますが、より自然な速度で利用できるようになるかもしれません。
2026年はスマートグラスに限らず、AIをより気軽に利用できるウェアラブルデバイスが本格的に浸透していく1年となりそうです。
著者 : 太田百合子 おおたゆりこ テックライター、エディター。インターネット黎明期よりWebディレクションやインターネット関連のフリーペーパー、情報誌の立ち上げに携わる。











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