歌手・俳優の福山雅治が主演を務める「ガリレオ」シリーズの劇場版第3弾『沈黙のパレード』。9年ぶりの新作となる本作は、福山、柴咲コウ、北村一輝のトリオが復活することも大きな話題を集めている。
【写真】チームワークの良さが伝わる! 最高の笑顔を見せる福山雅治&柴咲コウ&北村一輝
■柴咲「湯川先生との再会シーンは緊張」
東野圭吾による累計1500万部突破の人気シリーズの最新作を映画化する本作。不可思議な事件を科学的な検証と推理で見事解決していく天才物理学者・湯川学(福山)が、旧知の警視庁捜査一課の刑事・内海薫(柴咲)、大学時代の同期で内海の先輩刑事・草薙俊平(北村)と共に、ある街で起きた悲しく切ない事件と対峙(たいじ)する姿を描く。
――はじめに、9年ぶりの劇場版で、湯川・薫・草薙という3人が顔をそろえるというお話を聞かれた時のお気持ちを教えてください。
福山:僕は、原作が発表された時に「これは…、そう…、映像化、ですよね」と(笑)。そういうつもりで勝手に気持ちは構えていたので、(映画化されて)よかったなと思っています。そのワクワク感はもちろんあったんですけど、久々にみんなに会える!という思いと、どこか地続きというか当たり前のこととして、また3人で会えると思っていました。ただ、SNS上などで、「あ、3人が見れるんだ!」っていう声があって、その反応がうれしかったですね。こんなに待っててくれたんだなと。
柴咲:一度描かれたシリーズのストーリーやキャラクターというのは、自分の中にそこはかとなく根付いているような感じなんです。完全に捨てきって、離脱しているわけではなくて、呼び戻されるというか…。そして、やると決まった時点で、どこか心の中や頭の片隅で、この9年どうやって生きてたのかな、きっと仕事ではこうだったろうし、アメリカからいつ帰ってきたのかな…と考え始めるんです。
北村:原作でも、湯川だったり、薫だったり、草薙だったり、少しずつ年を重ね、きちんと成長して描かれていることもあり、とても入りやすかったですね。「ガリレオ」の最初の印象はこの2人だから、落ち着くというか安心感もありました。
――それでは、撮影が始まってすぐに3人の空気感は取り戻せた感じでしたでしょうか?
柴咲:私は久しぶりに湯川先生に会うし、久しぶりに福山さんにも会うし、“緊張しちゃったー”って思った(笑)。
福山:柴咲さんは緊張してるふうになかなか見られないでしょ?(笑)。でも久しぶりに薫とファミレスで会うシーンは印象的でしたね。テイクを重ねながら少しずつお互いに手ごたえを感じて、“ばっちりだな。さすが、柴咲コウ、内海薫だな”って僕は思っていたんですけど。柴咲さんが「大丈夫だったかな~、大丈夫だったかな~」ってぶつぶつ言いながら帰って行く、小さな背中が愛おしかったです(笑)。
柴咲・北村:(笑)
柴咲:あのシーンはずっと対面しての撮影だったんですけど、福山さんもいろいろ長セリフがあって大変だろうに、他愛のない話をしてずーっとケアしてくれるんですよ。私はこう(他は見えない様子に)なっているのに、“余裕だな~、さすが湯川先生だな”って思ってました。
福山:いやいやいや…。
――北村さんにとって、お2人との久々のお芝居はいかがでしたか?
