舞台やテレビで活躍中のふぉ~ゆ~と、ストーリー性のある演劇的な世界観をダンスとJ-POPで創り上げる、ダンスエンターテインメント集団「梅棒」がコラボした、舞台ふぉ~ゆ~ meets 梅棒『Only 1,NOT No.1』。歌舞伎町のホストクラブを舞台にした本作が、2022年の初演以来、3年ぶりに上演される。

今回、ふぉ~ゆ~の4人と、本作に初参加する紅ゆずるを加えた5人で座談会を開催。作品同様、わちゃわちゃ感たっぷりのトークが繰り広げられた。

【写真】歌舞伎町の女王を演じる紅ゆずる

◆梅棒さんと僕たちのエンターテインメントが詰まった肉弾戦競技(松崎)

 歌舞伎町の夜の歴史に残る、怒涛の1週間の物語を、20曲以上のJ-POPに乗せて贈る、ノン・バーバル(セリフなし)作の本作。秋田の高校で青春を過ごした塩崎犬太(松崎祐介)と新井場廻(越岡裕貴)は、卒業後に上京し、ホストクラブで働き始める。憧れのホストが店を去ってしまったことから、2人は新宿中を駆けずり回って、ヤクザの下っ端の益子龍(辰巳雄大)と、お笑い芸人の長島茶太郎(福田悠太)という仲間を見つける。ホストクラブ「WHITE KNIGHT」を盛り上げようと奮闘する2人の前に、「BLACK SHIP」という店がオープンし…。

――最初に今回の公演に向けた意気込みを聞かせてください。

福田:2022年の公演を終えたときに「ふぉ~ゆ~と梅棒が面白いことをやったらしいね。噂に聞いたよ」とたくさん声をかけていただき、関係者の皆さんからも「またやらないの?」と言われるような作品です。お客さまからも「もう一度観たい」という声がすごく多かったと聞いていますので、そうしたお声を受けて再演という運びになりました。今回、紅さんと佐々木(莉佳子)さんがカンパニーに入って新しい彩りを添えてくれるので、とても楽しみにしております。1人目なんで、これくらいのコメントでどうでしょう(笑)?

全員:あはは(笑)。


――バッチリです。では、次は辰巳さんお願いします。

辰巳:僕自身、梅棒さんの作品を観るのが大好きでした。観劇したときに漫画を読んでいるような感覚があって、セリフは聞こえないけれども、自分の中でどんどんその声が出来上がっていくんです。この作品も、自分の中でどんどん会話が進んでいき、ストーリーが広がっていくと同時に、余白の部分を妄想したり、想像しながら楽しめる作品になっています。タイトルにある「Only 1」は、物語の中で描かれるホストクラブ「WHITE KNIGHT」と「BLACK SHIP」が「Only 1」だという意味ですが、僕たちふぉ~ゆ~も「Only 1」ですし、お客さまも「Only 1」です。あなただけの楽しみ方をしていただけたらと思います。前回よりもさらに想像力を掻き立てられるよう演じていきたいと思います。

越岡:梅棒さんの作品は何作も観ているのでやってみたいという感覚はありましたが、前回、一緒にやってみてその難しさを痛感しました。でも同時に楽しさも知ることができたので、梅棒スタイルを知った上で挑戦できる今回、さらによくなった作品をお届けできるのではないかと今からワクワクしています。今回もシアタークリエを1番熱い劇場にしたいと思います。

松崎:梅棒さんと僕たちのエンターテインメントが詰まった肉弾戦競技だと思っています。
ノン・バーバルで、体一つで物語を紡いでいく。セリフがない分、体で表現していく物語を思う存分、楽しんでいただき、人それぞれ感じ方は違うと思いますので、いろいろな見方で観ていただけたらと思います。あなたの「Only 1」だけど「No.1」ではない。でも、もっともっと観たら「No.1」が見つかる。そんな作品になっていると思います。劇場で皆さんをお待ちしております。

紅:歌舞伎町の女王を演じさせていただけることがとてもうれしいです。私も宝塚歌劇団ではトップとして束ねるポジションにいましたが、ぽよっとした性格なので組織の中だったからできたことなのかなと思います。SNSで実際の女帝の方たちの動画を観るのが好きなのでそれを観て研究したいと思っていますし、歌舞伎町に行って勉強したいなとも思っています。皆さんがダンスでセリフのない物語を紡いでいかれる中、私は「こういうお芝居ですよ」と提示していく役目です。「どう感じても大丈夫」という自由を残しながら、歌舞伎町の女王としてのバックボーンを作って、皆さんのことをジロジロ見ながら存在したいと思います。

