漫画雑誌「月刊サンデーGX」(小学館)で連載中の原作・麻生羽呂、作画・高田康太郎による同名漫画を映画化した、Netflix映画『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』。今回は、主人公・天道輝(てんどうあきら)を演じた俳優の赤楚衛二にインタビューを実施した。
世界が突然ゾンビだらけになったことで属していたブラック企業から解放された輝が「楽しく生きる」を信念に日々を突き進む本作。赤楚が語る輝への憧れと、本作に出演したことで感じた想いとは…?
【動画】赤楚衛二、もし世界がゾンビだらけになったらしたいこととは?
■どんな状況でも楽しいにフォーカスできる主人公・輝は「憧れ」
――人気漫画の実写化ですが、オファーを受けたときのお気持ちは?
赤楚:原作は、弟が「面白い漫画があるよ」と勧めてくれていた作品だったので知っていました。本当に僕にやらせてもらえるんだと思い、すごく嬉しかったです。
――ゾンビものでありつつ、青春作品の要素も強い物語ですが、どんなアプローチで臨んだのでしょうか?
赤楚:漫画を読んでいて、ハッピーな気持ちになれる、エンタメ性の強い作品になるんだろうなという印象があったので、とにかくどのシーンも全力で楽しもうという思いで臨みました。あとは、ブラック企業で死んだ目になっていく過程や開き直って楽しむ部分など、グラデーションをしっかり表現できたらと思っていました。
――ゾンビに追いかけられるなど、アクションシーンも多い作品ですよね。
赤楚:撮影は、映画『チェリまほ THE MOVIE 30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のクランクアップ直後だったんです。なので、内面からというのは難しかったですね。輝はアメフトをやっていたという設定だったので、その基礎を学ぶ機会がありました。体づくりに関しては、『チェリまほ』の映画が終わる前に絞ってしまうと繋がらないと思ったので、撮影が終わってから頑張ろうという気持ちでした。
――輝はゾンビが街中に溢れたことでポジティブに目覚めていきます。赤楚さんは輝に対してどんな印象を持ちましたか?
赤楚:憧れに近かったです。
世界中がゾンビになるって、普通だったら絶望にフォーカスされると思うのですが、輝は楽しい方にフォーカスしていく。実際の私生活でも、絶望まではいかなくても、楽しいことが見つからないとか、全然面白くないとかって、誰にでもあることだと思うんです。そんな状況下でも、物事の捉え方一つで、日々が色鮮やかになるということを実践している輝は、やっぱり魅力的だなと思いました。
■「ゾンビに追いかけられたい」という夢はかなったけれど…
――今年の7月にロサンゼルスで行われたAnime Expo2023では「人生で一番やってみたかったことは、ゾンビに追いかけられること」と話されていましたが、実際追いかけられてみていかがでしたか?
赤楚:めっちゃ怖かったです(笑)。輝は怖がっちゃダメだという設定だったのですが、いざ転んでしまったら、押しつぶされたり食べられたりするんだと考えると、やっぱり怖かったです(笑)。撮影だから大丈夫でしたが、現実にこうなったら僕は泣いて動けなくなると思います。ゾンビになった方が楽かも…と考えてしまうかもしれませんね。
――石田雄介監督の現場はいかがでしたか?
赤楚:命を削ってやっているというぐらい熱量の高い監督です。クランクイン前にキャラクターや作品についてお話する機会があったのですが、そのときから監督自身が輝みたいな真っすぐさのある人で「この人とだったらパワフルな作品を作ることができるだろうな」と思えました。物語の後半には少し特殊なゾンビが出てくるのですが、その動きも監督が自らハアハアしながらめちゃくちゃ体力を使ってディレクションしてくださいました(笑)。
――それだけ熱量の高い監督ですと役も演じやすかったのでしょうか?
赤楚:作品を良くしたいという気持ちを感じられるので、すごく信頼できました。こちらの疑問や提案にもしっかり耳を傾けてくださり、役者の心情も考えてくれたんです。
石田監督だけではなく、現場にいる方がみなさん輝のような方たちばかりで非常に楽しい現場でした。
――親友・ケンチョ役の柳俊太郎さんや、ヒロイン・三日月閑役の白石麻衣さんとの共演はいかがでしたか?
