マーティン・スコセッシが製作総指揮を務めたエリザベス・モス主演映画『Shirley(原題)』が、邦題を『Shirley シャーリイ』として今夏公開されることが決定。シーン写真1点が解禁された。



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 本作は、スティーブン・キングも影響も受けたと言われる怪奇作家シャーリイ・ジャクスンの伝記を初映画化した、現実と虚構が交錯する幻惑の心理サスペンス。監督は、世界各国の映画祭で高く評価された『Madelines Madeline(原題)』(2018)や、A24とApple TV+が共同制作した『空はどこにでも』(2022)などで知られる奇才ジョセフィン・デッカー。彼女の初長編作『Butter on the Latch』(2013)に惚れ込んだという巨匠マーティン・スコセッシが製作総指揮に名乗りをあげ、2020年のサンダンス映画祭でUSドラマ部門審査員特別賞を受賞した。

 シャーリイを演じたのは、『透明人間』『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』などで知られるエリザベス・モス。そのほか、『シェイプ・オブ・ウォーター』『君の名前で僕を呼んで』などに出演、名バイブレーヤーとしても評価の高いマイケル・スタールバーグ、オデッサ・ヤング(『グッバイ!リチャード』)、ローガン・ラーマン(『ウォールフラワー』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』)ら一流キャストが集結した。

 サンダンス映画祭、ベルリン国際映画祭、フロリダ映画批評家協会賞ほか世界中の映画祭で高い評価を受け、メディアからは「美しい傑作」(AwardsWatch)、「心を掴んで離さない」(The Playlist)、「甘美で官能的」(The Hollywood Reporter)、「夢の世界へ誘う。
エリザベス・モスの驚異的な演技」(/Film)など、絶賛が寄せられている。

 1948年、『ニューヨーカー』誌上に発表した短編「くじ」が一大センセーションを巻き起こした後、新しい長編小説に取り組んでいたシャーリイ(エリザベス・モス)は、なかなかスランプから抜け出せずにいた。小説の題材になったのは、ベニントン大学に通う18歳の少女・ポーラが突如消息を絶った未解決の失踪事件。同じくベニントン大学教授である夫のスタンリー・ハイマン(マイケル・スタールバーグ)は、引きこもって寝てばかりいるシャーリイの機嫌をとって執筆へ向かわせようとするもうまくいかない。

 そんな2人のもとへ、一組の夫妻が居候としてやってくる。文学部でハイマンの補佐として職を得たフレッド(ローガン・ラーマン)は、妻のローズ(オデッサ・ヤング)と共にバーモント州の学園都市へ移住を計画していた。
「新居が見つかるまでの間、無料で部屋と食事を提供する代わりに家事や妻の世話をしてほしい」とスタンリーに半ば強引に言いくるめられた夫妻は、何も知らずにシャーリイとスタンリーと共同生活を送ることに。

 当初は他人が家に上がり込むことを毛嫌いしていたシャーリイだったが、ひどい扱いを受けても懲りずに自分の世話を焼くローズを通じて、次第に執筆のインスピレーションを得るようになる。一方、ローズはシャーリイの魔女的なカリスマ性に魅入られ、いつしか2人の間には奇妙な絆が芽生えていく。しかし、この風変わりな家に深入りしてしまった若い夫妻は、やがて自分たちの愛の限界を試されることになるのだった…。

 スーザン・スカーフ・メレルによる、怪奇作家シャーリイ・ジャクスンの伝記『Shirley』(未邦訳)に現代的で斬新な解釈を加えて練り上げた本作は、シャーリイの小説だけでなく、配偶者で文芸評論家でもあったスタンリーとの数百通の手紙をもとに制作。作家自身のキャラクターを描きながら、まるでジャクスンの小説世界に迷い込んだかのような、幻惑的な映像が展開する。


 デッカー監督は、シャーリイ・ジャクスンについて「ある批評家か伝記作家が<シャーリイは政治的な作家ではない>と指摘していたが、しかしシャーリイは私的なレベルにとどまりつつ政治を意識していたと思っている」とコメント。そして「だからこそ彼女の作品は今でも響き続けるのだ。彼女の作品は非常に人間的だから時代を超えて読まれている。シャーリイは非日常的な設定、心理描写、あるいは潜在意識に訴える巧みなリズムを使って人種差別、階級差別、性差別と闘っていたのだ」と、その魅力を語っている。

 脚本を手掛けたサラ・ガビンズは、長年シャーリイ・ジャクスンが文学とかけ離れたホラー作家として扱われてきたことについて異議を唱える。「彼女は数多くの短編や長編を残したが、ホラー作品によくある吸血鬼やゾンビや幽霊や神話上の怪物は登場しない。
その代わり日常のありふれた風景の中に恐怖を見出すのがシャーリイの小説の特徴でもある。<人間こそ恐ろしい怪物であり、私たち自身の精神が血に飢えた悪魔的な妖怪であり、私たちの社会はのどかなパーティーを楽しみつつ石打ちの刑にも加われる気まぐれな人々の集まりである>」と述べている。

 今回解禁されたシーン写真は、シャーリイがタバコをふかしながら、不穏な笑みを浮かべる姿を切り取ったもの。知的さの中に闇が垣間見える、印象的なカットとなっている。

 映画『Shirley シャーリイ』は、今夏全国公開。