豪華キャストの共演と壮大で起伏に富んだストーリーが多くの視聴者を熱狂させている日曜劇場『VIVANT』(TBS系/毎週日曜21時)。放送前に内容がほぼ明かされないという異例のスタートとなった本作だが、今後の展開をより一層楽しむために、ミステリアスな主人公・乃木(堺雅人)について、その素顔や謎を整理していこう。



【写真】『VIVANT』第4話 誤送金事件の真相解明 誰も予想できない衝撃の展開へ

 本作は『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』シリーズなど数々の大ヒットドラマを手がけてきた福澤克雄が企画・監督を務めるアクション・アドベンチャー大作。日本の大手商社で発生した損失約130億円の誤送金事件を発端に、世界を股にかけた大冒険が活写される。

 このドラマで堺が演じるのは、誤送金事件の責任を問われてしまう商社マン・乃木憂助。このキャラクターについて、監督の福澤は番組スタート直前のインタビューの中で「一番難しい役」とコメント。この言葉が示す通り、第3話が放送済みの現時点でも明らかにされていないことが多い。ここでは、すでに放送されているエピソードを元に、乃木の人物像をまとめていきたい。

★どうやら別人格がいるらしい

 本作の主人公を語る上で外してはいけないのが“もう1人の乃木”の存在だ。第1話の序盤、誤送金事件解決のために中央アジアのバルカ共和国へ送られた乃木。手がかりが掴めずホテルの部屋で途方に暮れてしまう彼の脳内に響くのは、厳しい口調で叱ってくるもう1人の自分の声。乃木がお人好しでどこか頼りなさそうに見える反面、もう1人の乃木は口調も強気。劇中では2人の乃木が口論するというシュールな光景も。

 このもう1人の乃木は第1話以降も頻繁に現れ、言葉は乱暴ながらも乃木に助言を与え、一緒に問題を解決しようともする。


 第3話では、乃木がもう1人の乃木に対して“F”と名前のようなもので呼びかける姿が描かれた。しかし、そのFが乃木の別人格なのか、はたまたイマジナリーフレンドなのか、その実態は明らかにされていない。

★高校からの親友がCIA

 そんなFは第1話の序盤で、途方に暮れる乃木に対して「アイツに頼め。いただろ? アメリカのお友達が」と語りかける。促された乃木はスマートフォンを取り出し電話をかけると、その相手は高校時代からの親友・サム(マーティン・スター)。乃木が流暢な英語で誤送金事件について説明すると、サムは面倒くさがりながらも調査することを約束する。

 サムはなんとアメリカ合衆国中央情報局、いわゆるCIAの職員。“得体の知れない組織”について追っていたというサムは、日本から誤って送られた多額の金が、バルカ共和国でどのように流れていったのかを詳細に調べ上げて乃木に伝える。乃木が感謝すると、サムは「たった1人の親友のためならお安い御用だ」と答えるのだった。

 日本人商社マンとCIA職員。2人がどんな経緯で出会い親交を深めていったのか。今後のストーリーの中で2人の過去が詳らかになることにも期待したい。


★唯一の特技のクセがすごい

 トラブルが重なり砂漠をさまようこととなった乃木は、気を失っていたところを現地住民の少女・ジャミーン(ナンディン-エルデネ・ホンゴルズラ)とその父親・アディエル(ツァスチヘル・ハタンゾリグ)に助けられる。

 パンを焼いて乃木をもてなそうとするジャミーンだったが、計量器が壊れているのか材料の重さがうまく量れない。すると乃木は計量器の上に乗っていた材料を手の上に乗せて目をつむってみせる。「ちょっと多いかも」とつぶやきながら材料を少しずつ減らしていくと、手応えを掴んだのか「これで500g」と自信をのぞかせる。

 驚いたアディエルが「手で量れるのか?」と聞くと、乃木は「唯一の特技です」と笑顔で答え「1kgまでならほぼ10gの誤差」と胸を張ると、無事にパンも焼けてジャミーンは大喜びする。

 “唯一”にしてあまりにもピンポイントすぎる乃木の特技。今後の展開次第では、再びこの特技が炸裂してピンチを切り抜けるというシチュエーションも訪れるかもしれない。

★「いろいろあって…」両親を幼い頃に亡くす

 バルカ共和国で爆破に巻き込まれた乃木は、自分のことを追っていたという公安刑事・野崎(阿部寛)と行動を共にする。日本大使館へと向かう道すがら、野崎から「両親は?」と聞かれた乃木は「いません。小さい頃に亡くなってしまって」と答える。「事故かなんかか?」と追及する野崎に、乃木は「まぁ色々あって…」と言葉をにごす。

 乃木と両親の関係、そして彼自身の過去を知る手がかりになりそうなのが、劇中で何度も描かれている乃木のフラッシュバック現象だ。
乃木の記憶と思われる映像には、林遣都扮する男性と高梨臨演じる女性、そしてぬいぐるみを抱いた男の子が登場。第1話では、荒野でヘリに助けを求めるものの、ヘリが3人の頭上を飛び去ってしまう光景が映し出された。また第2話では3人が賊のような集団に車で追われる様子に加えて、捕らえられた男の子が、牢屋のような場所に入れられる姿も描かれている。

 眠っていた乃木がフラッシュバック現象を体験しながら「お父さん…お母さん…」とうなされるシーンもあるため、彼が幼少期に耐えがたいトラウマを負っていることが想像できる。

★お参りが日課 信心深い一面も

 第3話でついに日本へ戻ってきた乃木。しかし帰国早々、誤送金事件の犯人だと疑われ休む間もなく会社へ連行される。たっぷり事情聴取された乃木は、調査担当者を連れて帰宅しようとするが、家にたどり着く前に神田明神へ。お参りをしてから自宅へ向かう。

 誤送金事件を調査する業務監査部の河合(渡辺邦斗)が「最後は神頼みですか?」と嫌味を言うと、乃木は「毎日欠かさず行う習慣なので…」と答えつつ参道の脇にある小さな祠に目を移す。

 また第1話でイスラム教の施設に立ち寄った乃木は、礼拝堂に入ると慣れた様子で「アッラーフ・アクバル」と唱えて祈りを捧げる。周囲の人が不思議がっていると、乃木は「イスラム教ではこうすると学びました」と答えるのだった。

 神社へのお参りが日課で、イスラム教の礼拝方法にも精通している乃木。
ただ信心深いのか、実は他に理由があるのか気になるところだ。

 エピソードを重ねるごとに思わず考察したくなる謎を与えてくれる本作。大きな謎の1つでもある主人公・乃木が今後どんな素顔を見せてくれるのか、ドラマの展開から目が離せない。(文:スズキヒロシ)

 日曜劇場『VIVANT』は、TBS系にて毎週日曜21時放送。

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