主人公・まひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)の身悶えするほどの切ないラブストーリーと朝廷を舞台にした陰惨な権力闘争劇が並行して描かれる異色の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合ほか)。番組スタートから3ヵ月の時点で放送されたエピソードの中から、SNSで大きな反響を巻き起こした名シーンを選んで物語をプレイバック。

ここまでの展開をおさらいしてみよう。

【写真】「こんな大河初めて」“まひろ”吉高由里子&“道長”柄本佑のラブシーン

 本作は、平安中期に「源氏物語」を生み出した紫式部の人生を描く第63作目の大河ドラマ。のちに紫式部として「源氏物語」を執筆する主人公・まひろを吉高が演じ、柄本が紫式部の生涯のソウルメイト・藤原道長に扮する。2006年の大河ドラマ『功名が辻』や2018年の『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)を手がけ、“ラブストーリーの名手”として知られる大石静が脚本を担当している。

■第1回から波乱! 母・ちやはの悲劇に視聴者も衝撃

 平安時代中期、まひろは京で生を受ける。父・藤原為時(岸谷五朗)の政治的な立場は低く、母・ちやは(国仲涼子)と共に慎ましい暮らしを送っていた。
少女時代のまひろ(落井実結子)はのちに藤原道長となる少年・三郎(木村皐誠)と出会い、互いに素性を隠しながらも打ち解けあう。

 そんな中、為時は三郎の父親でもある右大臣の藤原兼家(段田安則)によって、のちに花山天皇となる師貞親王(伊藤駿太)の漢文指南の職を与えられる。為時が職を得たことを喜ぶちやはは、まひろを連れてお礼参りへ。その帰り道、まひろは馬で駆けていた兼家の次男・道兼(玉置玲央)と出くわす。気性の荒い道兼は、急に飛び出してきたまひろを怒りの形相で足蹴にする。その場に駆けつけたちやはは、道兼に「何をなさるのです!?」と言いつつも、まひろを座らせ「あなたも詫びなさい」と諭す。


 許しを乞うまひろの姿を見た道兼が何も言わずにその場を去ろうとすると、そばにいた従者は「道兼様を黙らせるとは肝の据わった女子でございます」とポツリ。この言葉を聞いた道兼は突然、従者が腰に提げていた刀を引き抜くと全速力で走り出して、背後からちやはの胸をひと突き。まひろの目の前で、ちやはは絶命してしまうのだった…。

 第1回から無慈悲にも主人公の母親が刺殺されるという急展開に、ネット上には「は?? え? 頭が追いつかん」「嘘でしょ!?」「1話から衝撃すぎる」などの反響が続出。その後も“ちやはの死”と“道兼の存在”は本作の重要なファクターとなっていく。

ゲスすぎる天皇に陽キャすぎる清少納言も 濃いキャラ続々の3ヵ月

■ゲスすぎる言動で大河ドラマの限界に挑んだ花山天皇

 ふてぶてしくも胡散くさい安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)や真面目で人望も厚いがどこか滑稽な藤原実資(ロバート・秋山竜次)など、続々と登場する個性派キャラクターも本作の見どころ。
その中でも、よく言えば奔放、悪く言えば“ゲスい”言動で視聴者の心をつかんだのが本郷奏多演じる花山天皇だ。

 花山天皇は第2回で、即位する前の東宮・師貞親王として本作に登場。為時が真面目に漢文を教える中、師貞親王は両足で器用に扇を開きながら、母親と娘の双方に“手をつけた”話を披露。東宮は不敵な笑みを浮かべながら、ただただ困惑する為時に向かって「よく似た親子で手応えも似ておる。どちらと寝ておるか分からなくなることもしばしばじゃ」と語る。

 そして第4回では、師貞親王が新たな帝に即位し、花山天皇が誕生。
女子好きで名高い花山天皇は藤原斉信(金田哲)の妹・忯子(井上咲楽)を妻に迎える。夜になり花山天皇は寝床に忯子を迎え入れて着物を脱がせると、帯で彼女の手首をゆっくりと縛っていく。その行動を黙って受け入れる忯子と、そんな彼女を潤んだ瞳でじっと見つめる花山天皇の姿が紗のかかった美しい映像で描出される。このシーンには視聴者も驚き「花山天皇、地上波でございますよ!」「え、これNHKだよね!?」「表現の限界に挑戦してる」などの声が相次いでいた。

 不適切にもほどがある言動でネットを騒がせつつも忯子を唯一の妻とした花山天皇。しかし第7回の冒頭で忯子が死去する急展開を迎えると、第10回では兼家の謀略によって出家させられ退位するという悲劇に見舞われてしまうのだった。


■ファーストサマーウイカが“陽キャ”な清少納言を体現

 「源氏物語」作者・紫式部と同時代を生きた才人として歴史に名を残している女性が「枕草子」作者の清少納言。本作では、のちに清少納言となるききょうをファーストサマーウイカが演じている。

