新鮮で斬新な要素と驚くべき完成度を誇り、さらなる名作が続々誕生した2021年。『イカゲーム』など世界的ヒットを記録したNetflixオリジナル作品をはじめ、本国でメガヒットを記録した『ペントハウス』シリーズ、また『愛の不時着』に続き新たな韓国ドラマファンを獲得した『ヴィンチェンツォ』など、2021年のドラマラインナップは特に華やかだった。

本記事ではそんな中でも、韓ドラオタクの筆者が選びに選び抜いた2021年のベストドラマ5作品を厳選してご紹介したい。(文=Nana)

■『怪物(原題)』

 2021年の最高傑作は? と聞かれたら、間違いなく真っ先に本作を挙げる。第57回百想芸術大賞でテレビ部門のドラマ作品賞をはじめ、脚本賞、男性最優秀演技賞と三冠を達成し、ドラママニアたちからも「アナザーレベルの名作」と高評価を受けたレベチな名作『怪物』だ。

 本作はある田舎町を舞台に、連続殺人事件の謎を追う心理スリラー劇である。ミステリードラマの楽しみと緊張感をラストまで失わなかった緻密な脚本と、予想を覆す逆転劇は、サスペンスの名作『秘密の森』に匹敵する完成度を誇っていると言っても過言ではない。

 シン・ハギュン、ヨ・ジングをはじめとする演技派たちの“怪物演技”合戦には、感嘆のため息がもれてしまう。画面越しに伝わる緊張感が尋常ではなく、1話見るたびにどっと疲れてしまうほどだ。

 そして本作の最大の魅力は、単なる“犯人探し”に留まらず、人間の根底にある欲望と心理、恐ろしさに迫りながら、人間の様々な二面性を引き出したこと。本作が伝えるメッセージは、スリラーというジャンルを超え、最後には大きな感動を与えてくれるはずだ。地味で陰気な雰囲気は好き嫌いが分かれるだろうが、“義理と人情”があふれる、実に韓国ドラマらしい一作だった。

■『ペントハウス』

 巧みな脚本と“怪物演技”でドラママニアたちを熱狂させたのが『怪物』ならば、ジェットコースターのような大胆なストーリー展開で大衆を虜(とりこ)にしたのが『ペントハウス』シリーズだろう。瞬間最高視聴率31.1%(ニールセン・コリア調べ)という驚異の数字を記録し、2020年~2021年にかけて社会現象を巻き起こした超メガヒットドラマだ。


 本作は、韓国きっての高級住宅地であり、韓国きっての教育水準を誇る、ソウル・江南(カンナム)エリアにそびえる、100階建てのタワーマンション“ヘラパレス”を舞台に繰り広げられる、欲望渦巻く愛憎サスペンス。

 殺人、不倫、出生の秘密、校内暴力など刺激的な要素が詰め込まれ、反転に次ぐ反転、裏切りに次ぐ裏切りに「そんなことあるかよ」と言いながらも、見るのを止められない凄まじい中毒性だ(笑)。 単なる愛憎劇ではなく、教育戦争や不動産をめぐる闘いも描かれるため、ロマンスドラマに飽きてきた…という人はもちろん、男性も楽しめるのではないかと思う。バケモノ級の演技力を誇る俳優陣による狂いに狂った演技合戦は必見だ。「21世紀最高のマクチャンドラマ(非現実的な出来事が次々と起き、展開に行き詰まったようなドラマ)」とうたわれたドロドロ劇は、1話見始めたらきっと虜になってしまうはずだ。

■『ナビレラ-それでも蝶は舞う-』

 企画意図を見た時から、本作が「2021年最高のドラマになるのではないか」と考えていた。なぜなら、『まぶしくて -私たちの輝く時間-』や『ディア・マイ・フレンズ』など“老人と若者”の交流を描いた作品には名作が多い上に、原作となっているのが、星満点と評点9.9点を記録し、“レジェンド人生ウェブ漫画”、“今世紀最高の名作”という高い評価を得ているウェブ漫画だったからだ。

 本作は、生計のためこれまで心の奥底に眠らせていたバレエという夢に向かって走り始めた70歳のシム・ドクチュル(パク・イナン)と、夢の前でさまよう23歳のバレリーノのイ・チェロク(ソン・ガン)の成長ドラマだ。

 本作が大きな響きを与えるのは、私たちが人生の中で成し遂げることができなかった、もしくは胸に秘めてきた夢を思い出させ、夢への熱情の前に年齢は数字に過ぎないことを教えてくれたからだ。ドクチュルとチェロクのほほ笑ましい師弟ケミストリーは、笑いと深い感動を与え、挑戦にためらっていた多くの人々の背中をそっと押してくれたことだろう。本作は、困難な時代に慰めと希望を与え、私たちを包み込む春のようなドラマだった。

■『五月の青春』

 今年放送されたロマンス作品の中で、一際光っていたのが本作。
視聴率は決して高くはなかったが、日韓のドラママニアたちから、「2021年最高のロマンスドラマ」との声も挙がっている必見の作品だ。

 本作は、1980年5月に韓国南部の光州で実際に起きた光州民主化運動の時代を背景に、運命のように惹(ひ)かれ合ったファン・ヒテとキム・ミョンヒの愛の物語を中心に、光州で生きる若者たちの切なくも美しい愛と青春を描いている。

 本作の魅力は、他のロマンスドラマとは一線を画す情緒に満ちあふれた雰囲気だ。その時代の思い出を召喚するような80年代のレトロな感性に序盤から心を奪われる。人々の悲鳴と銃声だけの光州。激動の時代の中、懸命に生きた若者たちの美しくも切ない愛に胸が締め付けられ、後半は狂ったように泣き、しばらく放心状態になってしまった。

 まさに今飛ぶ鳥を落とす勢いでスターの階段を駆け上っている若手俳優イ・ドヒョンと、新人とは思えない卓越した演技力を披露しているホットな女優コ・ミンシの甘く切ないラブケミストリーは必見だ。ロマンスドラマとしての魅力と熱いメッセージが融合した2021年の名作だ。

■『賢い医師生活』シーズン2

 2021年、最も愛された作品で本作を超えるものはないだろう。最もロスになった人を爆誕させた作品でもあるのではないだろうか。筆者の元にも「ロスから抜け出せない」と友人の医師から連絡があったほどだ。

 本作は、誰かが生まれ、誰かが人生を終えていく、人生の縮図と呼ばれる病院で、平凡のようで特別な毎日を過ごす人たちと、1999年度に医予科に入学した20年来の親友たちの日常を描いた作品だ。
本作は従来のような派手なオペや病院内の権力闘争が登場する“医療ドラマ”ではない。軽やかでありながらずっしりと心を満たしてくれる、人の人生の喜怒哀楽が詰まった“人生の物語”である。

 何よりドラマ全体に漂う人間味が心地いい。代わりに当たり前のように駐車してくれたり、誰かが倒れれば順番にのぞきにきてくれたり、話をしていなくても通じ合える仲良し5人組“99ズ”の愛おしい日常を見ていると、まるで私たちがあの輪の中にいるような感覚になる。だから寂しくて、また友人5人に会いたくてシーズン1から流し始めるのだ。一気見したくなるような中毒性あるドラマもたくさんあるが、1話1話かみ締めて大切に見たいドラマはこの作品くらいではないだろうか。

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