菅田将暉と原田美枝子がダブル主演する映画『百花』に、女優の長澤まさみ、俳優の永瀬正敏が出演することが発表された。長澤は菅田の妻を、永瀬は「事件」と深い関わりを持つ男を演じる。

また、繊細なピアノの音と圧倒的映像美が織りなす特報映像も到着した。

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 本作は、川村元気が2019年に執筆した4作目の同名小説(文春文庫)を映画化した感動作。川村自身が監督・脚本を務め、今作で初の長編監督デビューを果たす。記憶を失っていく母と向き合うことで、母との思い出を蘇らせていく息子・葛西泉を菅田、すべてを忘れていくなか、さまざまな時代の記憶を交錯させていく母・葛西百合子を原田が演じる。

 レコード会社に勤務する葛西泉(菅田)とピアノ教室を営む泉の母・百合子(原田)は、過去のある「事件」をきっかけに、わだかまりを感じながら時を過ごしていた。そんな中、不可解な言動をするようになる百合子。不審に思った泉は百合子を病院に連れていき、そこで認知症だと診断される。その日から、泉は<記憶を失っていく母>と向き合うことになる――。

 百合子の記憶がこぼれ落ちていくスピードは日に日に加速し、大好きだったピアノでさえも、うまく弾けなくなり、泉の妻・香織(長澤)の名前も分からなくなっていった。それでも今までの親子としての時間を取り戻すかのように、泉は献身的に支えていく。

 ある日、百合子の部屋で一冊のノートを見つけてしまう。それは、泉が知らなかった母の「秘密」、そして泉にとって忘れたくても忘れることのできない、「事件」の真相が綴られた日記だった…。


 心の奥底にしまい込んでいた記憶を、徐々に蘇らせていく泉。一方、百合子は失われてゆく記憶の中で、「半分の花火が見たい…」と何度もつぶやくようになる。「半分の花火」とはなにか? なぜ百合子はそこまで「半分の花火」にこだわるのか――。その言葉の「謎」が解けたとき、泉は母の本当の愛を知ることになる―――。

 長澤が演じるのは、泉(菅田)と同じレコード会社で働き、初めての出産を控える泉の妻・葛西香織。『モテキ』『君の名は。』など川村元気が製作した作品に出演経験のある長澤は、「今まで色々な作品をご一緒させていただいてきた中でも、心が温かくて、よく俳優のことをみてくだっている方だと感じていますし、川村監督の冷静さに、凄く信頼しています」と川村監督への熱い気持ちを語るとともに、夫婦役を演じる菅田将暉についても「人の隙間に入り込んでくる感じや、その観察力、かといって威圧感を与える人ではない、この人なら信頼が置けると思いました」とコメント。

 一方、百合子の「秘密」を知り、「事件」と深い関わりを持つ男・浅葉洋平を演じる永瀬は「川村監督は、自分の撮っている画の中にいる人達や物達に、凄く愛情をもっていらっしゃるのを感じましたし、その分、画の作りには厳しい“ぶれない監督”でした。この作品は、原作も監督が書かれていて、『今の時代にどうしてもこの作品をとりたい』という思いが、深く深く染みこんでいる作品だと思います」と語っている。

 本作にはほかに、北村有起哉、岡山天音、河合優実、長塚圭史、板谷由夏、神野三鈴も顔をそろえる。

 解禁された特報映像は、「こんなにきれいなのに、いつか忘れちゃうのかしら」とつぶやく百合子の姿からスタート。
ピアノで「プレリュード」が奏でられる中、美しく儚い花火が泉と百合子の背中越しに映し出される。親子の現在と過去の記憶が交じり合う映像の中に、「野心的であざやか」「凝縮された美しい映画」と、本作へ想いを寄せたポン・ジュノ監督や山田洋次監督の言葉も。最後には、「母が記憶を失うたびに、僕は愛を取り戻していく」と泉(菅田)の切ない気持ちが零れ、感涙を予感させる特報映像となっている。

