2020年12月に全世界で配信され、世界70ヵ国以上でTOP10入りし、日本発のコンテンツとして世界的成功を収めたNetflixシリーズ『今際の国のアリス』。待望のシーズン2では、“今際の国”に迷い込んだ人々が命懸けの“げぇむ”に挑むさまが、さらにパワーアップした世界観で展開する。

前作に続きアリス(山崎賢人)と共にサバイバルに身を投じ、今際の国の謎に迫るウサギを演じた土屋太鳳、そしてメガホンを握った佐藤信介監督に話を聞いた。

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■「これが世界に配信されるってことなんだ」 シーズン1の反響に驚き

――前作シーズン1の世界的な反響をどのように受け止めましたか?

佐藤監督:普段はあまりやらないんですけど、ちょっと気になって英題の「Alice in Borderland」で検索してみたら、秒単位で感想がブワーッと上がってくる感じで、だんだん感想だけでなくイラストを描く人も増えてきたりして、かなり楽しませていただきました。

その後、『イカゲーム』が配信された際に、『今際の国のアリス』がまた50ヵ国以上でTOP10入りしたんですよね。その時は北米の人たちがすごく見てくださったようで、それもすごくうれしかったです。

土屋:私もすごくうれしかったです。コロナ禍での配信ということで、なかなか人に会って感想を聞けず寂しさがありましたが、インスタグラムのコメントで初めて接するような言語で寄せられた感想を翻訳して読んで「あぁ、これが世界に配信されるってことなんだ」と実感しました。


その後、わりと早い時期にシーズン2をやるという情報が出て、それに対する反響もうれしかったです。ただ、そういう声は基本的に脳内から排除する…と言うと言葉が悪いですが、あまり捉われないようにしています。(外部からの)情報を入れすぎると、役を演じる上で凝り固まってしまうのかなと思うので。でも、いま監督のお話を聞いてると、もっと見ればよかったかなと思います(笑)。

――監督も普段はあまりしない検索をされたというのは、世界配信ということもあって?

佐藤監督:そうですね。普段、映画を作る場合は日本のお客さんがどう見るだろうか? というのを考えますし、作り終えると一度そこから少し離れたいという思いもあって、あまり見ないようにしてるんですね。


ただ今回は、最初から全世界に見てもらうことを念頭に作っていたので、そこでどんなふうに受け止められたかは知っておきたいなというのはありました。

■土屋太鳳から佐藤信介監督に質問!

土屋:私も監督に質問していいですか?(笑) 海外と日本で、血が出るシーンだったり性的な描写に対する受け止め方が違う部分ってあると思うんですが、シーズン1はそれ(海外の受け止め方)を前提に撮られたんですか?

佐藤監督:あくまでも予想ですけどね。僕だけでなくプロデューサーとも話し合いつつ、プロットや脚本を作っていましたね。それこそ(海外の視聴者は日本人俳優の)顔がわからなくならないか?と考えて、キャラクターにより特徴を付けるようにしたり、早い段階でストーリーに入っていけるようにした方がいいんじゃないか?とか。

土屋:(同じNetflix配信の)『ストレンジャー・シングス』みたいに?

佐藤監督:そうそう。『ストレンジャー・シングス』も事前に見ましたね。
どれだけ早く(ストーリーの)中に入ってもらえるか?と考えて作っていたし、だからこそ余計に海外の反応は気になりましたね。

驚いたのが、(視聴者の気持ちが)キャラクターにすごく入っていること。ストーリーにどう入っていかせるか?というのはすごく検討して作りましたけど、みんな、キャラクターに惚れていってるというのが意外でした。サスペンスなので、ストーリー性とそこに翻弄されるキャラクターたち…みたいな感じで考えていたんですが、“キャラクター愛”みたいなものがすごく強くて、そこも良かったんじゃないかと感じました。

――土屋さんにとって今回、新たなチャレンジとなったのはどういう部分でしょうか?

土屋:心の部分では、シーズン1でお父さんを亡くしてしまった悲しさや社会への失望感を出していましたが、アリスやクイナ(朝比奈彩)といった周りの人たちに心を動かされて、孤独な心がどんどん柔らかくなっていく――そうやって柔らかくなったからこそ出てくる“弱さ”や“迷い”という心情の変化があって、(それが表れる)アリスとの2人のシーンは重要だなと思っていました。

身体的な部分では今回、山本千尋さんという身体を動かすことができる素晴らしい女優さんが相手役でしたが、アクションって“受け”が大事なんです。
私も別の作品で経験したことがあるんですが、アクションは受ける側がうまいと強く見えるんです。今回、その役目を担わさせていただいてメチャクチャ責任重大で、シーズン1とは違う緊張感の中で過ごさせていただきました。

■キューマ役・山下智久の衝撃! 「迫力、オーラに刺激をもらいました」(土屋)

――佐藤監督はこれまでも多くの漫画原作の映像化を手がけてきました。本作は特に個性的なキャラクターが多いですが、キャスティングにおいて、監督が大切にされていることを教えてください。

佐藤:いろいろな要素があり、ひとつのセオリーでやっているわけではないです。僕自身、普段はわりと論理的なほうだと思うんですが、この作品に関しては結果的に“出会い”を大事にしている部分があると思います。
あんまりミラクルなことは信じないタイプなんですけど(笑)。原作がありつつも、それを超えて「ぜひやってみたい」と思わせてもらえたというか、“ときめき”を大事にしている自分がいたような気がします。

――今回新キャストのひとりに、クラブの“キング”ことキューマを演じた山下智久さんがいます。全編にわたって驚くべき姿で出演されていますが…。

土屋:衝撃的ですよね(笑)。

――キューマを目にしたウサギの戸惑った表情も印象的でした。


土屋:どう受け止めたらいいのか…という感じでしたね(笑)。

――実際、あのシーンを含め、共演されていかがでしたか?

