シリーズ累計480万部を超える賀来ゆうじの人気漫画をアニメ化した『地獄楽』(テレビ東京系ほか/毎週土曜23時)の放送がスタートした。江戸時代末期、極楽浄土と噂される島で繰り広げられる「不老不死の仙薬」をめぐる戦い――。

そんな本作で、仙薬を持ち帰れば無罪放免となる死罪人・亜左弔兵衛の声を担当する木村良平、死罪人たちの監視兼処刑執行の役目を担う打ち首執行人で弔兵衛の弟・山田浅ェ門桐馬を演じる小野賢章。過去に何度も共演し、大きな信頼感で結ばれている木村と小野が、お互いの関係性や作品の魅力などを語った。

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■「誰と掛け合うかで作っていく」木村&小野が考える作品の魅力と芝居

――非常に高い人気を誇る漫画のアニメ化になりますが、原作を読んで、どんな部分に惹かれましたか?

木村:結構緩急が効いているというか、ちょっと緩い部分がありつつ迫力あるワンカットもあり、キャラクターの怖さやヘビーな心情を描くなどメリハリが気持ちいい。読んでいて気持ちいいテンポで、アニメーションにしたときにすごく楽しみな作品になるなと感じました。

小野:忍、侍、刀。バディものでバトロワがあり、不老不死の薬とか…好きがいっぱい詰まっているなと(笑)。死罪人を監視するバディものという設定にも惹かれました。あとは単純に絵もすごく好きです。キャラクター設定も死罪人がただの快楽犯とかではなく、ちゃんと背景があるので感情移入しやすいですよね。読めば読むほどのめり込んでいきました。

――お2人が演じた弔兵衛と桐馬の魅力は?

木村:やっぱり弔兵衛のブレないところ、揺らがないところは格好いいですよね。(弟と)たった2人でこんな特異な環境に放り込まれて、しかも自分が前に突っ込んでいく立場なのに、まったくひるまず自分を貫いてぶち破っていく。
しかもその内実は、相手に合わせて適応していく能力もある。そこって矛盾していると思われかねないのですが、成立させてしまっているのがめちゃくちゃ格好いいなと思います。

小野:弔兵衛はゴリゴリのオフェンスなのですが、桐馬は司令塔的な感じ。1歩引きながら頭を使っていろいろやるタイプというか、視野が広い感じがいいですよね。桐馬の行動理由のすべてに弔兵衛の存在があるんです。兄さんのために…というのが桐馬の魅力かなと思います。

――それぞれのキャラクターを演じるときに意識したことは?

木村:僕は芝居をするときに、基本的には物語のなかで、誰と掛け合うかで作っていくことの方が多いです。今回も周りの死罪人の声を聞きながら把握していった感じで、アフレコでも「こうしてほしい」というようなディレクションはほとんどなかったです。そのなかで、僕は最初、弔兵衛はかなり振り切ってやりました。気持ち的には50パーセントのパンチで倒せる敵でも100パーセント出してやっちゃうみたいな。でも音響監督さんから「もっと余裕でいいよ」と言われたので、少し調整したのを覚えています。

小野:僕は「兄さんリスペクト」という気持ちを大切にしていましたし、収録のときに監督からもそれは言われました。
常に「兄さんすごい」という思いはベースとして持っていたと思います。

■弟役が賢章で「良かった」 共演への安心感

――今回は兄弟役での共演でしたが、キャスティングされたときはどんな思いでしたか?

木村:マネージャーから「弔兵衛役に決まった」と連絡があったとき、「弟の桐馬は誰?」ってまず聞いた気がします。そのときに賢章の名前を聞いて「あー良かった」って(笑)。よく知っている相手なので安心感がありました。

小野:僕も良平さんとは何度も共演させていただいていますので良かったなという思いはありました。でも、これまでチームメイトとかはありましたが、兄弟ほど近しい関係性はなかったのですごく楽しみでした。

――実際、お互いに対峙してみていかがでしたか?

