葉真中顕のデビュー小説を原作とした『ロストケア』の映画化が決定。俳優の松山ケンイチが主演、女優の長澤まさみがヒロインを務めることが発表された。

2人は初共演となる。

【動画】映画『ロストケア』松山ケンイチ&長澤まさみコメント映像

 本作は、第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕のデビュー小説『ロスト・ケア』を映画化。連続殺人犯と検事が対峙し、なぜ彼が殺人を犯したのかに迫るヒューマンサスペンスだ。

 監督・脚本は、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)、『そして、バトンは渡された』(2021)の前田哲。さらに『砂の器』(2004)、『四月は君の嘘』(2016)などの龍居由佳里が、前田監督と共に脚本を担当した。

 また本作は、前田監督と松山、そしてプロデューサーの有重陽一が長年温めてきた思い入れのある作品。脚本開発時から前田監督と松山は幾度も話し合いを重ねたそうで、有重は「撮影現場でも監督、松山さん、長澤さんの三人で何度も意見を出しあい、非常にクリエイティブな作品作りができたと思います」とコメント。撮影は、劇中の舞台である長野県にて2022年3月より約1ヵ月間行われた。

 早朝の民家で老人と介護士の死体が発見され、捜査線上に浮かんだのは死んだ介護士と同じ訪問介護センターに勤める斯波宗典(松山ケンイチ)。彼は献身的な介護士として介護家族に慕われる心優しい青年だった。そして検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が勤める訪問介護センターで老人の死亡率が異常に高いことを突き止める。この介護センターでいったい何が起きているのか? 大友は真実を明らかにするべく斯波と対峙する。


 「私は救いました」。斯波は、自分がしたことは「殺人」ではなく「救い」だと主張する。斯波の言う「救い」とは一体何なのか。なぜ、心優しい青年が未曽有の連続殺人事件を起こしたのか。斯波の揺るぎない信念に向き合い、真相に迫る時、大友の心も激しく揺さぶられる。

 松山は「この映画は、これから生きていくうえで大事にしなければならないものや、若い人たちに伝えるべきことが沢山詰まっている作品だと思います。他人事ではなく、自分の事として考え悩みながら演じました」と振り返る。そして、「自分が出せる答えを見つけ、監督、スタッフさん、長澤さんと一緒に納得がいく作品が作り上げられたのではないかと思っております」と自信をのぞかせた。

 長澤は「私が演じた『検事』は最初から最後まで正しいとはなにかを、悩み、心が揺れ動く役でした。私自身の迷いや心の揺れと、秀美の感情が良い方向にリンクし、良い演技ができました。この映画の『伝えたいこと』を、多くの皆さんに受け取って頂きたいと思います」と呼びかけた。

 前田監督は「映画は日々変化し一瞬にして天国と地獄をも生み出す『生き物』であることを思い知らされた撮影現場でした」と述懐。
原作者の葉真中は「高齢化が進みケアの問題がより切実になる今、映画『ロストケア』の公開が価値あるものになることを期待します」とメッセージを寄せている。

 映画『ロストケア』は2023年全国公開。

 スタッフコメント全文は以下の通り。

<コメント>

■監督・前田哲

 映画は日々変化し一瞬にして天国と地獄をも生み出す「生き物」であることを思い知らされた撮影現場でした。

 松山ケンイチさんと長澤まさみさんの「魂のバトル」に、ご期待ください。

 二人の表情と言葉に、映画のテーマ全てが込められています。

■プロデューサー・有重陽一

 監督から原作「ロスト・ケア」を映像化したいという提案を持ち掛けられたことがこの作品の始まりです。最初はテーマも重く、ハードルが高いと思ったのですが、監督と話し合いを重ねるなかでエンターテインメント作品に昇華できる可能性を感じ、脚本に龍居由佳里さんを起用し映画化に動きました。それから本作りに数年かけましたが、その苦労が実り撮影を敢行することができました。脚本開発から撮影現場でも監督、松山さん、長澤さんの三人で何度も意見を出しあい、非常にクリエイティブな作品作りができたと思います。そうした過程で斯波と大友という人物が確立し、人間としての斯波や大友を描けたのではないかと思っています。公開を楽しみにお待ちください。


■原作者・葉真中顕

 私自身、この作品の映画化は難しいのではないかと思っていましたが、原作に惚れ込んでくださった前田哲監督と松山ケンイチさんが努力に努力を重ね、実現の運びとなりました。原作者冥利に尽きます。高齢化が進みケアの問題がより切実になる今、映画『ロストケア』の公開が価値あるものになることを期待します。

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