土屋:あのシーンと同じ気持ちでした(笑)。原作を読んで、この役をやるとしたら誰なんだろう? どういう方が引き受けてくださるんだろう? とワクワクしていて、山下さんのお名前をお聞きしたときは意外な思いでした。同時に、私自身、山下さんが出られたドラマや映画、エンタテインメントでたくさん楽しませていただいてきた世代なので、生きるか死ぬかの究極の世界でご一緒できるのがとてもうれしいなと思いました。

原作のイメージからすごく「作ってくる」感じなのかな? と思っていたら、誰よりもナチュラルで、声の大きさもナチュラルで…。その迫力、オーラに現場でも刺激をもらいつつ、映像になったのを見て改めて「すごいなぁ…」と思いました。

■キューマの演出プランを一新「山下さんのカリスマ性を借りたかった」(佐藤監督)

――監督は山下さんにはどのような演出を?

佐藤監督:原作でも衝撃的な描かれ方をされている部分であり、この世界、さまざまな「映像化不可能」ってあると思うんですけど、これも間違いなくひとつの「映像化不可能」ですよね(笑)。

ただ、アレンジし過ぎて手ぬるく見えるのはイヤだなとは思っていて、わりと早い段階で「こういうふうに撮ろう」というのは決めていました。

では、そこに誰が来るのか? 山下さんの名前が挙がった時は、さっきのキャスティングの話の“ときめき”を感じたというか(笑)。「本当にOKとおっしゃっているんですよね?」「やりたいと言ってます」ということで、まさに出会いを感じましたね。

僕の演出プランもあったんですけど、とにかく山下さんにお会いして、「新たなプランを作ろう」という思いが湧いてきて、こちらの思いに無理に押し付けるのではなく、お話をしながら「こういうキューマ像になるといいんじゃないかな?」と作っていきました。

土屋:現場でも感じました! たぶん、(2人がそれぞれ事前に持っていたプランは)違ったのかもしれませんが、現場で監督が山下さんのつくるキューマに寄り添っていたのを感じたんですよね。すごくビックリしました。いろいろ演出したくなるキャラクターだと思うのですが、それをあえてしないという。

佐藤:カリスマということで、脚本の段階で山下さんに当てて書き直したりして、イメージを整えていた部分はありました。ある程度、動きに関しては「こんなふうに撮りたい」「こう動いてほしい」とビデオコンテを作って固めていたんですが、一方で気持ちを自由にしてやってほしかったので、キャラクターの部分に関しては山下さんのカリスマ性を借りたいなと。

また、山下さんになったことで、キューマが過去に活躍していたバンド時代をちゃんと描きたくなり、フルでバンドの曲と歌も作りました。他のメンバーたちにも長い時間をかけて練習してもらいました。山下さんの存在に影響を受けた部分もすごく多いです。

■土屋太鳳&佐藤信介監督が語る『今際の国のアリス』ならではの面白さ

――本作のような生死を懸けたゲームを描く作品は日本でも以前から人気がありますが、近年、『イカゲーム』が社会現象を巻き起こすなど世界的な人気を得ています。こうした作品の魅力や傾向について、どのように感じていますか? その中でも『今際の国のアリス』ならでは面白さはどこにあるのでしょうか?

佐藤:この「今際の国のアリス」の映像化を企画されたのはもう何年も前ですが、その時、僕が感じたのは、日本では既にいろんなサバイバルゲーム系の作品があって、そろそろ一服したいというムードでした。

一方で、海外に目を向けるとちょっと空白期間があって、いまなら日本から改めて世界に向けて、現代的なサバイバルゲームものを出しても面白いかもしれないなと思いました。

特に東京の街を舞台にしているというのがこの『アリス』は良いんじゃないかなと思いました。当時はコロナ禍が起こる前で、東京にものすごい数の観光客がひしめいていて、しかも数年後に五輪が開催される予定で、そのタイミングで配信ということだったので、あの東京のど真ん中が空っぽになって、そこでサバイバルゲームをするというのに神秘性を感じました。なので、コロナで東京から人気がなくなった時は、この作品で描いたことが、現実化されたように思いました。

コロナ禍でいろんな部分が狂いましたが、その根幹の恐怖は届いたと思います。

――土屋さんはこういうタイプの作品はお好きですか?

土屋:好き…でもないです(苦笑)。怖いじゃないですか。音とかに翻弄されるんですよね。「ブーン…」と聞こえてくると怖くなっちゃって…。でも「アリス」でちょっと強くなったかも(笑)。やはり、サバイバルだからこそ感じられるドキドキ感ってあると思います。

その中で、「アリス」ならではの魅力がどこにあるのか? 普段、私たちが生きている世界と“今際の国”って実はそんなに変わらないんじゃないかって思うんです。

それぞれ環境が変わり、学校や会社で関係性を作っていくのを繰り返すのが人生だと思うんですけど、それが今際の世界とリンクするというか、共感を呼ぶところが魅力なんじゃないかと思います。

(取材・文:黒豆直樹 写真:小川遼)

 Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2は配信中。