◆前回公演の思い出は「梅棒名物“氷バケツ”」

――2022年の公演の思い出を教えてください。


福田:みんなの運動量がすごいというのが、最初に出てくるキーワードです。まつ(松崎)とこっしー(越岡)は物語の冒頭から出ていて、福田と辰巳は中盤あたりから出てくるキャラなんですよ。なので、僕たちが出る頃には2人がヘトヘトになっている状態で(笑)。それくらいの運動量です。僕たちも最終的にはヘトヘトになるんですが、そうなると2人はどうなってるの?と。カンパニー全員がヘトヘトになっていくので、青春を感じるところもあります。そういう意味でも熱くなった舞台という思い出です。

辰巳:思い出はありすぎますが、名古屋公演で(作・演出を担当する梅棒の伊藤)今人さんが茉莉花を演じたことが一番印象深かったです。前回は、綺咲愛里さんが茉莉花を演じていたんですが、名古屋の大千穐楽の日、体調不良で出られなくなってしまって。それで、綺咲さんの悔しい思いを汲みつつ、休演ではなく、今人さんが茉莉花を演じるという選択をしました。あれはすごかったです。茉莉花は、僕が恋をする相手役なのですが、それまでは茉莉花をお姫様抱っこするというシーンが、僕が今人さんにお姫様抱っこされるシーンになり(笑)。
会場も盛り上がって、熱気がすごかったです。こうして最後まで走り抜けるのかという感動もありましたし、梅棒さんの真骨頂を見たと感じました。今人さん、めちゃくちゃ可愛かったですよ。

――今人さんの茉莉花に恋しましたか?

辰巳:しっかりしました。かわいくて。でも、それはみんなで作り上げてきたものがベースにあって、作品への信頼感が全員にあったからこそできたのだと思います。強い結束力のあるカンパニーでした。

越岡:本番の話ではないですが、梅棒さんの作品を観に行って楽屋に通してもらうと、みんな氷バケツに入っているんですよ。運動量が多いので、終わった瞬間に氷バケツに入ってアイシングするんです。前回、僕たちもその経験ができたことがうれしかったです。氷バケツを用意してもらって。

辰巳:氷バケツ待ちの行列ができるんですよ。


越岡:そうそう、ありましたね。

福田:水もめちゃくちゃ飲むしね。日比谷中の水を飲んだから、日比谷は水不足だったと思う。

松崎:飲んだね(笑)。それくらい使っていたよ。

――松崎さんはいかがですか?

松崎:前回の公演をやっていた時期、僕たちは『SHOCK』に出演していたので、基礎的な体は出来上がっていたんですよ。あれだけ踊れるのは、やっぱり『SHOCK』でスタミナがついたからだと自負しています。今回、紅さんと佐々木さんとは初めましてですが、お2人にもすごく魅力を感じていますし、早く稽古をしたいです。ということで、体のケアが大事です。そして、健康第一。万全な体で、100パーセントの形でステージに立とうという気持ちです。

辰巳:松崎さん? 質問内容が前回の思い出です。
意気込みではなく、思い出(笑)。

松崎:ああ、前回の思い入れを話しちゃった。

辰巳:今回の思い入れでもないんだ(笑)。前回、そういう気持ちで臨んだと。

松崎:はい、前回の思い入れです。じゃあ、今年はどうなのって話ですね? それは観にくれば分かります。

全員:あははは。

――松崎さんは氷バケツはいかがでしたか?

松崎:僕、寒いのが苦手なんですよ。サウナに入った後も水風呂には入れないんです。入れます?

紅:入れないんですか? 私、大好きです。名古屋に、有名なサウナがあるから名古屋公演のときにみんなで行きましょうよ?

越岡:いいですね、みんなで行きましょう!

――紅さんは、2022年の公演をご覧になってどのように感じましたか?

紅:めちゃくちゃハードだなと思いました。始まってすぐにこれはすごいと。ダンスをしているとどうしても感情が観客に伝わりにくいものですが、それが全て伝わってきたんです。人気公演だとお聞きしているので、そこに入らせていただくことは大変光栄なことだと思いますし、心して挑みたいと思っております。そして、サウナに行きたいです(笑)。

◆「“面白い人”枠として4人に負けないように修行を重ねたい」(紅)

――ふぉ~ゆ~の皆さんはすでに打ち合わせも始まっていると聞いていますが、前回からさらにブラッシュアップしたいと考えているところを教えてください。

辰巳:梅棒さんの作品の再演を観に行ったときに、同じ作品でも時を経ていろいろな変化があると感じたので、僕たちも今回、変わる部分もあると思います。新曲を増やしたいというご提案もいただいておりますので、きっと同じ作品にはならないと思っています。それから、前回は稽古が始まって1、2週間は梅棒のスタイルに馴染むことに時間を使ったんですよ。今回は、梅棒さんのスタイルを知った上で始められるので、必然的に前回よりも役へのアプローチは深くなるのではないかと思います。横にいる3人が変われば、自分も変わるので、そういう意味でもみんなを通してこの作品を観るというのも楽しみです。

