劇場アニメ『ひゃくえむ。』より、その多彩な魅力を、原作、アニメーション、キャスト、音楽の観点からピックアップして紹介。

徹底的に深掘りし、注目ポイントを届ける。

【写真】劇伴レコーディングはニューヨーク・ブダペスト・東京で実施

 魚豊による同名の漫画連載デビュー作をアニメ化する本作は、陸上競技の世界で、「100m」という10秒に満たない一瞬の輝きに魅せられた者たちの狂気と情熱を描く。

 声の出演は、生まれつき足の速い“才能型”のトガシを松坂桃李、トガシとの出会いから100m走にのめり込んでいく“努力型”の小宮を染谷将太が演じる。監督は、長編1作目の『音楽』で「アニメ界のアカデミー賞」と名高い米アニー賞ノミネートをはじめ、国内外の多数の映画賞で高い評価を受ける岩井澤健治。

 公開に先駆けて、本作の多様な魅力をピックアップして紹介する。

■『チ。ー地球の運動についてー』魚豊の連載デビュー作!

 全8巻の単行本が累計発行部数500万部を突破し(2025年2月時点)、NHK総合でテレビアニメが2期連続で放送された『チ。―地球の運動についてー』。地動説を証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの生き様が描かれ大きな話題を呼び、今年10月には舞台化も決定するなど、漫画家:魚豊は今最も注目される新鋭作家の一人だ。

 そんな魚豊の“原点”ともいえる連載デビュー作が『ひゃくえむ。』。原作は、アプリ連載からスタートし、当初単行本化の予定はなかったが、SNSの反響を受け、単行本化が決定するなど多くの読者を惹きこんだ話題作だ。
陸上100mを舞台に繰り広げられる、トガシと小宮の2人の主人公の情熱に満ちた生きざまと、困難や挫折の中にあふれ出る人間の生々しい行動や感情。そして「100mを誰よりも速く走れば、全部解決する」や「ちっぽけな細胞の寄せ集めの人生なんてくれてやればいい」など、自らの信念を貫き通すキャラクターたちが紡ぎ出す、思わずハッとさせられるような哲学的で味わい深い言葉の数々。まさに“魚豊作品ならでは”のたくいまれな魅力が詰まっている。“若き天才”魚豊の原点であり、観る者の心を突き動かす、興奮と感動の陸上ドラマだ。

■レースシーンは臨場感抜群! 才能豊かなスタッフ陣が作り上げる唯一無二の陸上アニメーションが極上の映画体験を生み出す

 本予告が解禁されるとでは、「走り方にリアリティがあってすごい!」「熱が伝わってくる」など、陸上100mの臨場感あふれるレースシーンに早くも注目が集まった。そんな本アニメーションは、『音楽』(20)で大きな反響を呼んだ岩井澤監督が、実写映像を基にアニメーションを制作するロトスコープ手法で制作を行う。さらに、有名陸上アスリートの方々の協力のもと、本物のスプリントフォームを3DCGで再現。それをベースに作画を行うことで、風を切るようにトラックを突き進む、迫力満点でリアリティある映像に仕上げた。

 映像以外にも、音響の効果音録音では、さまざまな競技場やグラウンドに録音部が足を運び、小学生・高校生・大学生・社会人の陸上選手の協力のもと、スパイクにマイクを装着したり、劇中と同じ状況にするために実際にトラックに水を撒いたりと徹底的にリアルさを追求。さらに、劇中に登場する“スターティングブロック”や“スターターピストル”も国内唯一の陸上競技専門メーカーであるNISHI監修のもと、細部までこだわり描いている。

 本作の公開と同じ9月には、18年ぶりの日本開催、34年ぶりの東京開催となる、「世界陸上2025」(9月13~21日)も控えるなど、本作とあわせて情熱と興奮の陸上の世界に浸りたい。

■豪華キャスト陣たちが集結! 粉骨砕身の熱量で紡ぎ出される哲学的で色濃い名言が、観る人々の心に熱く突き刺さる

 主演を務める松坂桃李と染谷将太、そしてその脇を固める豪華声優陣ら、超一流キャストの参戦も、本作の見どころの一つ。
内山昂輝、津田健次郎、笠間淳、高橋李依、内田雄馬ら、さまざまなアニメ作品で多くのファンを魅了する主役級声優の顔ぶれが勢ぞろいしている。

 主演の松坂と染谷はそれぞれ「トガシは、感情の振れ幅の大きいキャラクターですし、陸上の独特な息遣いや躍動感がどこまで表現できるのかという不安と緊張はありましたが、監督と一緒にトガシを作っていければと挑戦しました」(松坂)、「小宮は限界を知っているのに、気持ちが先走って、限界がどこだか分からなくなってしまうような人間味があって、僕自身にも響くところがあるので大切に演じたいと思いました」(染谷)と本作への意気込みを語っている。そんな、圧倒的な熱量で本作に挑む実力派の豪華キャストによって深みを増す魚豊の名セリフを浴びてほしい。

■主題歌はOfficial髭男dismの「らしさ」! 劇伴は堤博明が担当

 本作の主題歌を務めるのは、Official髭男dism。高い音楽性と心に直接響く歌詞で幅広い世代から人気を博してきた彼らが、約8ヵ月ぶりのリリースとして本作のために書き下ろしたのが、「らしさ」だ。メンバーが原作漫画に感銘を受けたことをきっかけに、豪華コラボレーションが実現。主題歌について「世の中は、絶対に敵わない相手やら、絶対に邪魔して来る自分やら、強敵に満ち溢れています。でもそれらに納得せず、慣れもせず、「絶対」に抗い奮闘する全ての人への賛歌としても、この歌を作りました」とコメント。それぞれの葛藤や想いを表現した歌詞と疾走感ある曲調が作品の世界観とマッチし、勇気をもらえるような一曲となっている。

 さらに、劇伴音楽は「東京リベンジャーズ」シリーズや「呪術廻戦」(TV第1期&劇場版)、NHK連続テレビ小説『おむすび』などを手掛ける堤博明が担当し、音楽ディレクターには『鎌倉殿の13人』『葬送のフリーレン』などを手掛ける池田貴博が参加。

 レコーディングはニューヨーク・ブダペスト・東京の3拠点で行い、ニューヨークでは現代ジャズシーンの先頭を走る新世代ドラマー、Jharis Yokleyによるドラムと、全米チャート1位を獲得したア・トライブ・コールド・クエストのアルバム『We Got It From Here... Thank You 4 Your service』にも参加し、世界の第一線で活躍するBIGYUKIによるキーボード&シンセサイザーのRECを実施。ブダペストでは『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』『パラサイト 半地下の家族』にも参加するブダペスト・スコアリング交響楽団によるオーケストラRECが実現。


 そして東京では、GLAYや氷室京介のサポートドラマーほかで第一線で活躍し続けるTOSHI NAGAIに加えて、日本のサウンドを牽引する気鋭のミュージシャンが集結。本作に登場するキャラクターたちの強い思いを表現するために、国を越えて豪華ミュージシャンが共演し、音楽面からも映画を大きく盛り上げている。

 劇場長編アニメーション『ひゃくえむ。』は、9月19日より全国公開。

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