印象的な歌声を持つ佐藤真冬と、高校生離れしたギターの腕前を持つ上ノ山立夏の出会いから始まる、ロックバンド「ギヴン」のメンバーを中心とする青春模様を描いた『ギヴン』。原作者キヅナツキにより、「シェリプラス」にて連載がスタートし、“ノイタミナ”初となるBLコミックのアニメ化作品として、2019年にテレビアニメが放送開始。
■切ない別れと、紆余曲折を経て叶った恋
まずは『映画 ギヴン』(2020年)終盤のシーン。カウントダウンフェス予選の終了後、秋彦は雨月に別れを告げる。雨月は、遠ざかってゆく秋彦に思わず振り返るが、涙をこぼしながら「ばいばい、秋彦」とだけ静かに呟くのだった。そして月日は流れ、前を向き歩み始めた秋彦は、春樹に「俺が!生き方を変えたのは!お前に見合う男になりたかったからだ!」「好きです。俺と付き合ってください」と自身の想いを伝える。春樹はその言葉に涙を流しながら秋彦を受け入れる。数多くの紆余曲折を経て、ようやく2人の想いが通じ合った瞬間だ。
そんな“大人組”たちについて、森プロデューサーは「秋彦の未熟な部分が露わになっていっても、春樹がそれすらも受け入れて抱き留める姿は、作中屈指の名シーンです」と語る。そして雨月についても、「雨月は重要なポジションを担っており、真冬や秋彦の成長にも寄与していきます。特に音楽と恋の狭間で悩む真冬に対しては、その苦労への理解者としても描かれるので、とても重要な存在なんです」と魅力を明かす。
■幼馴染2人の関係性が、一気に動き出す
続いては、『映画 ギヴン 柊mix 』(2024年)におけるシーン。幼馴染であり、ロックバンド「syh〈シー〉」として共に活動する柊と玄純。「syh」の一時的なサポートギターとして加入している立夏との行動も増え、その関わり方が原因で、また真冬に嫌われるかもしれないと落ち込む柊。しかし玄純は「本当にかやの外にいるのって、俺だよな」と思いがけない言葉を放つ。そんな玄純の様子に戸惑いを見せる柊は「っ俺はッ! お前が好きなんだけど!?」と思わず告白。
このシーンは、物語に大きな変化をもたらすシーンだが、作品を手がけた橋本能理子監督も「まさに2人の関係性が一気に動くところでもあり、いよいよ焦点が柊と玄純に合ってくる本当に大事な場面です」と力強く語る。また「原作の印象と近いロケーションを探すことから始まり、コントロールが非常に難しい作画が必要だったりなど、手間をかけた分とても思い入れのあるシーンです」と制作秘話を明かす。このシーンを経て、柊は自身の心の中にある本当の気持ちを理解し、玄純との関係性も大きく動き出していく――。
■玄純の確固たる意志
振り返り特集の最後は『映画 ギヴン 柊mix』(2024年)の終盤、立夏と玄純が「syh」のバンド練習休憩時間に買い出しに出掛けるシーン。
寡黙な中に強い意志を持った、玄純というキャラクターの本質がはっきりと映し出された名シーンだが、橋本監督も「周りが少し違和感を感じるくらいの感情を柊1人に向けられるところが、玄純という人間の“核”に当たる部分だと思います」と、その魅力を語る。そして森プロデューサーも「互いに欠かすことのできないピースとして2人が結ばれることで、決してブレることのない、強固な関係性になっていくのだと思います」と2人ならではの関係性を語っている。
『映画 ギヴン 海へ』は9月20日(金)より公開。