試合中に舌を出し、余裕を見せるデービス。(C)Getty Images

ビデオ判定導入を訴える声も

 前代未聞のシーンが波紋を広げている。

 問題視されているのは、現地時間3月1日に米ニューヨーク州ブルックリンのバークレイズセンターで行われたボクシングのWBA世界ライト級タイトルマッチで、王者ガーボンタ・“タンク”・デービス(米国)が見せた“膝つき”だ。

【動画】整髪剤のせい? 前代未聞だったタンクの「ダウンシーン」をチェック

 デービスがWBA世界スーパーフェザー級王者のラモント・ローチ(米国)の挑戦を受けた一戦は、両雄が互角の攻防戦を展開。会場のボルテージもヒートアップしていた9回に“事件”は起きる。ローチの左パンチを受けたデービスが突如戦いをやめ、膝をつくような仕草を見せたのだ。

 会場がどよめく中、デービスは、コーナーに直行。セコンドにタオルで頭をふいてもらう異例の振る舞いを見せた。当然ながらローチも含めてダウン判定が出ると思われたが、カウントを始めかけたレフェリーは、最終的にダウンを取らず。そのまま試合を継続した。

 結局、試合は12ラウンドで決着がつかずにドロー。ただデービスがダウンを逃れ、回復のための“一時休憩”を取ったようにも見える9回のシーンには批判が殺到。王座奪取を確信したローチも試合後に「あれはダウンだ。ごちゃごちゃ言いたくないけど、俺は勝っていた。判定にはがっかりだね」とやりきれない思いを口にした。

 スタッツもほぼ互角だっただけに、ダウン判定となっていれば、デービスのキャリア初黒星となっていたのは想像に難くない。それだけに今回のドロー決着には非難轟々。ありとあらゆるところから、デービスと審判にバッシングが飛び交う中、“御大”もシビアな意見を投じた。試合後に自身のXを更新したWBCのマウリシオ・スライマン会長は、「ニューヨークでひどい不正があった。ボクシング界はいまだ管轄区域によっては消極的だが、いい加減にリプレイ判定を入れるべきだ」と主張。スポーツ界で導入が進んでいるビデオ判定の取り入れを推奨した。

 また、米ボクシング専門サイト『Uncrowned』は「不正だ」と強調。「おそらくデービスと彼の陣営以外、誰も満足できない形で試合は終わった」と試合を総括した上で、審判の判断を糾弾している。

再戦の可能性も浮上

「審判がローチのジャブの後にデービスが膝をつき、事実上自らタイムアウトを取ることを許可したのは明らかに不可解だった。そして試合の結末を変える決定的瞬間だった。理由が何であれ、ボクシングのルールでは選手が勝手にタイムアウトを取ることは認められていないため、デービスの行動は正式にダウンとなるべきだった。審判の奇妙にして、最悪の決断と、キャリアで最高の利益を手に入れるはずだったローチを窮地に追い込んだ最終的な試合結果は、ボクシング界に激しい怒りの波を引き起こしている」

 なお、猛烈なバッシングを受けたデービスは、試合から1日が経過してから自身のXで「もちろん、あんなことするべきじゃなかった。

でも、俺は髪のグリスが目にしみたんだ」と再強調。

 その上で「あのくだらない膝つきのせいで、俺は試合を奪われ、引き分けにされた。だけどさ、あの試合で一番多くのパンチを当てていたのは俺だ。俺が膝をついた時でさえ、あいつはパンチを打たなかった」と断言。引き分けへの不満と、自身が勝者にふさわしいとする持論を語った。

 再戦に向けた動きも出ているという一戦。デービス贔屓と見られてもおかしくないジャッジの余波はしばらく続きそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

編集部おすすめ