小野:キャラクター的に、あまり兄弟っぽい感じにはならないだろうなとは思っていたのですが、見ている人が「この兄弟はすごく固い絆で結ばれているんだろうな」と感じていただければいいなと思いながら演じていました。

木村:なんでも分かっているわけではないけれど、賢章だったらある程度「こうくるな」みたいなことはやっぱりあるので、そこをベースに収録に臨めたので、すごくスムーズにいけました。

■「唯一無二」と「説得力」 お互いが感じる“人間離れ”した部分

――物語には人間離れしたキャラクターが多数登場しますが、お互いに「すごい、人間離れしている」と感じる部分は?

木村:自分を褒めるみたいで嫌なのですが、若いころ先輩から「良平は、そんな芝居あんのか? っていうのを成立させるよな」とよく言われていたんです。当時は自分で分からなかったのですが、賢章がある程度アニメをやるようになって何年かしてからガッツリ共演したときに、賢章の芝居を体感して「こんなアプローチで、しっかり成立させるってスゲーな」って思ったことがあったんです。発声が変わっているとかではなく、切り口やアプローチ方法でしっかりと尖った表現ができるというのは、唯一無二なんだろうなと思います。

小野:良平さんに感じるのは、説得力ですね。
発するセリフにはいつも説得力があって、「あ、これが正解だ」と思ってしまう。正解に聞こえてしまうのは特殊能力だと思います。良平さんってパッとやってパッと帰るというか(笑)。それだけに、一発にかける集中力というのも説得力につながっている。エネルギーを凝縮して、密度の濃いものを投げかけてくる。そこは他にはないすごいことだと思います。受け取る側もすごく楽しいです。

■「競っても勝てるわけない」 開き直って乗り越えた転換期

――お2人とも子役から活動をはじめ、声優業でも第一線で活躍されているという共通点があり、共演も多いです。そこに対するお2人の意識というか、お互いにどんな関係だと思っていますか?

木村:現場にいるときは同僚かな。僕が賢章に「こうした方がいい」とか言うこともないしね。

小野:僕も同僚という感じですね。仕事が終われば良い先輩。
ライバルという意識はないかな、と思います。本当に仕事仲間ですね。

――作中で登場人物は非常に困難な任務に従事することになりますが、これまでの俳優・声優活動でとても困難だと感じたことは?

小野:僕は20代前半ぐらいから舞台をずっとやり続けているのですが、あるとき本番が終わってから10日後にまた別の舞台の本番があるというスケジュールを組んだことがあったんです。そんなタイトなスケジュールなのに、前の舞台が終わった次の日にインフルエンザになってしまい、1週間しかない稽古のうち4日間休んで残りの3日間で仕上げないといけないことがあって…。本番直前のゲネプロまで、プロンプ(出演者にセリフや立ち位置などの合図を送るスタッフ)を入れてもらったことがありました。何とか乗り切ったのですが、それ以来、こんな無茶なスケジュールは組まないようにしようと身に沁みました(笑)。

木村:子役から大人になる境目のころ、一旦顔出しはやめたいなと思って事務所に言ったことがあったんです。でも芝居は続けたくて、声の芝居で…ということになったのですが、そのころ自分は子役だから評価されているんだという思いもあって。アニメが好きでめちゃくちゃ声優にも詳しくて、専門学校に行って勉強している人と競っても勝てるわけないと思っていた時期がありました。

小野:その気持ち、すごく分かります。

――どうやって乗り越えたのですか?

木村:アニメをたくさん見たり、声優さんがどんな勉強をしているのかを研究したり。でも結局は、自分がこれまでやってきた道を信じて進むしかないなと思って開き直った部分もありました。
その結果、目標に至る道は1つじゃないという結論に達したことで、いままで自分が歩んできた道は間違いではなかったんだと思えました。

 木村と小野のインタビューからは、同じ業界で切磋琢磨してきたことで生まれる信頼感の大きさを垣間見ることができた。弔兵衛と桐馬が本格的に登場する第4話以降は、息の合った兄弟の掛け合いに期待したい。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 テレビアニメ『地獄楽』は、テレビ東京系ほかにて毎週土曜23時放送。

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