町田啓太 “何かを犠牲にした”とは考えない「すべては前に進むために必要なこと」
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町田啓太

 4月には映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』が公開され、7月期にはフジテレビ系ドラマ初主演を果たす『テッパチ!』のスタートが控えるなど、活躍著しい俳優・町田啓太。水谷豊が監督・脚本を務める6月3日公開の映画『太陽とボレロ』では、水谷直々の指名を受け、葛藤を抱えながら交響楽団に所属する青年を演じる。町田に話を聞くと、役者として多大なる影響を受けたという水谷への敬意や、そのポジティブな思考の一端が垣間見えた。

【写真】透き通るような透明感 町田啓太インタビューカット<全7枚>

■ 水谷豊からの出演オファーに歓喜 現場では「演じることを改めて深く追求」

 水谷監督作品第3弾となる本作は、とある地方都市で長年活動を続けるも解散が決まったアマチュア交響楽団の人間模様を洒脱に描いたエンタテインメント作品。脚本・監督・出演の3役を担う水谷を筆頭に、主演の檀れい、町田、石丸幹二、森マリア、田口浩正、藤吉久美子、田中要次、六平直政、河相我聞、原田龍二、檀ふみ、山中崇史、松金よね子、小市慢太郎らが味わい深いハーモニーを奏でる。

 水谷からのオファーを聞いた時の心境を聞くと「いつかご一緒できたらと思っていたので、すごくうれしかったですし、本当に光栄でした。お会いするのが本当に楽しみで」と目を輝かせる町田。「作品を作ることを全員が本当に楽しんでいた」という水谷組の現場では、「演じることを改めて深く追求した」という。「現場では水谷さんが全シーン、演じる前に細かいところまでいろんなアイデアや演出を、時には実演を交えながら出してくれるんです。それが抜群に面白いので、自分でどう咀嚼(そしゃく)して表現するかに挑戦しました。水谷さんは役者のことも細かく見てくださっていて、ちょっとした思いもくみ取って提案してくれるんです」と水谷の気配りに敬意を示す。

 水谷だけでなく、主演の檀らほかの先輩俳優陣からも学びが多かったと明かし、「お芝居になった瞬間はグッと作品の世界観を構築されますが、普段は本当に朗らかでみんな楽しまれていて。現場がすごく和やかなので、僕も自然体でいられて心地よかったです」と感謝する。

■ 小学生以来のトランペット演奏に挑戦 コロナ禍に黙々と練習に励む

 本作で町田が演じたのは、一般企業で働きながら交響楽団でトランペットを演奏する田ノ浦圭介。役作りにおいても、町田には水谷の演出によって気付きがあったという。「圭介は、今の状況にフラストレーションが溜まっているがゆえにちょっとすれたところのあるキャラクターだと思っていたんです。でも、水谷さんの演出でそこに愛嬌(あいきょう)が加えられ、役に膨らみが生まれました。現場でそんな風に肉付けしてもらっていくのを見るたびに毎回感動しましたし、発見の連続でした」。

 そんな圭介に共感する部分を聞くと、「自分で何かやれば状況は変わるかもしれないけれど、どこか他人や環境のせいにする気持ちは僕にだって少なからずあります。そういう気持ちを圭介に投影できればと思っていました。好きなことに一生懸命であればあるほど、現実とのギャップで溜め込むフラストレーション。圭介が、好きなことにだからこそとってしまう行動は、自分に当てはめられるところがたくさんありました」と打ち明ける。

 今作ではトランペットの演奏にも挑戦。コロナ禍で撮影が1年延期になった間も個人で練習に励み、吹き替えなしで演奏シーンを撮影するレベルにもっていった。「実は小学校高学年の頃に2年ほど、音楽の授業の一環でトランペットをやっていました。でも、それ以来なので覚えているのは楽器の持ち方程度。今回は交響楽団の一員のレベルまでもっていかないといけません。音を出すのだけでも大変で、低温も高音もきれいに出すのは本当に難しいんです。ちょっとずつ地道に練習を積み重ねていきました」。

■ “何かを犠牲にした”とは考えない「すべては前に進むために必要なこと」

 劇中、圭介が「好きなことは何かを犠牲にしないといけない」と口にする場面がある。町田自身に、これまで何かを犠牲にしてきたかを聞くと、「それは考え方次第かなと思います」という答えが。「犠牲にすると思ったら、時間や自分の体力、お金、交友関係も、何でもかんでも犠牲になっているような気がして。僕の場合は、それらはすべて犠牲というよりは前に進むために必要なことで、犠牲にした感覚はあんまりないんです」と振り返る。

 町田は「犠牲にしなきゃ何かが生まれないのは、ちょっと寂しいんですよね。何かに情熱を向ける自分への枷(かせ)のような、そんなポジティブな捉え方だったらいいんです。でも犠牲という言葉を使うと、僕はネガティブに思えてしまって…。『何かを犠牲にしないといけない』という考えはもったいないなと感じるんです」と思いを口にする。

 インタビュー中、常に言葉から“ポジティブな思考“が垣間見える町田にそのことを伝えると、「そのほうがいいんじゃないかなと思ってます。この作品での圭介のように、何かを犠牲にしているように見えたとしても、結局は費やしてきた時間や何かを長く続けることはすてきなこと。どういう形でも一つのことを続けることで未来につながることは絶対あると思うんです」と笑顔を見せる。

 これまでの芸能生活での葛藤について聞いても、「いろいろ失敗したり、反省したり、迷ったりすることもありますが、最終的には自分の感覚や心に従って行動しています」と真っ直ぐ答えてくれた町田。その考え方に再び称賛を送ったところ「僕はそんな完璧な人間ではないですよ(笑)」と謙遜し、「漢字が弱くて台本を読むときは振り仮名を振るところから始めたり、怠け者だったり、やらないといけないことがあるのに寝たり…。恥ずかしいところだってたくさんあります」と茶目っ気たっぷりに話し、親近感あふれる一面もさらけ出してくれる。そんな飾らない一面も彼の魅力だ。芯があって素直で真っすぐな性格がベースにある演技で、今後も多くの人々を魅了していくに違いない。(取材・文:高山美穂 写真:小川遼)

 映画『太陽とボレロ』は、6月3日公開。