北村:(2人とも)緊張感を持たせる感じではないのですよ。自分のペースがそれぞれにある感じで、人にどうこうという感じではないので、すごく入りやすかったですね。僕はこの組自体にとても信頼感を持っていて、すべてにおいて安心した、いい状態で入れました。
福山:北村さんは現場をすごく明るくしてくれるんです。
柴咲:入ってきただけで華やかになるんですよね。今回の作品のファーストショットで、草薙が「よっ!」って会議室に入ってくる、あのままな感じで。
北村:僕、普段軽いんです。
福山:いや、“軽やか”です。
北村:あ、そっちの言葉でお願いします(笑)。
■北村「KOH+の曲は誰よりも感動している。かなり自信があるくらいに聞き込んでいる」
――「ガリレオ」シリーズでは、福山さんと柴咲さんのユニット、KOH+が手掛ける主題歌も欠かせない存在です。今回の「ヒトツボシ」もとても切なくてすてきな曲でした。
柴咲:当然初めて聞く曲なんですけど、どこかノスタルジーというか懐かしさというか、昔を思い出すような気配を感じる不思議な魅力のある曲でした。
北村:もう最高ですよ、KOH+。誰よりも感動している自信があるくらいに聞き込んでます。ささる歌詞もいっぱいあって、劇中に出てくる商店街のみんなのつらいい気持ちがすごく伝わってきて、朝から号泣してますもん。いつでも泣けます。
福山:ありがとうございます。劇場版『容疑者xの献身』の主題歌である「最愛」が今も深くささっている昨今なんですよね?
北村:そうなんです。「最愛」は石神(編集部注:『容疑者xの献身』に登場した堤真一が演じたキャラクター)の気持ちがほんとによく分かってね…。「ヒトツボシ」は、商店街の人たちに会って気持ちが分かりすぎちゃってるから、まだ生々しくて。
福山:歌が旅立っていけばいくほど、リスナーの人生との関わり方がより深くなっていって、リスナー自身の人生の歌になってゆく。歌がひとり歩きするっていうのはそういう状態なので、北村さんと「最愛」の関係は、今そういう状態になっているんでしょうね。
北村:はい、今はもう僕の歌になってます。
柴咲:なんでやねん!(笑)
福山:(笑)。僕の歌になるっていうのは、まさに送り出す側が一番望んでいることで。リスナー側が“これは僕のために歌ってくれているんじゃないか、会ったこともないのになんでこんなに分かるんだろう”っていうのが、楽曲にとって一番幸せな終着駅なんですよね。
■福山「仕事では沈黙はダメ。言葉を尽くすこと」
――今回の作品では、タイトルにもある“沈黙”がキーワードな印象があります。皆さんにとって、“沈黙”という言葉からはどんなイメージが思い浮かびますか?
福山:ん~。時と場合によりますけどね。“沈黙は金”という言葉があるようにしゃべらないことがいい時もあるし…。日常生活でいえば、沈黙が気にならない人、一緒にいてしゃべんなくても平気な人とは気が合うんだなっていう思いはありますかね。翻って仕事ってなると、沈黙はダメで、言葉を尽くしてちゃんと説明しないといけないなって思いますし…(柴咲、大きくうなずく)。今日は取材で1日しゃべってますから、そろそろ沈黙したい気持ちもありますけど(笑)。
柴咲:(笑)。人生一回きりって考えたら、せっかくコミュニケーション手段を持っているのだから、意思疎通を図るためにも相手とちゃんと話してコミュニケーションをとったほうがいいですよね。それがすれ違いを招いたとしても、やっぱり、発言する、意見を言うということで社会が作られていくと思うから、私はやっぱり話す、議論するっていうほうに一票!(笑)。
福山:おっしゃる通りで、サイレント・マジョリティって言葉があるように、“物言わぬ多数派”も存在してますもんね。世間の判断はその“言葉なき民意”っていうものに忖度(そんたく)しておかしくなってしまうこともあるので、発言する、参加するっていうのは社会生活において重要なんだろうなって、ここ最近のニュースを見ていてもそう感じますよね。
――北村さんはいかがですか?
北村:僕はもう“沈黙知らず”と言っても過言じゃないくらい、ずっとしゃべってますから。沈黙というものを多少取り入れたほうがいいのではないかと。
福山:いやいやいや(笑)。軽やかな北村さんのトークで現場が明るくなってますから。
北村:僕が沈黙するのはお腹がすいてる時ですね。急に黙るからすぐに分かると言われますね(笑)。
柴咲:分かりやすい!(笑)
(取材・文:編集部 写真:高野広美)
映画『沈黙のパレード』は公開中。