9月1日より全国公開となる映画『ウェルカム トゥ ダリ』に出演しているエズラ・ミラー。本作では、20世紀を代表する偉大な芸術家〈サルバドール・ダリ〉の若かりし頃をエネルギッシュに演じ、強烈なインパクトを残している。

今回はそんなエズラの俳優デビュー15周年を記念し、これまで演じ注目を集めた個性派キャラクターと、ターニングポイントとなった出演映画を振り返る。

【写真】まだ幼い! 『少年は残酷な弓を射る』のエズラ・ミラー

■映画『少年は残酷な弓を射る』(2011)

 英国女性作家文学賞の最高峰、オレンジ賞を受賞したイオネル・シュライバーの衝撃作を映画化。ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラーの3人の圧倒的な演技と、過去と現在を交錯させながら、母と息子のドラマを圧倒的な緊張感で描き出している。我が子に愛情を抱けない母親を悪魔のような狂気で崩壊させる、残酷さと美しさと妖しさを併せもつ息子ケヴィンをセンセーショナルに演じたエズラは、当時ハリウッドの新星として大きな注目を集めた。

■映画『ウォールフラワー』(2012)

 ベストセラー青春小説を原作者自らのメガホンで映画化。高校のスクールカースト最下層に位置付けられたチャーリーが陽気なパトリックとその妹サムと出会ったことをきっかけに恋や友情、挫折といった青春の喜びや痛みを知っていく姿を描いた本作でエズラ・ミラーは悩める恋心を隠している同性愛者の先輩パトリックを好演。
チャーリーを孤独から救い出す先輩でありながら、同時に誰よりも孤独で、かなわない恋に悩む様子を繊細に演じ、主役を脅かすほどの存在感が話題となった。

■映画『ボヴァリー夫人』(2014)

 原作は発表当時、そのセンセーショナルな内容から風紀紊乱(ふうきびんらん)の罪に問われた文豪フローベールの最高傑作とも言われる「不倫小説」の金字塔「ボヴァリー夫人」。エズラは主人公の不倫相手レオン・デュピュイ役で出演し、とにかくその美貌が際立つ作品として評判を呼んだ。

■映画『プリズン・エクスペリメント』(2015)

 学生たちを看守役と囚人役に分けて刑務所生活を擬似体験させるという、アメリカの大学で実際に行われた心理実験を題材にした実録サスペンス。エズラは看守役の命令や暴力のエスカレートに耐え兼ね、気が狂ったふりをして実験から脱出することを目論む囚人役の1人・ダニエルで出演。

■映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)/映画『スーサイド・スクワッド』(2016)

 ワーナー×DCのヒーロー映画で不朽のヒーロー『スーパーマン』をリブートした『マン・オブ・スティール』の続編で、スーパーマンに加え、DCコミックを代表するヒーロー「バットマン」も登場する話題作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で超高速で移動する能力を持つ、世界最速の男フラッシュことバリー・アレン/フラッシュ役でカメオ出演。
当時、ユーモアとフレッシさを兼ね備えたエズラ・ミラーの個性にマッチしたキャラクターが注目を浴びた。同年、DCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦うアクション『スーサイド・スクワッド』(2016)でも、引き続きバリー・アレン/フラッシュ役で出演。

■映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016)

 『ハリー・ポッター』で知られるウィザーディング・ワールドシリーズ待望の新作でエズラ・ミラーは、エディ・レッドメイン演じる主人公ニュート・スキャマンダーが唱えた呪文をきっかけに姿を現す、内向的で、気が弱く、養母から虐待を受けている青年クリーデンス・ベアボーン役で出演。陰うつな雰囲気もあいまって強烈な印象を残し、これまでは映画ファン注目の新星止まりだったが、話題作ということもあり、一気に知名度が上昇し、人気スターの仲間入りを果たした。以降、エズラ・ミラーは『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(2018)、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』(2022)とシリーズにも同役で出演を果たしている。

■映画『ジャスティス・リーグ』(2017)

 『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)、『スーサイド・スクワット』(2016)に続き、バリー・アレン/フラッシュ役で出演。
これまで脇役での出演だったが、本作では“ジャスティス・リーグ”の主要メンバーのバットマン(ベン・アフレック)、ワンダーウーマン(ガル・ガドット)とともに“ジャスティス・リーグ”の主要メンバーに仲間入りを果たした。エズラ・ミラーの元来持つ性格にマッチした、明るく無邪気だがちょっと気弱なフラッシュが大活躍している。

■映画『ウェルカム トゥ ダリ』(2022)

 エズラ・ミラーが30代に突入した2022年に製作された本作。20世紀最大の芸術家〈サルバドール・ダリ〉の奇想天外な人生を描いた本作で、エズラ・ミラーはベン・キングズレー演じる〈ダリ〉の若き日を演じている。これまで大人と青年の狭間のようなさわやかさも醸し出していたが、本作では一転大人の色気を醸し出し、将来の妻・ガラとの恋愛と奇想天外なアイデアで励む創作活動の様子をエネルギッシュに演じている。

■映画『ザ・フラッシュ』(2023)

 映画『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイド・スクワッド』『ジャスティス・リーグ』を経て、バリー・アレン/フラッシュが主役の作品。
派手なアクションを繰り広げながら、主人公バリー・アレンの心の葛藤と成長を描くといった、精細でエモーショナルかつ個人的なテーマを描いた本作は、ドラマ部分とエズラの演技が評価された。本作はエズラにとっては肝いり主演作だったが、この前後でいくつかのお騒がせ行動が発覚。劇場公開が危ぶまれる事態に陥ったが、エズラが謝罪をし、米公開時には久々にファンの前に姿を現したことでも話題となった。

 昨年ついに30代に突入したエズラ。個性的で斬新なファッションセンスやヘアスタイルなど常に自己表現を大切にし、他の誰とも違う個性を重視しながら、インディペンデントからハリウッド大作、さらには主役から脇役まで、カメレオンにように役を演じている彼。今後のさらなる飛躍にも注目したい。


 映画『ウェルカム トゥ ダリ』は、9月1日より全国公開。