今年始動したお笑い賞レース、『THE SECOND ~漫才トーナメント~』。漫才の大会として全国的に有名な『M‐1グランプリ』の出場資格が結成から15年以内であるのに対し、『THE SECOND』に出場できるのは結成16年以上経過した漫才師に限られる。

つまり、ベテラン芸人たちが“セカンドチャンス”をつかむための舞台なのだ。今年2月から選考会がスタートし、ついに8組のファイナリストが決定。本日19時よりフジテレビ系にてグランプリファイナルの様子が生放送される。司会は東野幸治、アンバサダーにはダウンタウン松本人志と、キャスティングからもその“本気度”が伺える。本記事では、イチお笑い好きである筆者が勝手に決勝戦のカードを予想。ここまで夢をつかみ損ねてきた実力派漫才師のトップを獲るのは誰なのか、考えてみたい。

【写真】すでにバチバチ! 『THE SECOND』抽選会で見せたファイナリストたちの表情

■ファイナリストは8組、戦いはトーナメント方式

 『THE SECOND』のファイナリストとなったのは、結成16年から28年の漫才師8組。グランプリファイナルでは“トーナメント方式”が取られる。対戦カードは以下の通りだ。

第1試合:金属バットVSマシンガンズ
第2試合:スピードワゴンVS三四郎
第3試合:ギャロップVSテンダラー
第4試合:超新塾VS囲碁将棋

 つまり、第1・第2試合で戦う4組のうち1組、そして第3・第4試合から1組が決勝でぶつかることとなる。それを踏まえて、『THE SECOND』決勝カードを予想していこう。

■第1・第2試合からの決勝進出者は「マシンガンズ」と予想

 まずは、第1・第2試合から。
昨年まで5年連続で『M‐1グランプリ』準決勝に進出してきた金属バットや、ハンバーグ師匠と“世界の小沢”のイメージが強いものの実は『M‐1』や『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)常連だったスピードワゴン、テレビ・ラジオで同級生ならではの絶妙なコンビバランスを発揮する三四郎など注目株がそろう中で、戦いを制すると予想するのは“マシンガンズ”としたい。

 1998年結成のマシンガンズは、滝沢秀一と西堀亮のコンビ。2人とも40代後半というまさに“ベテラン”といえる存在だが、ここ最近は漫才師というより“ごみ収集作業員の滝沢”にピンと来る人も多いかもしれない。2児の父である滝沢は2012年よりごみ収集会社に就職しており、SNSなどでごみの分別の仕方を発信したり、ごみ清掃員の日常をつづった著書を出版したりと、“お笑いもやっているごみ清掃員”というイメージになってきている。

 しかし、マシンガンズは“ゴリゴリの漫才師”だと声を大にして言いたい。そのスタイルは世の中のあらゆる方向に2人してとにかくツッコみまくるキレ漫才。2008年ごろに巻き起こったお笑いブームでは、『エンタの神様』(日本テレビ系)『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)といったブームをけん引した番組でも活躍。めんどくさい女性、ネットの書き込み、さらには自分たちにまで、とにかくキレまくった。

 お笑いブームが終わっても、2人の“怒り”は収まっていなかった。久しぶりの出場となった賞レース『THE SECOND』のノックアウトステージでは、『M‐1』でも活躍しインターネットの評価も高いランジャタイに大きな得点差をつけ勝利。芸人仲間の感動も大きかったようで、同じくファイナリストの三四郎さえ、自身らの冠ラジオ『三四郎のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送/毎週金曜深夜3時)にてマシンガンズのファイナリスト入りを「うれしいですね」と発言。もしも三四郎VSマシンガンズ対決が実現すれば、リスナーとしてはこちらも見逃せない戦いとなる。


■第3・第4試合からの決勝進出者は「囲碁将棋」と予想

 第3・第4試合には、かつて関西の賞レースを総ナメにしてきたギャロップや、今大会最年長・キレのあるボケが持ち味のテンダラー、“ロックンロールコント集団”を自称する5人組の超新塾など華と実力を兼ね備えた面々がそろう。そんな中、決勝に進むのは“囲碁将棋”と予想したい。

