3月28日の放送でいよいよ最終回を迎えるフジテレビ月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』。リアルタイムの視聴率が好調のほか、見逃し配信の再生数が3000万回を超えるなど、大きな反響を呼んでいるが、主人公・久能整を演じた菅田将暉も「これまでやらせていただいたドラマとは大きく違う」と特別な作品に位置づけられていることを強調する。

「やってよかったな」としみじみとつぶやいた菅田が、作品の魅力や、非常に厳しい状況と認識しているというテレビドラマへの熱い思いを語った。

【写真】テレビドラマへの熱い思いを語った菅田将暉 撮り下ろし写真(10枚)

■現代ドラマを作る上で、すごく大事な作品になった

 田村由美のミステリー漫画を実写ドラマ化した『ミステリと言う勿れ』。放送がスタートすると、前述したような具体的な数字はもちろん、SNSでの投稿内容などでも、かなり大きな反響があったことがうかがえるが、主演を務める菅田自身はこの状況をどう捉えているのだろうか――。

 「もちろん賛否両論ありますが、いろいろな反響が届いています。僕もこれまでさまざまなドラマに出演していますが、この作品がほかのドラマと大きく違うのが、エンターテインメントとしての感想が『感動した』とか『笑った』『泣けた』という単一的なものではなく、結構議論がいろいろなところで勃発している感じを強く受けるんです。その意味では、改善点も見えてきましたし、現代ドラマを作るという上で、すごく大事な作品になりました。やって良かったなと思っています」。

 菅田の言葉通り、オンエア後には「考えさせられた」という言葉と共に、いろいろな意見がSNS上で飛び交う。ここまで反響が大きい理由について、菅田は端的に答える。

 「僕らが原作通りのメッセージをしっかりと届けるというのが前提ですが、こうして反響があるのは、原作というか、田村先生の思考の力ですよね。題材的にも議論が熱を帯びるのも想像はできましたし、僕の周囲の人も自分事として話してくれるのを見ると、やっぱりちゃんと届けられたのかなとホッとする部分はあります」。

■テレビドラマへの熱い思い「勝手な責任感はあります」

 菅田は以前からテレビドラマというメディアに対しての思いを語ることがあったが、本作に参加し、改めてテレビドラマというものへの熱い思いが湧いてきたようだ。


 「いま地上波のテレビドラマは、厳しいと言われていますよね。正直僕らより若い、一人暮らしの子の家にはテレビがないことも多い。結構危機的状況なのかなとも思いますが、こうして見逃し配信として、パソコンやスマホで観る人も多い。その是非は分かりませんが、少なくともいろいろな形で作品を観てくださるというのは、僕らにとっては大きなことだと思うんです」。

 しっかりとしたものを作れば、その思いは視聴者に届く――。だからこそ、厳しい状況の中でも戦い続けることの大切さも理解している。

 「やっぱり頑張ってドラマを盛り上げていきたいという勝手な責任感はあります。正直、人手を含めて環境面で厳しい部分はあります。でも、限られた中で、しっかりと面白いものを作りたいという思いは強いです」。

 しかし一方で、そうした厳しい環境を逆手にとって楽しむということも、菅田の中にはあるようだ。

 「僕らはテレビドラマで育った世代の最後なのかもしれませんが、独特のスピード感やリアルタイム感って、良くも悪くも作り込み過ぎない、その人の本質が出ると思うんです。本当に最終回の撮影が、オンエアの日の朝に終わったり(笑)。
もう顔がむくんでいようが、歯が黄色かろうが、出さないと間に合わないみたいな…。もちろん映画などのじっくりと撮るメディアも素晴らしいとは思うのですが、テレビドラマのギリギリ感って、ごまかせない何かが映る。そういう場所って僕は好きだし、テレビドラマならではの表現があるような気がします」。

■整というキャラクターは憑依できる人物ではない

 久能整という役は、原作の中で、独特の空気感を持っている。エンターテインメントとして実写化する際、菅田は整の言葉を発するさじ加減をどこに持っていくかに注力したと語っていたが、そのこだわりにも反響があった。

 「僕がこだわった部分を分かってくださる意見があったのはありがたかったですね。このドラマは深い思考を巡らせることができるドラマであり、真面目に向き合っている視聴者ほど、観終わったあと疲れると思うんです。だからこそ、田村先生のメッセージをどう表現すれば伝わるのか…という部分はこだわりましたし、こだわって良かったと思うんです。あとは業界内視聴率が非常に良いようで、先輩をはじめ同業者の方から、たくさんご意見を頂けるんです。その意味でも戦って良かったなと思いました」。

 もう一つ、整を演じていて感じたことが、憑依できるキャラクターではなかったということ。

 「演じていて整くんの思考と近いなと感じることはありました。
でも今回、ほとんどアドリブはなかったんです。シーンによっては『自由にしゃべって』という場面もあったのですが、いつもだったらペラペラ口から適当な言葉が出てくるのに、整くんでいるとなかなか出てこないんです。とても憑依できるようなキャラクターではなかったですね」。

 最終エピソードでは、物語序盤を盛り上げた永山瑛太演じる犬堂我路が再度登場し、物語に深みを与える。

 「我路くんとライカ(門脇麦)というのは、物語の中では特別な存在。僕自身が素直にひかれる俳優さんに演じていただけたというのは本当に良かった。劇中の整くんが、我路くんに対して『警察には黙っておくから、うちにおいでよ』というセリフがありましたが、いまの時代一歩間違えたら危険な発言だと思うのですが、変な反響がなかった。それも瑛太さんの演じた我路くんが受け入れられている証拠だと思うんです。“なんか目が離せない”の“なんか”を作るのが役者の仕事だと思うのですが、後輩ながら瑛太さんのお芝居はさすがだなと感じました」。

 いよいよ最終局面に突入した『ミステリと言う勿れ』。22年前に羽喰玄斗が起こした連続婦女暴行殺人事件が再度クローズアップされるなど、緊張感ある展開が続く中、どんな結末が待ち受けているのか――菅田がこん身の思いを込めて演じた整の動向に注目だ。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 ドラマ『ミステリと言う勿れ』最終回はフジテレビ系にて3月28日21時より15分拡大で放送。

編集部おすすめ