 第6回ではまひろとききょうが初対面。まひろは父・為時と共に道長の兄・道隆(井浦新)が催した漢詩の会に招待される。到着した2人が会の始まりを待っていると、そこへ為時とも懇意な歌人・清原元輔(大森博史)とその娘・ききょうがやってくる。元輔と為時が互いに再会を喜ぶ中、会を楽しみにしているききょうは初対面のまひろに笑顔で「はぁ~胸が高まりますわぁ。
大いに楽しみましょうね、まひろ様」と無邪気に話しかける。まひろは少したじろぐものの、ワクワクしている様子のききょうに笑顔で応じる。

 その後、会が始まり、参加者がそれぞれに詩を披露。感想を聞かれたまひろが少し緊張した口ぶりで詩の感想について応えると、ききょうが横から「私はそうは思いません」と声を上げて自論を展開。戸惑うまひろにききょうが「そうじゃございません?」と同意を求めると、元輔は思わず咳払いをして娘をけん制するのだった。

 まひろとは正反対のキャラクターとして描かれたききょうに対して、ネット上には「清少納言は陽キャで、紫式部は陰キャ 解釈一致だわ~」「短い邂逅で2人の対比が浮き彫りになっていて面白い」「陰キャと陽キャの出会いが完璧な描写」といったコメントが集まっていた。

「言葉失う」美しすぎてネットもん絶のラブシーンも

■義賊・直秀の悲劇にまひろ&道長が大泣き

 本作の序盤をけん引したキャラクターといえば、毎熊克哉が演じた直秀を思い浮かべる視聴者も多いはず。直秀は町辻で風刺劇を披露する散楽一座のメンバーとして、まひろや道長に影響を与えていく。その一方で、貴族の屋敷に盗みに入っては貧しい人々へ施しを行う義賊でもあったのだ。

 第8回のラストシーンで検非違使によって捕らえられた直秀とその一味。第9回ではまひろと道長も彼の“正体”を知ってしまう。直秀に身分を超えた友情を感じていた道長は、彼を獄から救うために奔走。道長は検非違使のもとを訪ね、直秀らについて「早めに解き放ってもらいたい」と伝え、さらに「手荒なことはしないでくれ」と言いつつ“心付け”を渡す。

 その後、道長は直秀らが流罪を命じられたことや翌日の朝に出立することを知らされる。翌朝、道長はまひろを連れて直秀のもとへ。ところが直秀らは予定より早く獄を出されたようで、一行は葬送の地・鳥辺野へ向かっているという。直秀らの身に危険が及んでいることを心配した道長は、まひろと一緒に鳥辺野へ急行。しかしそこには、すでに処刑されて命を落とした直秀ら一行の姿があった…。

 まひろと道長が大泣きしながら亡くなった直秀を埋葬する姿が描かれると、ネット上は「あんまりすぎるわ」「ほんとに泣いちゃうつらすぎる」「直秀ロスになるよね…」などの投稿が多数寄せられていた。

■まひろ×道長の美しすぎるラブシーンにネットもん絶

 このドラマの最初の3ヵ月で最大のヤマ場となったのは、第10回で描かれたまひろと道長の“逢瀬”だろう。幼少期の運命的な出会いを経て互いに成長した姿で再会。身分の違いを理解しつつも恋心に抗うことができず、2人は惹(ひ)かれあっていく。

 第10回では情熱的な文のやりとりを重ねて、まひろと道長が夜の廃院で密会。道長はまひろを背後から強く抱きしめると「会いたかった…」とささやき情熱的な口付けを交わす。道長は「都を出よう」と駆け落ちを持ちかけるものの、まひろは「嬉しいけど…どうしたらいいのかわからない」と戸惑いを隠せない。家を捨てる覚悟を決めた道長に対して、まひろは都に留まるよう説得。道長には政治の中枢に上り詰めて、直秀のように不幸な最期を遂げる人がいなくなる世の中を作ってほしいと訴えながら「一緒に遠くの国には行かない。でも私は、都であなたのことを見つめ続けます」と伝えるのだった。

 そして2人は、月明かりに照らされながら廃院で身体を重ねる。まひろと道長が口づけを交わす様子が幻想的な映像で活写されると、この美しすぎるラブシーンに対してネット上には「こんなにも心が震える恋をここまで美しく描くか」「ドラマチック過ぎて言葉失う」「月に照らされ愛し合うのあまりにも綺麗」「こんな大河初めて」といった声が続出した。

 今後、2人の関係がどのように変化していくのかといった点や、道長が絶対的な権力を手にしていく道程、さらにまひろが「源氏物語」執筆へ至る経緯など、見どころが満載の本作。今後の展開からも目が離せない。(文:スズキヒロシ)

 大河ドラマ『光る君へ』は、NHK総合ほかにて毎週日曜20時放送。