赤楚:柳くんとは共演が3回目なので普通にしゃべれましたが、白石さんにはなんて声を掛けていいのか分からず、車内に3人でいるとき、沈黙が続いてしまうことがありました。その沈黙をなんとかしようと「どんな曲が好きですか?」という話をしたら、白石さんがラップ系の曲が好きっておっしゃったんです。でも、僕も柳くんも全然分からなくて、その後もお互いの曲の趣味が合わずまた沈黙が続いてしまったということがありました(笑)。
■仮面ライダークローズ/万丈龍我と『ゾン100』でヒーローは「繋がっているな」
――輝は学生時代にやっていたアメフトがゾンビと対峙するときに役に立ちましたが、赤楚さんが過去にやっていたことで、いま役に立っているなと思うことはありますか?
赤楚:剣道ですかね。当時はきつかったのですが、いま考えるとその時のおかげで根性がついたのかなと思っています。あとは公文でしょうか。普通に計算が早くなり、スケジュールの管理や逆算がパッとできるので、役に立っているのかなと思います。
――みんなを救う“ヒーロー”に憧れる輝ですが、赤楚さんでヒーローと言えば『仮面ライダービルド』の仮面ライダークローズ/万丈龍我が印象に残っています。本作となにか共通点はありましたか?
赤楚:仮面ライダークローズも青色のライダーだったのですが、今回も青色という共通点はありました。作画の高田さんもクローズを観てくださっていたようで「同じ青ですね」という話をしてくれましたし、僕のなかでも勝手に「繋がっているな」と感じる部分は多かったです。でも、ヒーローと言っても輝は“誰しもがなれるぐらいのヒーロー感”だったので、身近さが魅力なのかもしれません。
■考え方しだいで置かれた状況を楽しめる輝との出会いは運命
――「やりたいことができないなら、ゾンビに食われた方がマシ」というのはある意味、開き直り的な感情だと思うのですが、赤楚さんはこのマインドに共感できますか?
赤楚:開き直りというか、置かれた状況で何をするかというのは大切かなと。例えば、いま僕がアメリカで1週間暮らしたいと言ってもそれはできない。それに対してできないことを嘆くよりも、いまできることのなかで、何か楽しいことを見つけるというマインドはとても共感できます。諦めるという言葉が正しいか分かりませんが、諦めとフォーカスをずらすは、誰でもできることだと思うので。
――そういう考えは昔からあったのでしょうか?
赤楚:僕も以前は理想の自分がいたり、やりたいことがいっぱいあって、理想と現実との乖離で苦しんだ時期がありました。でも、自分のやってきた過程を肯定してあげることで、徐々に気持ちが楽になっていったんです。
――気持ちの変化にはなにかきっかけがあったのですか?
赤楚:コロナ禍ですね。緊急事態宣言中に、自分を見つめ直す時間がありました。自分を掘り下げていった結果、高望みするのではなく、自分の置かれた状況としっかり向き合うことが大事だなと感じるようになりました。
――そういうマインドになってから、輝というキャラクターに出会えたのはすごく大きな縁ですね。
赤楚:運命を感じました。輝は、ただその場の状況を楽しむ。
やっぱり楽しまないと人生は豊かにならないままです。輝という人物に出会って、そういう考えが正しいんだなと思えたことは僕にとって収穫でした。
――そんな赤楚さんがいまかなえたいことは?
赤楚:エジプトに行ってピラミッドを見たい。北欧に行ってみたい。オーロラを見たい。滝行をしたい。ニューヨーク、アンコールワット、マチュピチュに行きたい。スカイダイビング、スキューバーダイビングの免許を取りたい。バイクの免許も欲しい。ハワイへも行きたい。人生1回しかないので、やりたいことを沢山したいです。
(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
Netflix映画『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』は、Netflixにて8月3日世界独占配信。
※柳俊太郎の「柳」は「『柳』の異体字」が正式表記
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