A24製作の映画『テレビの中に入りたい』が、マーティン・スコセッシ監督の“観てほしい87本の映画”に選出。あわせて、ジェーン・シェーンブルン監督の“創作の源”が明らかになるコメント、ダークでビビッドな本作の世界観が散りばめられた場面写真が解禁された。
【写真】魅惑の映像世界が広がる『テレビの中に入りたい』新場面カット(6点)
本作は、1990年代の米国郊外を舞台とした、自分のアイデンティティーにもがく若者たちの“自分探し”メランコリック・スリラー。A24と俳優エマ・ストーンが設立した映画制作会社フルーツ・ツリーが共同製作し、注目の新進気鋭ジェーン・シェーンブルンが監督を務めた。
郊外での日々をただやり過ごしているティーンエージャーのオーウェン(ジャスティス・スミス)にとって、謎めいた深夜のテレビ番組『ピンク・オペーク』は生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所だった。同じくこの番組に夢中になっていたマディ(ジャック・ヘヴン)とともに、2人は次第に番組の登場人物と自分たちを重ねるようになっていく。
このたび、本作が「感情的にも心理的にも強く訴えかけてくる、非常に感動的な作品」として、マーティン・スコセッシ監督が選ぶ“観てほしい映画87本”の1本に選出された。
2021年に発表された『We’re All Going to the World’s Fair(原題)』に続き、新進気鋭の監督として注目を集めるシェーンブルンによる「スクリーン3部作」の第2作となる本作。子供の頃、怖くて眠れなくなるほどなのに、どうしても見ずにはいられなかったテレビ番組を題材にした物語で、ジャンル映画としても緻密に作り込まれている。
彩度の高い鮮やかな35ミリ映像と、ぼやけたVHS映像が、90年代の空気感を見事に再現。ノスタルジーを好む現代のカルチャーや、フィクションに自分を重ねることの危うさを、極めて刺激的に掘り下げている。多層的に展開するストーリーはエキサイティングで魅力的ながら、アイデンティティや記憶の不確かさ、自分自身であることを受け入れる難しさといったテーマについても、深く豊かな“内なる対話”を観る者に提供してくれる。
また、トランス女性でノンバイナリーであることを公表しているシェーンブルン監督は、クィア映画の果敢な推進者でもある。本作に込められた、社会的に見せている自分と“本当の自分”のズレという主題は、誰もが少なからず持つ普遍的なジレンマの形だろう。
本作誕生の経緯、アイディアの源についてシェーンブルン監督は、「若かった頃に見ていたテレビ番組にどれほど囚われているかというアイデアは、何年も前から頭の中にありました。今になって考えると、私は画面の中に逃げて、土曜の夜のニコロデオンや火曜の夜の『バフィー~恋する十字架~』をひたすら待っていたんだと思います。ファンの世界が私にとって防衛機制だったんです。フィクションを通して自分を守ろうとするのをやめて、私の映画に出てくるキャラクターたちのように画面の向こう側へ行く。それには最も深く核心的な部分で現実を再評価することが必要です。この映画はそんな気づきから生まれました」と語る。
90年代にアメリカで子供時代を過ごした人なら、ニコロデオンの番組を見て、その影響を何日も引きずるような共通の体験があるだろう。きっと日本の子供たちにも、それに似たことがあったはずだ。
さらに「隠していた本当の自分を心の中に戻し、見なかったフリをして半分死んだような人生を続けるか、未知と対峙するか。それは完全な社会的死を意味するのも同然で、本質的に自分が知る現実の終わりでもあります。本作のジャンルの要素と中心的メタファーは、語りたいという私の願望から生まれました。
孤独なティーンエイジャーであるオーウェンとマディにとって、生きづらい現実世界を忘れさせてくれる唯一の居場所が、謎めいた深夜番組『ピンク・オペーク』だ。「子供やティーンエージャーにはちょっと怖すぎるかもしれませんが、だからこそみんな好きなんです。子供の頃、少し夜更かしして見るような、すごくショッキングだったり一生のトラウマになったりしそうな番組」とシェーンブルン監督は語る。
『ピンク・オペーク』は、一心同体のガールズヒーロー、イザベルとタラのふたりが、邪悪な月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”の遣わす怪物たちと戦いを繰り広げる物語。ダークかつポップな世界観で“憂鬱”を蹴飛ばしてくれるこの番組に、オーウェンとマディは夢中になり、やがて番組の登場人物と自分たちを重ね合わせるようになっていく。
解禁された場面写真には、イザベルとタラが手をつなぎ、頭を寄せ合いながら何かの儀式のようなポーズをとる姿や、首元にピンクの同じマークが怪しく光り輝く神秘的な劇中カットが含まれている。また、青い風船を持って夜のグラウンドを軽快に歩く、『ピンク・オペーク』に登場する怪しげなピエロのような“今週のモンスター”の姿も確認できる。
さらに、幼少期のオーウェンが初めてマディの部屋で『ピンク・オペーク』を目にした際の衝撃的な表情を捉えたカットや、ティーンエイジャーになった現在、同じ部屋で『ピンク・オペーク』を食い入るように見つめるマディを、横から神妙な面持ちで見つめるオーウェンの姿も描かれている。
ほかにも、憂鬱な様子で学校の廊下を歩くオーウェンの後ろ姿をバックに、エピソードのタイトルやキャラクターのイラストがピンク色でビビッドに描かれるシーン、さらにはオーウェンとマディが「入りたい」と願うテレビが炎に包まれて燃え盛る印象的なカットなど、本作が持つダークでビビッドな世界観が随所に散りばめられている。中毒者続出のオリジナリティあふれる本作に、さらなる期待が高まる場面写真だ。
映画『テレビの中に入りたい』は、9月26日より全国公開。