 囲碁将棋の結成は2004年。ボケの文田大介とツッコミの根建太一のコンビだ。2018年からは大宮ラクーン吉本劇場にて、マヂカルラブリージェラードンなどとともに“大宮セブン”として舞台に立っている。2人ともスーツに黒髪といういわゆる正統派漫才師な見た目で、テレビよりも劇場を主戦場にしているが、最近では人気バラエティ番組『水曜日のダウンタウン』(TBS系/毎週水曜22時)に根建が数度出演したことでお茶の間の人気も徐々に付いてきた印象だ。

 芸人界では、囲碁将棋の漫才への評価はものすごく高い。同じ大宮セブンのメンバーで、2020年に『M‐1』チャンピオンとなったマヂカルラブリーの野田クリスタルは、「芸人で囲碁将棋つまんないっていう人は1人もいないんで」「重要無形文化財」「わからないならわかるまで繰り返し見た方がいい」(※1)とまで言い切った。他にも、ニューヨークやオズワルドといった東京若手漫才師たちが囲碁将棋の漫才を絶賛し、脱帽する。囲碁将棋が今大会でファイナリストとなったのは、ある意味“順当”と言えるのではないだろうか。

 ネタのスタイルはいわゆる“しゃべくり漫才”、お互いの掛け合いでネタが展開していく。パワフルなボケとツッコミがぶつかるストロングスタイルが魅力だ。
さらに、ネタによってボケとツッコミが入れ替わったり、2人ともボケまくったり、最後に急に片方がボケたり…とそのパターンは無限。『THE SECOND』は優勝するには3本のネタが必要になるため、多彩なスタイルをもつ囲碁将棋の魅力が十分発揮できるのではないだろうか。

 ネタや劇場での立ち居振る舞いは圧巻の実力を持つ2人だが、テレビに出ると「ハネない」「55点しか出せない」と4月に出演した『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系・ABEMA)で告白していた。『THE SECOND』で爪痕を残した後、テレビでも「120点」をたたき出す囲碁将棋の姿に期待せずにはいられない。

■優勝予想! 1千万円と“セカンドチャンス”を得るのは一体誰なのか

 と、ここまで大変勝手な予想をぶち上げてきたのだが、実際のところファイナリストとなった8組は間違いなく全員が優勝の可能性がある実力派。正直に言えば、誰が優勝となっても納得ではあるが、『THE SECOND』初代チャンピオンは“囲碁将棋”と予想したい。

 今回、ネタ時間は6分と賞レースにしては少し長め。さらに審査は、プロの芸人ではなく一般の観客が行う。この理由について、総合演出を務める日置祐貴氏はインタビューで「普段、皆さんは劇場で漫才をやられている方ですから、劇場で笑ってるお客さんが点数をつけるのが一番いいんじゃないかと」(※2)と語った。また、前述のとおり優勝までは3本のネタを披露する必要がある。これらを踏まえ、“劇場番長”と呼ばれるほどに舞台数を踏んでいつつ、ネタのパターン数も多い囲碁将棋が優勝すると予想した。

 『THE SECOND』の優勝賞金は『M‐1』と同じ1千万円。
今年初めて行われる賞レースだが、『THE SECOND』には賞金額同様『M‐1』と同等の影響力と夢があると信じたい。1千万円と“セカンドチャンス”をつかむベテラン漫才師は一体どの組になるのか、今からグランプリファイナルへのワクワクが止まらない。(文:小島萌寧)

※1 囲碁将棋、マヂラブも心酔する芸人が体現する「ポストM-1時代」のブレイクとは 日刊サイゾー

※2 『THE SECOND』試行錯誤を重ねたルール設計「審査員が炎上するのはもう見たくない」 マイナビニュース

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