広瀬すず×永瀬廉で送る青春ラブストーリー『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系/毎週火曜22時)。3月21日(火)に放送された最終回は、怒涛(どとう)のラストスパート&美しすぎるキスシーンに「破壊力やばすぎ」と反響が集まった。

(文=菜本かな) ※本記事はネタバレを含みます。ご注意ください

■イヤホンを用いた粋な演出

 浅葱空豆(広瀬)が、パリから帰国して3年後。何者でもなかった海野音(永瀬)は、誰もが知っているスターになっていた。テレビをつけたらBPMが出ていて、街中には彼らの看板が飾られている。身近にあるものをじっくり育てていきたい空豆と、どんどん夢に駆け上がっていく音は、まったくちがう道を歩んでいた。

 だからこそ、音が空豆を自分のコンサートに誘ったのは、はっきり言って失敗だったと思う。元々、田舎者意識が強い空豆。そんな彼女が、ステージに立つキラキラした音の姿を見てしまったら…。確実に、気後れしてしまうはずだ。だから、空豆が途中で引き返して本当によかった。

 やっぱり、3年ぶりに再会するなら、二人がまだ何者でもなかった時代の思い出の場所がいい。初めて出会った福岡中央駅。
ワイヤレスイヤホンが入れ違った時にたまたま同じ音楽を聴いている…という運命すぎる出会いを果たした二人は、紆余(うよ)曲折を経て本当に運命の人となった。

 SNSで、「1話では別々のイヤホンで同じ曲をたまたま聴いていたのが最終回じゃ隣に並んで夕暮れに手をつなぎながら同じイヤホンで同じ曲を聴いている結末がエモい」との声が上がっていたように、縁側に戻ってきた二人があの日と同じ曲を聴く…というのは、かなり粋な演出だった。

■こんなにも美しいのは“3年間”があってこそ

 “絶対に恋愛には発展しない二人”だった空豆と音。学生時代をほうふつとさせるようなじゃれ合いを見ながら、「本当に恋が生まれるのか?」と何度不安になったことか。

 でも、さすがは北川悦吏子作品。ゆっくりと、ゆっくりと変わっていく二人を繊細に描き上げた。空豆と音が恋愛関係になるためには、会わない3年間が必要だったのだろう。とっくに恋が始まっていたのに、いつまで経っても気づかないふりをしていた二人。そんな殻を破ったキスシーンには、「想像の100倍以上美しいキスシーンだった」「廉くんのキスシーンの破壊力やばすぎた」「永瀬廉の歴史に残る伝説のキスシーン」など多くの反響が集まった。

 キスをしたあと、二人の距離感が一気に“恋人”になる感じもよかったし、子どものように音に抱きつく空豆も愛おしかった。もっと早く思いが通じ合っていれば…と一瞬思ったけれど、3年を経ての“今”だからこそ、こんなにも美しいのだろう。

■作品を彩った広瀬と永瀬の表現力をひも解く

 音を演じた永瀬廉は、切ない表情がとにかく魅力的だった。
空豆のことが、好きで好きで仕方がない。でも、この気持ちは自分のなかにとどめておきべきだ。そんな葛藤を抱きながら、静かに耐える姿が色気たっぷりで。それなのに、空豆の前では急に子どもっぽい表情を見せるから、見事に“沼”にハマってしまった。

 そして、空豆を演じた広瀬すず。空豆というキャラクターは、表現する難度がかなり高かったと思う。一歩間違えたら、確実にヤバい奴になってしまうから。正直なところ、噴水で顔をジャブジャブ洗っている姿を見た時は、「このヒロインについていけるかな…」と不安にもなった。

 その不安を払拭してくれたのが、広瀬のアンニュイな表情だ。空豆はたしかに野生児だけど、伏せた目をしたり、寂しそうに笑ったり。時折、見違えたように女性らしくなる瞬間がある。そのたびに、「音くん、きっとドキッとしているんだろうな」と思った。
広瀬が生み出したギャップが、北川が紡ぐ物語に説得力を与えたといっても過言ではない。

 どこか陰を持つ広瀬と永瀬が合わさると、とんでもない光が生まれる。そこに、ラブストーリーの神様・北川悦吏子の魔法がかけられた『夕暮れに、手をつなぐ』は最強のドラマだった。

 いつか、輝いていた青春の日々を「あのころはよかったな」なんて懐古しそうになったら、「これからもっといいことがあるんだよ。楽しいことがあるんだよ」と言っていた雪平響子(夏木マリ)の言葉を思い出すだろう。

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