加入から約7年半、日向坂46の卒業を発表した一期生の潮紗理菜は、グループの「聖母」だ。三期生の山口陽世を笑顔で見つめる視線は、優しさと温かさに満ち溢れている。

12月9日には、ラストステージとなる「卒業セレモニー」を開催。2ndアルバム『脈打つ感情』の活動をもって卒業する潮が次のステップへ進もうと決めた理由、そして、先輩の決断を聞いた山口の心境とは。2人に尋ねた(インタビュー前後編の後編)。

【写真】潮紗理菜の卒業発表を聞いて「誰よりも涙していた」という山口陽世 2人の全身カット

■潮の卒業発表ではクールな山口が意外なリアクション

――グループの前身、けやき坂46への加入から約7年半。潮さんが、卒業を決断した理由は?

潮:アルバムリード曲「君は0から1になれ」の歌詞にある通り、グループの活動は「何も見えなくなるくらい 夢中になれたら幸せ」でしたけど、その頂点に達したのが一番大きいです。走っている最中は「幸せ」に気付けないじゃないですか。でも、振り返ってみて、つらさや苦しさもすべて「幸せ」と思えたのが、このタイミングだったんです。二期生はほぼ同期ですけど、背中を追いかけるほどになった三期生の成長もありますし、東京ドーム公演(「3周年記念MEMORIAL LIVE~3回目のひな誕祭~」)を終えて、自分と向き合う中で少しずつ気持ちが固まっていきました。

――メンバーに伝えたのは、いつでしょう?

潮:「君は0から1になれ」のフォーメーション発表直前です。

山口:卒業の雰囲気を一切出さずに発表されたので、誰もが「え、紗理菜さん!?」となったと思います(笑)。聞いたときは、驚きと思考停止が同時に来ました。

――時間の経過と共に、受け入れられたのかなと。


山口:寂しさはありますけど、自分ではなく、ほかのメンバーのことを考えて決断したのかと思うときがあるので。今は、紗理菜さんの優しさをかみ締めながら一緒に活動しています。

潮:発表したとき、(山口が)誰よりも涙を流してくれたんです。心配するくらい、ワンワン泣いていて…。

山口:ダメです、バラさないでください!

――(笑)。隠しておきたかった?

山口:…隠しておきたかったです(苦笑)。

潮:ビックリしたから(笑)。でも、普段は涙を見せない子が私のために涙してくれる姿を見て、ここまでの道のりは間違いではなかったと自分を認められたし、救われました。ほかのメンバー、スタッフさんも「寂しい」と伝えてくれて、幸せです。

――「卒業の雰囲気」はなかったと山口さんが言っていましたが、潮さんは、メンバーに相談しなかったんですか?

潮:しなかったです。決断した以上は伝えなければいけなかったけど、迷っている段階で、誰かが寂しさを抱えてしまうのが嫌だったんです。卒業はあくまでも私情で、気を遣わせてしまうのも嫌だったので、相談するのは違うなと思いました。


――その思いから、同期にも相談していなかったんですね。

潮:そうです。でも、発表後は「嫌だ」と言ってくれたし、つい最近も「取り消してもいいんだよ?」と言われました。笑いに変えて伝えてくれるのが、一期生らしさで。特に、みーぱん(佐々木美玲)はしんみりした音楽を聴きながら「(卒業を)想像して寂しくなっちゃった…」と泣いていたり、「(卒業後に)ストーカーするからね」と冗談まじりに言ってくれたりして、うれしさをかみ締めています。

■「日向坂の聖母」として、メンバーを包み込んできた

――卒業を決めた潮さんは「日向坂の聖母」と称されています。

潮:そんなことはなくて。そう呼ばれても、困っちゃう(笑)。

――(笑)。後輩の山口さんが「聖母」だと感じた経験は?

山口:同期の森本茉莉と出演した舞台『幕が上がる』の終幕後、紗理菜さんも同時期に舞台(『レ・ミゼラブル~惨めなる人々』)に出演していたので、3人で打ち上げをしたんです。そこで、紗理菜さんが「私は三期生がずっと好きだし、ずっと味方だよ」と愛を伝えてくださって、真剣な話をする機会が珍しかったのもあり、うれしかったです。

――周囲との接し方で、潮さんが大切にしていたことは?

潮:1人で抱え込まないでほしいという気持ちです。
私は過去に、自分を見失ってしまった時期もあったんですけど、もう一度前を向けたのはそばにいてくれたメンバーのおかげだったんです。同期と後輩の「架け橋に」と考えたのもその延長でした。後輩のみんなは礼儀正しく謙虚で、いい子たちばかりですけど、先輩後輩の関係性に気を取られて活動が楽しめなくなるのは嫌だったので、自分にできることをと思っていました。

――まさしく「聖母」として、包み込んでいたのかなと。卒業発表時、ブログでは約7年半の活動は「自分探しの旅」だったと述べていましたが、わずかでも「自分」は見つかりましたか?

潮:見つかって、価値観が1周しました。よく表れているのは、髪型です。加入当時、眉毛すら整えたことのなかった女の子が、いろいろともがいて、小顔に見せようとスプレーで前髪をおでこに貼り付けていた時期もあって…(笑)。でも、髪型は加入当時に戻りました。活動では、もろくなって強くなってを繰り返し、加入当時とのハイブリッドになれた今の自分が一番好きです。

――卒業後の活動は「ゆっくりと考えたい」と述べていました。

潮:何も決まっていないんです。ぼんやりとは考えていて、振り返るとけやき坂46のオーディションを受けたのは偶然で、新たなものに挑戦する勇気や度胸を学んだ約7年半の経験も生かしたいので、ふれたことのない世界に飛び込んでみたいです。


――未来は明るそうです。そんな潮さんとグループで過ごせる時間は残りわずかですが、山口さんが一緒にやっておきたいことは?

山口:全国ツアー(「Happy Train Tour 2023」)も続いていて、あっという間に紗理菜さんの卒業が来てしまうのかなと思うんです。今は、メンバー同士だから頻繁に会えているけど、プライベートでは毎日会えなくなると思うので、スマホのフォルダに紗理菜さんのいろんな表情を残せれば。会えなくなったらちょっかいもかけられないですし、たくさんちょっかいをかけて後輩らしく甘えたいです(笑)。

――(笑)。ちなみに、レギュラー番組『日向坂で会いましょう』(テレビ東京/毎週日曜25時5分)では、山口さんが後輩を自宅に招き入れる「山口家連れ込み隊」が話題になった回もありました。潮さんは、行ったことは?

潮:ないので、行きたいんです。

山口:ぜひ(笑)。

潮:それこそ、見たことない景色ですし、こんなすてきな子が生まれ育った場所に行ってみたいです。

山口:え! 実家ですか?

潮:あ、実家に連れ込んでほしい(笑)。

――(笑)。YouTube「日向坂ちゃんねる」では山口さんが、同郷で鳥取県出身の四期生・平尾帆夏さんと実家を訪問していましたよね。
ただ、レギュラー番組では山口さんの現在の「自宅」というお話で…。


潮:自宅は行かなくても大丈夫かな(笑)。今は、逆に「家に来る?」みたいな感じです。実は、プライベートでメンバーを自宅に上げたことがないんです。気を遣わせてしまうと悪いので…。でも、卒業がなければ誘うきっかけもなかったし、逆に「よかったら来る?」と私が招きたいです!

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:上野留加)

 日向坂46、2ndアルバム『脈打つ感情』は11月8日発売。

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