ロマンスドラマやサスペンスドラマが安定的な人気を集める一方で、近年超ホットなのが、不倫、復讐など刺激的な要素を詰め合わせた愛憎渦巻くドロドロ系のドラマだ。3シーズン全てが大ヒットを記録し、韓国中が熱狂した『ペントハウス』シリーズをはじめ、2020年から2021年は数々のドロドロ系ドラマが誕生している。
■単なる“不倫ドラマ”に収まりきらない名作
ドロドロ系に苦手意識がある人にもおすすめしたいのが『夫婦の世界』だ。2019年シンドロームを起こした『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』を超え、非地上波史上歴代最高視聴率を叩き出した2020年の超メガヒット作。番組掲示板に270万件もの書き込みが寄せられた事からも、本国でのレベチな話題っぷりがうかがえる。イギリスの大ヒットドラマ『女医フォスター 夫の情事、私の決断』のリメイク作である本作は、イギリスBBCからも「本質を貫いた脚本、緻密な演出で完成度の高いリメイク作」と高い評価を受けた。スピード感あふれる痛快なストーリー展開、洗練された演出と臨場感溢れるOST、俳優陣の熱演がもたらした感動は、まさに『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』以来の衝撃だった。
本作は富と名誉全てを手に入れ、愛する夫と息子に囲まれ順風満帆な日々を送る女医チ・ソヌ(キム・ヒエ)が、夫イ・テオ(パク・ヘジュン)のマフラーに1本の長い髪を発見することから始まる壮絶な妻の復讐劇だ。夫のことを疑いもしなかったソヌだが、一度疑い始めたらキリがない。自分が信じていた世界が偽りであることを悟り、狂気と憎悪、そして悲しみで理性を失っていくー。
本作のすごみは、序盤は徐々に明らかになる真実にサスペンスドラマのようなスリル感を味わえる一方で、後半はさまざまな夫婦やカップルを通じて、夫婦が抱える情や執着心といった複雑な感情をリアルに描き出し、「夫婦の概念」について絶えず問いかけた点だ。「国民の不倫男」と呼ばれ、世の妻たちの敵となったパク・ヘジュン演じるテオのクズっぷりとダメ男っぷりに心底呆れつつも、ソヌやヨ・ダギョン(ハン・ソヒ)をはじめ、登場する全ての女性たちが、夫の裏切りに傷つき、もがきながらも、自らの生き方や幸せを模索し、立ち上がっていく姿には思わず共感し、涙があふれてしまう。
■深い人間ドラマが織り込まれた良作
ある殺人事件から夫婦の葛藤を描くという興味深いテーマで、“第二の『夫婦の世界』”と放送前から話題を集めていたのが『優雅な友達』。過去と現在、二つの事件を通して、仲良し5人組の驚がくの真実が明らかになっていくミステリーメロドラマだ。
本作は、マンションの一室で若い男が遺体で発見されるというショッキングな幕開けだ。容疑者となったのは、第一発見者であるアン・グンチョル(ユ・ジュンサン)。大企業で本部長を務め、家庭的で温厚な彼だが、殺人事件の容疑者となるのは実はこれが初めてではなかった。20年前、大学の演劇サークルで教授が校内で亡くなる事件が発生し容疑者となった過去があったのだ。彼と大学演劇サークルの仲間たちチョン・ジェフン(ぺ・スビン)、チョ・ヒョヌ(キム・ソンオ)、パク・チュンボク(チョン・ソギョン)、チョン・マンシク(キム・ウォネ)ら5人が抱える秘密と共に、過去と現在の二つの事件の真実が徐々に明らかになっていく――。
本作の最大の魅力は、男性の友情や絆を描いた珍しい作品であること。男性目線から見た「夫婦」、「仕事」、「人生」というテーマが斬新で、「ドロドロ系」はお腹いっぱい! という人や男性にもぜひおすすめしたい一作だ。「犯人は誰なのか」というミステリー要素に最後の瞬間までグッと惹(ひ)きつけられる一方で、人生の中盤を生きる男たちが抱えるそれぞれの問題や葛藤に、涙があふれてしまう場面も。
■結婚生活を顧みずにはいられない一作
待望のシーズン3が2月から韓国で放送開始となることが決定している『結婚作詞 離婚作曲』。「ええええ!?」と思わず大声で叫んでしまうほど衝撃のシーズン2ラストから、「首を長くして待っていた!」という視聴者も多いのではないだろうか。韓国の放送局TV朝鮮のドラマ歴代最高視聴率を叩き出し出したシーズン1に続き、シーズン2もカオスすぎる衝撃的展開にシーズン1を超える高視聴率を記録した大ヒット作だ。周りの友人たち何人かに本作を勧めてみたが、イライラしながらも高確率でハマって、超高速で駆け抜けてくれる、実におすすめしがいのある作品だ。
弁護士の夫と子供のいない仕事&人生のバランスを保った生活を送るラジオDJヘリョン(イ・ガリョン)、病院長の夫と完ぺきな家庭を築き、幸せな日々を過ごしていたラジオPDピヨン(パク・チュミ)、30年間家族の事だけを考えて自分を犠牲にしてきたシウン(チョン・スギョン)と、30代・40代・50代の3組の夫婦が「夫の不倫」から離婚へと発展していく、夫婦の不協和音を描いた作品だ。
「誰が不倫相手なのか」という昼ドラのような衝撃的展開だけに留まらず、実は夫婦関係のほころびを妙にリアルにそして的確に捉えている本作。夫たちがそれぞれ不倫に堕ちていく過程のリアルさにゾッとするのと同時に、妻たちの夫への対応や不倫相手の事情を通して、小さなことがきっかけでバランスを崩し、破綻していく結婚生活の脆さを痛感してしまう。夫たちの言い訳に呆れつつ、随所で出てくる謎の幽霊にじわりながらも、自分の結婚生活を顧みずにはいられない教訓ある一作だ。