「村」という閉ざされた世界に蔓延(はびこ)る現代社会の闇を投影した映画『ヴィレッジ』。今回は、本作で人とコミュニケーションを取るのが苦手で内気な性格の中井恵一を演じた、ジャニーズJr.内ユニットHiHi Jetsのメンバー・作間龍斗にインタビュー。
【写真】作間龍斗、自身の撮影後は横浜流星の演技を見学 『ヴィレッジ』メイキング写真
■「精神的にくらって、体が動かなくなっちゃって…」
ーー今回は、藤井監督や河村プロデューサーからラブコールを受けて出演が決まったそうですね。
作間:(藤井監督から)直接的なお話はお伺いしていないのですが、河村プロデューサーは僕が出演した映画『ひらいて』を見て、気になってくださったようで。構想段階でお声がけいただけました。
ーー藤井監督の作品に対する印象を教えてください。
作間:『新聞記者』と『ヤクザと家族 The Family』を藤井監督の作品だと知らずに見ていたことがあって、とにかく映像と音楽がすごく洗練されていて、その裏に社会をリアルに表したような映像を撮られているなという印象がありました。
作間:それから俳優さん同士の“演技の暴力”を見ることができる。もちろん内容にもよりますが、僕、本当にすごいものを見ると笑っちゃうんです。だから覚えていて、『新聞記者』も『ヤクザと家族 The Family』も、本当に出てくる俳優さんのお芝居がすごかったなと記憶しています。それに次ぐ作品に出れるなんて、本当に光栄でした。
ーー完成した映画をご覧になっていかがでしたか?
作間:お昼ごろ見たんですが、精神的にくらって、体が動かなくなっちゃって…。その後の歯医者の予定をキャンセルして、家で寝ました(笑)。
ーーご自身の演技については、いかがでしょう?
作間:完成した映画を見た時に、関係者から「ジャニーズのタレントを、こんなふうに描くんだなって言われちゃうかも」って言われたのを覚えています。でも、それってとてもありがたいですよね。そう思わせるような役を、デビュー前のジャニーズJr.の身で演じさせていただけたというのは、すごく大きな経験になったなと。今回かなり暗い役を経験したので、(今後)明るいところも逆に伸びるのかなと思っています。
■「“おびえている作間”が、恵一らしさを生んでくれた」
ーー現場の雰囲気を教えてください。
作間:ずっとテレビで見ていた横浜流星さんに会えるのかと、クランクインする前はすごくワクワクしていました。ただ、ひげを生やした横浜さんがダークな雰囲気を纏(まと)っているのを見て、ワクワクしていられないなと一気に緊張感が高まりました。
ーーほかに現場で印象的だったことは?
作間:キャストのみなさんが一堂に集まるシーンを撮影する時に、一ノ瀬ワタルさんと、中村獅童さん、古田新太さんが控え室で話している姿がえげつない絵面で(笑)。すごく印象に残っています。この年齢で、あの景色を見れるなんて思っていなかったので、改めてすごい現場にいたなと。
ーー名だたる俳優の皆さんに囲まれて、緊張したのではないでしょうか?
作間:緊張しましたね。でも、恵一のキャラクター的にも、あえて緊張感をほぐさなくてもいいのかなと思ったので、そのままでいました。すごいキャストの方々を目の前に“おびえている作間”が、恵一らしさを生んでくれたのかなと、ポジティブに捉えたんです。
■作間龍斗が考える“恵一”という青年
ーー作間さんが演じた恵一というキャラクターについて教えてください。
作間:恵一は、閉鎖的なところで生まれて、自分を表現するのが苦手でいながらも、すごく意志がある青年だなと思いました。そういう姿が、かわいらしくもあり、なんとかしてあげたいと思わせるのかなと。
作間:でも、実は最初にお話を聞いた時は、タバコを吸って自転車をこいでいるような全然違うキャラクターだったんです。そこから、内容が変わっていって、今回の映画で演じた恵一になりました。
ーー役作りはどんなことをしましたか?
作間:恵一は言葉を発するときに吃音になりがちなので、グループのメンバーと話すときにちょっと吃音を入れて練習したりしていました。声のトーンや、発声をどうしたらいいかがわからなかったので。「やめて」って言われることもありましたけど(笑)。
作間:あとは現場に入って少し違うところがあると「今、恵一はこういう状態で、こういう言葉を受けてこういう言葉を出さなきゃいけなくて」と監督が感情や設定を言語化して細かく教えてくださったので、それに合わせて役作りしていきました。
ーーそういう作業を通して、面白さと難しさどちらの方が大きかったでしょう?
作間:難しさはありましたけど、試写を見た時に「あ、こんな感じになってたんだな」と思えたので、面白さの方が大きかったですね。
■「デビューしたら、藤井監督にMVを作ってもらうんです」
ーーグループでのお仕事とお芝居のお仕事、それぞれの姿勢や心構えに違いはありますか?
作間:お芝居に関しては、全部が貴重だなと思っています。事務所の中では、先輩を見て、自分のこれからが想像できるのですが、お芝居の現場には育ってきた環境が違う方々が集結するので。他愛のない話をしていても「そういうふうに感じるんだ」と気付かされることが多いんです。グループでは、メンバーといつも一緒にいるので「話さなくてもいいや」と思っているのですが、お芝居の現場ではなるべく話そう、なるべく吸収しようと努力しています。
ーー藤井監督と話したことで印象的だったことは?
作間:「ジャニーズの人とあまり(仕事を)したことがない」とおっしゃっていたこともあって、僕をジャニーズとして意識せず見てくださっている方からは、こんなふうに見えているんだなと気付かされました。そういう思いも込めて、エンドロールの僕の名前のところには「ジャニーズJr.」という表記がされていないんです。あくまでも“作間龍斗”として監督は見てくださったのかなって。
作間:それから「僕、ミュージックビデオとか作っているからさ、デビューしたらやらせてよ」って言ってくれたのはうれしかったですね。早く大きくなろうと思えました。
(取材・文:於ありさ 写真:松林満美)
映画『ヴィレッジ』は全国公開中。