広瀬すずが主演を務める前田哲監督作『水は海に向かって流れる』(6月9日公開)より、前田監督が広瀬や作品に込めた想いなどについて語るコメントが到着した。
【写真】“凛々しく美しい、大人な広瀬すず”に注目
田島列島の同名漫画を実写化する本作は、26歳のOL・榊さん(広瀬)と高校生の直達(大西利空)を中心に、くせ者ぞろいのシェアハウスの面々の想定外の日々をつづった、家族の元を離れて始まる家族の物語。
過去のある出来事から「恋愛はしない」と宣言する主人公・榊千紗を演じるのは広瀬すず。榊さんに淡い思いを寄せる直達役に抜てきされたのは大西利空。主題歌はスピッツが担当し、本作のために書き下ろされた新曲「ときめきpart1」が、登場人物たちの心情に寄り添い、この物語を一層彩っている。
■前田監督が明かす自身の作品の“共通点”
近年、『そして、バトンは渡された』『老後の資金がありません!』『ロストケア』などの話題作を手掛けた前田哲監督。『そして、バトンは渡された』では永野芽郁を主演に迎え、次々と親が変わる境遇で育った女子高生の物語を、『老後の資金がありません!』では天海祐希演じる平凡な主婦が、現代日本が抱える問題に立ち向かうコメディ・エンターテイメントを作り上げた。そして『ロストケア』では、自らの信念に従って殺人を繰り返していく心優しい介護士の男(松山ケンイチ)と検事(長澤まさみ)の対峙を描くなど、感動作から社会問題に切り込む作品まで、様々なテーマに挑んでいる。
各作品は一見異なる作風に思えるが、前田監督は、自身の映画にはある点が共通していると明かす。それは“未来に向けて映画を作る”ということ。2020年の年末、前田監督のもとに『水は海に向かって流れる』の映画化の話が持ち込まれ、原作を手にした監督は、榊さん(広瀬すず)、直達(大西利空)、楓(當真あみ)を中心にした登場人物の関係性とキャラクターの面白さ、隣に座ってそっと背中に手を添えてくれるような物語に引き込まれたと振り返る。
そして「榊さんと直達のように、置かれた環境のせいで理不尽な目に遭っている人々に向けて、自分の人生は自分だけのものなのだから!と、静かであるが余韻が心に響くようなエールを贈りたかった」と本作に込めた想いを語り、これまでの作品と同様に“未来に向けて映画を作る”という信念をにじませた。
■「広瀬さんは、テイクワンが凄い」 予定になかった長回しも
また、撮影時の広瀬について「感性と瞬発力が素晴らしい」「芝居はリアクションが大切だと思っています。相手のリアクションを受けてテイクを重ねるほど良くなる人もいれば、その逆の人もいる。
広瀬さんは、テイクワンが凄いのです」と称賛。
その凄さを物語るシーンのひとつが、「直達が、榊さんの怒りを代弁するかのように感情を露わにして語る」場面。直達の想いを受け取り、目に涙を浮かべる榊さん。この約4分間のシーンは、当初はカットを割って撮る予定だったが、広瀬からあまりにもエモーショナルなものが溢れ出てきたため、「今この瞬間の彼女の感情を撮り逃さない」と判断し、予定にはない長回しのシーンとなった。完成作では途中カットが入っているが、言葉にしなくても榊さんの心情が痛いほど伝わってくる、彼女の感情に観客が同化していくような芝居が映像に収められている。
置かれた環境のせいで理不尽な目に遭っている人々をシリアスになりすぎずに描き、“未来を映し出す”前田監督が引き出した、広瀬すずの凛とした美しい姿、感情、表情の数々。永野芽郁とタッグを組んだ『そして、バトンは渡された』に続き、広瀬とタッグを組み「凛々しく美しい、大人な広瀬すず」を映し出した本作にも注目したい。
映画『水は海に向かって流れる』は、6月9日より全国公開。
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