10代に数々の青春ドラマや映画で注目を集め、今やシリアスからコミカルまで多彩な役柄で魅力を放つ役者として、幅広い活躍を見せる鶴見辰吾。今年12月には還暦を迎える彼だが、「ついこの間まで30代だと思っていたのに! こんなに早く60代が来るのかと…あっという間ですね」と穏やかな笑顔を浮かべる。
【写真】今年60歳とは信じられない! 鶴見辰吾、さわやかさは健在
◆大ファンのミュージカル『ビリー・エリオット』に参戦
映画、ドラマ、舞台など、あらゆる作品で存在感を発揮している鶴見。7月からは、バレエダンサーを目指すひとりの少年と、彼を取り巻く大人たちの姿を描いた映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)をミュージカル化したミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』に出演、ビリーのお父さん役を演じる。日本では2017年に日本キャストで初演され、2020年に再演が実現。今年、新たなビリーと共にパワーアップして再々演が行われるが、鶴見は2017年の初演を鑑賞し、「すごくいいミュージカルだった」と大ファンになったという。それだけに今回の参加は喜びもひとしおだ。
鶴見は「『観た方がいい』とすぐに妻にも勧めたくらい、どこを切り取ってもすばらしい作品だと思います。曲もいいし、家族の物語や夢に向かっていく心情など、描かれるテーマもとても感動的。大好きなミュージカルです。だからこそ今回、ビリーのお父さん役のお話があると聞いて『ぜひやらせてほしい!』と二つ返事でした」とにっこり。
主人公のビリーは、1年以上に渡る長期育成型オーディションを経て選ばれた、浅田良舞、石黒瑛土、井上宇一郎、春山嘉夢一が演じる。鶴見扮するビリーの父親は、当初は「バレエは女がやるものだ」と反対しながらも、次第に息子の情熱と才能に気づき、彼の夢を応援していくようになる。鶴見は「苛烈な戦いを勝ち抜いてきた子たち」と4人のビリーに敬意を表し、「僕らの仕事は、作品に入ったところから擬似家族のようになるもの。本物の家族を超えるような固い絆を築き上げていきたい」と期待たっぷり。
また小学生の頃から宝塚が大好きで、俳優としての原点は「宝塚」だという鶴見にとって、「今回共演者に宝塚出身の安蘭けいさんがいらっしゃるので、本当に自分の夢が叶ったよう。そう考えると本作のビリーは、かつての自分のような気もしますね」と喜びの多い作品となった。
◆優等生役に悩んだ10代
バレエ教室のウィルキンソン先生に才能を見出されたビリーは、先生や家族、地域の人々などたくさんの人に励まされながら、バレエの道へと突き進んでいく。12歳で俳優デビューを果たした鶴見だが、その道を進む上で自身を支えてくれた出会いや転機はあるだろうか?
「たくさんの方にアドバイスや励ましをいただいた」と切り出した鶴見は、「なかでもデビューの頃に同じ事務所だった、鈴木ヒロミツさんにはものすごく可愛がっていただいて。
鶴見が中学3年生の時に出演した『3年B組金八先生』第1シリーズでは、杉田かおる演じる同級生の浅井雪乃と恋に落ち、雪乃の妊娠・出産を経て、父親になる宮沢保役で、視聴者に衝撃と鮮烈な印象を残した。その後も順調にキャリアを重ねていた彼が「俳優を辞めようか」と悩んでいたのは、「10代の自分が抱いていた俳優像と現実とが、少し違っていた」からだという。
「1980年代はアイドル黄金期でアイドル映画も多く、ティーンエイジャーはすなわちアイドルみたいな時代でした。でも僕はやっぱり男の子なので、洋画のハードなアクション映画などを観ていて、そういう作品に出たかったんです」と苦笑い。
◆還暦の抱負は? 「目指すは元気なジジイ」
鶴見は、今年の12月には還暦を迎える。「どんどん、加速度的に年齢を重ねるのが早くなっていく!」と笑いながら、「60歳を過ぎたら、残された人生はおまけのようなものだと思って。なるべく皆さんが喜ぶことができたらなと思っています」と60代の抱負を吐露。
「自分で言うのもなんですが、俳優ほどいい職業ってないなと思うんです。いろいろな人生を体験できるし、たくさんの人と感動を共有できる。そしてエンタテインメントというのは、心の栄養になるものだと感じています。それを届けられるなんて、本当に幸せなこと。
『3年B組金八先生』で出会った仲間も同じように年齢を重ねてきたが、彼らには特別な絆を感じているという。「当時は今ほどルールも厳しくなかったので、みんなで23時過ぎまで撮影をしたりしていて。ライバルというわけではないけれど、最初は『どうなんだ』と様子を探っていたものが、みんな15、16歳くらいですから、あっという間に仲良くなりました。赤坂のTBSのGスタジオという、ベストテンなども収録しているスタジオでやっていましたが、撮影の合間には、赤坂界隈でみんなとインベーダーゲームをやったりして(笑)。学校もバラバラだったので『僕の学校はこうだ』なんて情報交換もできて、ものすごく楽しかった」と懐かしみ、「みんながビリーのように夢を持ってお芝居を始めて、あの番組で芸能界の入り口に立って。そのまま役者を続けた人もいれば、就職をして、それぞれ結婚をしたり、子どもを持ったり、今や孫がいる人までいる。出会いって面白いものだなと改めて思います」としみじみ。
きちんと幹事がいて今でも同窓会をやるほど仲良くしていると目を細めながら、「みんなもそうだけれど、とりあえず健康維持をしっかりしないとね。僕も、目指すは元気なジジイ。
Daiwa House presentsミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は、東京・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて7月27日~8月1日(オープニング公演)、8月2日~10月26日(本公演)、大阪・SkyシアターMBSにて11月9日~24日上演。