2017年に女優デビューして以来、作家性の強い作品で高い演技力を披露し、女優としてキャリアを積んできた南沙良。最新作映画『女子高生に殺されたい』でも、多面性を持つ女子高生という難役に挑んだ。

2021年にはドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)で民放の連続ドラマ初レギュラーを務め、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)でも源頼朝と北条政子の娘・大姫として出演するなど、知名度も大きく上がっているが「まだまだ自信は持てない」と発言する。その真意とはどこにあるのだろうか――。

【写真】南沙良、撮り下ろしフォト

これまでのやり方とは違うアプローチで挑んだ難役

 『帝一の國』や『ライチ☆光クラブ』などセンセーショナルな作品を世に送り出している古屋兎丸のコミックを、『アルプススタンドのはしの方』を手掛けた城定秀夫監督が大胆にアレンジした『女子高生に殺されたい』。南は“女子高生に殺されたい”という欲望を抱いている高校教師・東山春人(田中圭)の生徒の一人、佐々木真帆を演じている。

 作品に関わる前から原作を読んでいたという南。オファーがあったときは「とてもうれしかったと同時に、この役柄をどうやって演じようか」と不安とワクワクが混在したという。いろいろな監督の現場を経験している南だが、基本的には撮影の中で感じる思いを大切するスタンスを重視している。「あまり台本を読んだ段階で、役柄をイメージして固めていくことはないんです」と語る。

 しかし、本作では複雑な役柄だったため「ある程度イメージを作ってから臨んだことが、これまでの作品とは違うアプローチ方法でした」と振り返る。

 真帆という人物を大枠でイメージし、頭の片隅に置いてはいたものの、現場に入ると、いままで通り、その場で感じた思いで芝居をしたという。メガホンを取った城定監督からも、南が提示した芝居に対して、ほとんどNOと言われなかった。

常に満足はしない でも、不安の中にいることが心地良い

 そんな不安も、出来上がった作品を観た際は「とても面白かったし、素晴らしい作品だなと思いました」と感想を述べる。
しかし一方で「自分の芝居に対しては、技術的な面、気持ち的な面を含めて、満足はしていません」とキッパリ。続けて「それはこの作品だからと言うわけではなく、多分ずっと満足はしないと思うんです」と胸の内を明かす。

 これまで南が出演した作品の演技は、高い評価を受け、数々の映画賞で新人賞を受賞した。それでも本人は「満足や達成感を感じることはほとんどないです」とつぶやくと「でも、いつも不安の中にいることが、実は私にとっては心地が良いんですよね」とはにかむ。

 その理由について問うと「元々自分に期待をしていないということもありますが、なにかを探している感覚というのが、決して苦痛ではないというか、意外と楽しい作業なんです。だから、ずっとこのままだと思うし、このままでいいのかなと思うんです」と回答する。

 さらに南は「基本的に自分に自信がないので。もちろん、お仕事に対して、自分にできることは全力で取り組んでいますが、なんか自信満々になる自分の姿が想像できないんですよ」と笑う。

「理想の自分というのも想像ができない」ゆえに“演じる”という仕事に惹かれる

 “演じる”という仕事に惹(ひ)かれる理由を、南は次のように説明する。

 「理想の自分というのも想像ができないんです。だからこそ、お芝居を通して、そして役を通して、まったく自分とは別の人間になれる瞬間がすごく尊く感じるんです。その人を通して違う視点を見つけることできるし、学ぶこともあります。
違う人間になれることはとても楽しいんです」。

 デビューから5年の年月が流れた。「いろいろ経験させていただいていますが、基本的な部分はほとんど変わっていないです。脚本を読んで基本的にセリフは覚えていきますが、相手の役者さんとの空気感で表現できればという思いは、デビューしたときからずっと同じです」と語ると、20歳を迎える2022年も「特になにか意識してやろうということはないですね」とあくまでマイペースを強調する。それでも「車の免許は取りたいですね」とニンマリ。

 いよいよ映画の公開が近づいてきた。「先が読めない物語の展開になっています。いろいろなところからパンチが飛んでくるような感覚の作品なので、ドキドキしながら最後まで楽しんで欲しいです」と映画をアピールしていた。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 映画『女子高生に殺されたい』は、4月1日より全国公開。

編集部おすすめ