 映画『百花』は、9月9日全国公開。

※長澤まさみ、永瀬正敏、川村元気監督コメント全文は以下の通り

◆長澤まさみ

 川村監督は芯の根というものがすごくピュアな人だな、と思っています。今まで色々な作品をご一緒させていただいてきた中でも、心が温かくて、よく俳優のことをみてくだっている方だと感じていますし、プロデューサーという立場で培ってきた川村監督の冷静さに、凄く信頼しています。今回は、監督が撮りたいものが撮れればいいね、という話を菅田さんともするくらい、温かい気持ちにさせてくれる監督でした。
 
 共演させていただいた菅田さんは、軟体動物みたいに何にでもなれちゃう凄い人だな、と改めて思いました。人の、隙間に入り込んでくる感じや、その観察力、かといって威圧感を与える人ではないですし。この人なら信頼が置けると思いました。

 本作は、記憶なのか、現実なのか、幻想なのかわからない描写が沢山あるので、そういうところが、どんな映像になってくるのかが楽しみです。きっと映画館で観るべき映画になるんだろうなと思っています。


◆永瀬正敏

 撮影を通して、川村監督は、自分の撮っている画の中にいらっしゃる人達や物達に、凄く愛情をもっていらっしゃるのを感じましたし、その分、画の作りには厳しい“ぶれない監督”でした。1シーン1カットで作っていくというのは、かなりの勇気がある決断だと思うので、現場では、監督やスタッフの皆さん・共演者の皆さんと、一緒にその決断をしっかり受け止めつつ、楽しみたいなと思いながら撮影していました。

 また、共演させていただきました、原田美枝子さんは、デビューする前から、尊敬する俳優さんで、今まではここまで深くがっつり心を通わせる役で、ご一緒したことがなかったので、とっても嬉しかったです。

 この作品は、原作も監督が書かれていて、「今の時代にどうしてもこの作品をとりたい」という思いが、深く深く染みこんでいる作品だと思います。様々な世代の、色んな立場の人が、本作のキャラクターを追って、楽しんで観ていただける作品になっていると思います。

◆川村元気監督

 何本もの映画をともに作ってきて最も信頼している俳優のひとりの長澤まさみさん、そして子供の頃からスクリーンで見てきた憧れの俳優である永瀬正敏さんに、わたくしの初監督作品に是非お力をお借りしたいと、出演をお願いしました。

 長澤まさみさん演じる香織は、泉と百合子の間で、その複雑な母子関係を見つめる役です。目の前で記憶を失っていく義母、失われていく義母にどう接したらいいかわからない夫、そしてみずからはお腹のなかの子どもがまもなく生まれようとしている。この奇妙な親子が気付けていないこと、失われていくものと新たに生まれくるものを、香織を通して描けたらと思いました。香織は、このシリアスな親子の前でもユーモアと愛情をもって生きている人物です。決して近寄りすぎませんが、とはいえしっかり寄り添っている。その人間的な距離感が、長澤まさみの持っている魅力だと思いました。
その人間性、そして愛情のようなものを香織という役に与えてもらえたらと思ったのです。

 永瀬正敏さん演じる浅葉は、母子のとある事件に絡み、百合子の秘密を知る、とても重要な役です。子供の頃、通い詰めていた横浜黄金町の映画館で観た永瀬さんの『私立探偵 濱マイク』シリーズに夢中になりました。情熱的でありつつも、どこかに消えてしまいそうな危うさを、いまだに永瀬さんのお芝居を見ていると感じます。小説『百花』を書いている時から、どこか頭の片隅に永瀬さんの姿がありました。わたくしにとって日本映画の原体験でもある永瀬正敏さんに、お力をお借りできたらと思いました。

 果たしてお二人とも、素晴らしい演技で、複雑な母子の輪郭を見事に浮かび上がらせてくれました。お二人のおかげで映画が何倍も力強くなったと確信しています。

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