福田:ノン・バーバルな作品で、セリフがないとは言っていますが、それぞれが心の中では自分たちで作ったセリフを話しながらお芝居をしているので、前回は稽古でそれを理解して馴染むまでに時間がかかりました。セリフを話さないのに話している気持ちになるというのに時間がすごくかかったんです。そういう意味で、今回は飛び級できています。もしかしたら、もう2回目なので、ちょっと声が聞こえてくる可能性もありますよね。お客さんが「あれ? なんで聞こえているんだろう」という現象になるかもしれません。それくらい精度が上がると思うので、第六感的なものが溢れてしまうかもしれない。新しい能力を手に入れたいというくらいの気持ちで挑みたいと思っています。

辰巳:トーンだけ真面目に話しているけど、途中から楽しくなってきてたでしょう?

福田:いや、最初から。

辰巳:最初からは気づけなかったわ(笑)。

越岡:あれ? 質問なんだっけ?

辰巳:打ち合わせとか始まっていると思うけど…。

福田:今回はどんな超能力をゲットしたいですか?

越岡:なるほどね。

辰巳:なるほどじゃないよ(笑)。違うよ。

越岡:でも、2人がもう大体話したので、僕は裏話しをしちゃおうかな。前回、僕のスーツが赤っぽい色だったので、公演を重ねていくうちに汗ジミが目立つようになったんですよ。なので、途中からペットシーツが仕込まれました。

辰巳:そうだった(笑)。

越岡:でも、今回はそれを知ってくださっているスタッフさんがいるので、最初からペットシーツを貼っています。

福田:もう稽古場からペットシーツでいいよね。本番は衣裳の中につけるけど、稽古はペットシーツ。

辰巳:あとは、前回は急遽ペットシーツを使ったから1社のメーカーさんしか試せていないので、どのペットシーツがこっしーの汗と相性がいいのか試さないと。

越岡:今回、いろいろと検証していきたいと思います。

――ありがとうございます(笑)。松崎さんからもお願いします。

松崎:打ち合わせをする段階では、この曲がいいんじゃないかとか、この曲が合っているなとかいろいろと想像するんですが、振り付けでも曲の印象は変わってくるので、前回ご覧になった方も、今回初めて観る方も絶対に面白い作品になっていると思います。曲が変わったことによって感じ方も違うと思いますし、自分の中でもさらに世界観が広がったことを感じています。

――紅さんはこうしたお話を聞いて、改めて本作にどんな意気込みがありますか?

紅:普段、こうした場ではきちんとしたことを言わなくてはいけないなと気負ってしまうのですが、今回はその必要が本当にないんだなと感じています(笑)。皆さん、すごくきちんとしたことをおっしゃいつつも、どこかで面白いことを言ってくださるんだろうと期待してしまう自分がいて。私も“面白い人”枠ではあると思いますが、「今日は皆さんに食われているな、私はまだまだだな」と思っているので、そうしたところも修行を重ねていきたいと思っています。

◆ふぉ~ゆ~&紅ゆずるが明かす「ここだけは負けたくないところ」

――本作ではホストクラブの激烈なバトルが描かれますが、皆さんが「ここだけは負けたくない」と思っているところは?

福田:僕は耳の形。みんなと比べたら特殊なんですが、イヤとは言わせない。耳だけに。

辰巳:僕はレギュラー番組のテロップの数です。文字に起こされるコメントは誰よりも多く残したい。テロップで一番になりたいと思っています(笑)。

松崎:水拭きです。やればやるだけ、水拭きがどんどんうまくなっているんですよ。床の雑巾掛けは誰にも負けないと思います。

越岡:掃除を始めたら大掃除を始めてしまうくらいの熱意が出ることかな。掃除が好きなわけではないんですが、一回やり始めちゃうと止まらないんですよ。

紅:私は水風呂の時間です。水風呂は勝てる自信があります。

松崎:最長はどれくらいですか?

紅:10分以上入れます。

ふぉ~ゆ~:ええっ! すごい!

紅:女子の方は割と温度が高いんです。なので、いけます。サウナが好きなので、20年以上通っていて、サウナにしっかり入って、水風呂に入って、整うというサイクルを行っています。最近はブームになっていますが、ようやく(世間が)追いついてきたかと思っています(笑)。

(取材・文:嶋田真己 写真:米玉利朋子[G.P.FLAG inc])

 ふぉ~ゆ~ meets 梅棒『Only 1,NOT No.1』は、7月13日~8月3日に東京・シアタークリエ、8月9日・10日に愛知・岡山鋼機名古屋公会堂で上演。

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