森山未來が主演し、藤竜也、真木よう子、原日出子が共演する近浦啓監督作『大いなる不在』(英題:GREAT ABSENSE)が、第48回トロント国際映画祭のコンペティション部門となる「プラットフォーム部門」でワールドプレミア上映されることが決定。キャスト陣をスタイリッシュに配置した海外ポスター、キャスト&監督のコメントが解禁された。
【写真】森山未來「名誉あるセクションに選ばれ、光栄に思う」 映画『大いなる不在』キャスト陣
本作は、長編デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』(2018)が、トロント、ベルリン、釜山などの名だたる国際映画祭に正式招待されるなど世界的な評価を受けた近浦啓監督の第2作目となる長編映画。森山演じる主人公の父親を藤、妻を真木が演じ、物語の重要な鍵となる父親の後妻役を原が務める。今回森山と藤は初共演、森山と真木は『モテキ』以来の共演、藤と原とは『ションベンライダー』以来40年ぶりの共演となる。
撮影は、『誰も知らない』『海よりもまだ深く』など多くの是枝裕和監督作品を支えてきた山崎裕が『コンプリシティ/優しい共犯』に続き担当し、全編35mmフィルムで撮影した。サウンドミックス・デザインは、『ドライブ・マイ・カー』などを手掛けた野村みき・大保達哉のユニット、P.A.T Worksが担当。音楽は、これが長編映画初劇伴作品となる新進気鋭の作曲家・糸山晃司が務める。
このたび本作が、現地日程9月7~17日まで開催される第48回トロント国際映画祭のコンペティション部門となる「プラットフォーム部門」で、ワールドプレミア上映されることが決定。日本人監督がこの部門に招待されるのは、黒沢清監督(『タゲレオタイプの女』/2016)以来、2人目となる。
トロント国際映画祭は、長らく非コンペティションの映画祭といわれていたが、2015年にコンペティション部門を新設。名匠ジャ・ジャンクーの監督作品名にちなみ「プラットフォーム部門」と名付けられた。芸術的価値が高く、力強く監督のビジョンを示している作品を中心に選出しており、過去に第89回アカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』がこの部門で上映されたことから、アカデミーの前哨戦として、同映画祭の中でも特に注目される部門になっている。
本作は、コンペティション部門にノミネートされた10作品の中から選出される「プラットフォーム・アワード」に加えて、すべての上映作品から選ばれる「観客賞」(ピープルズチョイス・アワード)の対象となっており、映画祭期間中に、キャストの森山未來、藤竜也、真木よう子、原日出子がそろって現地で出席する予定。
なお日本公開は2024年を予定している。
『大いなる不在』について、森山は「ある種の虚構の世界で生きる父にまるで俳優のように寄り添い、やがては世界に溶けていく彼を穏やかに見守る。近浦監督の実体験に着想を得たそんな物語に役者として参画するという、不可思議なレイヤーの海の中で揺れていた北九州での記憶が甦ります。トロントでの上映を経て、多くの方にこの作品を観ていただけることを願っています」とメッセージ。
藤は「物理学を研究して、その分野で名を残したが、うんと普通で、煩悩にまみれた男。純粋ばかのおとこ。私は新幹線のように素早く、この男の中の入りこめたように思います。この映画は、一人ひとりの見る側と、近浦さんの映画との会話で成り立つのではないかと思った」と言葉を寄せた。
原は「ある種ドキュメンタリーのようなリアリズムと、計算され、完成され尽くした作品作りの中で直美の役を生きた時間は私にとってかけがえのない時間となりました」とコメント。
真木は「私は、初めて生きている、歩く芸術に目を奪われた。それが森山未來の仕草であった。なんて美しく、気高く、女の私が敗北をくらった、許すまじ森山未來。
台本を頂き、キャストの名を聞き、恐らくその頃からこの様な名誉を頂く作品だという事を疑う事すら愚かな事だと感じた様に思います」と熱く語る。
近浦監督は「この映画は、その名の通り『不在』についての映画です。『ない』何かに向けて目を凝らすことは、その輪郭を形づくる『ある』何かに対して思索を深めることになります。そんな抽象的な考えを具象化し、ミステリー傾向の高いエンタテイメント映画に仕上げたい、という想いでスタートしました。トロント国際映画祭のコンペティションという大きな舞台でこの映画が船出できることをとても嬉しく思います」とコメントを寄せている。
映画『大いなる不在』は2024年公開。
キャスト・監督コメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■森山未來
この度は『大いなる不在』が評価され、トロント国際映画祭のコンペティション部門という名誉あるセクションに選ばれたことを、心から光栄に思います。
ある種の虚構の世界で生きる父にまるで俳優のように寄り添い、やがては世界に溶けていく彼を穏やかに見守る。近浦監督の実体験に着想を得たそんな物語に役者として参画するという、不可思議なレイヤーの海の中で揺れていた北九州での記憶が甦ります。トロントでの上映を経て、多くの方にこの作品を観ていただけることを願っています。
■藤竜也
2022年、年が明けて間もないころ、近浦監督から新作のオファーを頂いた。
『Empty House』『コンプリシティ/優しい共犯』に続いて3回目のご指名だった。嬉しかった。光栄なことだと思った。でも、期待に応えられるかどうか心配だった。台本を読んだ。読んだ、読んだ。私が演ずる男が好きになった。物理学を研究して、その分野で名を残したが、うんと普通で、煩悩にまみれた男。純粋ばかのおとこ。私は新幹線のように素早く、この男の中の入りこめたように思います。
『大いなる不在』の試写を見ました。私の魂のどこかにくらった重い衝撃! これは何だろう? 無理に分析したら、大切な何かが行方不明になりそう。
この映画は、一人ひとりの見る側と、近浦さんの映画との会話で成り立つのではないかと思った。
■原日出子
この度は出演作『大いなる不在』が、栄誉ある映画祭のコンペティションに選出されました。このような素晴らしい作品に出逢えましたこと、心から感謝いたします。そして近浦監督をはじめ映画制作に携わった全ての方たちにお祝い申し上げます。
ある種ドキュメンタリーのようなリアリズムと、計算され、完成され尽くした作品作りの中で直美の役を生きた時間は私にとってかけがえのない時間となりました。素晴らしい作品に参加できたことを光栄に思います。是非世界の舞台に羽ばたいていって欲しいです。
■真木よう子
私は、初めて生きている、歩く芸術に目を奪われた。それが森山未來の仕草であった。なんて美しく、気高く、女の私が敗北をくらった、許すまじ森山未來。台本を頂き、キャストの名を聞き、恐らくその頃からこの様な名誉を頂く作品だという事を疑う事すら愚かな事だと感じた様に思います。だけど、多くの人には共感させない。
お目が高い人だけご覧下さい。
■近浦啓監督
この映画は、その名の通り「不在」についての映画です。「ない」何かに向けて目を凝らすことは、その輪郭を形づくる「ある」何かに対して思索を深めることになります。そんな抽象的な考えを具象化し、ミステリー傾向の高いエンタテイメント映画に仕上げたい、という想いでスタートしました。
日本が誇る役者の方々、そして、技術者の方々が集まってくれたことにこの場を借りて深く感謝いたします。トロント国際映画祭のコンペティションという大きな舞台でこの映画が船出できることをとても嬉しく思います。いつかきっとこの航海が、日本の劇場に辿り着きますように。心から願っています。
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