9月29日より放送開始となる連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか/毎週月曜~土曜8時※土曜は一週間の振り返り)。ヒロイン・松野トキを演じる高石あかりと、その夫・ヘブンに扮するトミー・バストウに話を聞くと、劇中のトキとヘブンそのままに、言葉や文化の壁を越えて、楽しみながら毎日の撮影に臨むふたりの関係性が温かく伝わるインタビューとなった。

※高石あかりの「高」は「はしごだか」が正式表記

【写真】高石あかり&トミー・バストウ、初々しく寄り添う様子がかわいい!

◆トキを演じるにあたり小泉セツが書いた本を大切に(高石)

 本作は、明治時代に日本国籍を取得したラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の妻・小泉セツの半生をモチーフに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。脚本はふじきみつ彦。

 民話や昔話などを聞くのが大好きなヒロイン・松野トキを演じる高石は、2002年宮崎県出身の22歳。映画『ベイビーわるきゅーれ』シリーズやドラマ『御上先生』など話題作に多数出演し、今もっとも注目を集める女優のひとり。

 一方トキの夫となる、ギリシャ出身のアイルランド人英語教師・ヘブンを演じるトミーは、1991年生まれのイギリス人俳優。多数の賞に輝いた『SHOGUN 将軍』でマルティン・アルヴィト司祭役を務めたほか、10年前から独学で日本語を学ぶ親日派でもある。そんなふたりが、日本の朝を優しく温かく照らしてゆく。

――小泉八雲とセツ夫婦をモチーフとしたトキとヘブンを演じられるにあたって、意気込みはいかがですか?

高石:トキのモチーフとなったセツさんを知る上で、セツさんが書かれた「思い出の記」という本を大切にしています。そこにはセツさんから見た八雲さんがたくさん描かれているのですが、そこからセツさんがどう思い、どう感じていたのかというところを読み取り演技に活かしています。

八雲さんはとても自由で、正義感も強いですが好きと嫌いでしっかり分けている人なので、セツさんにはきっと大変なこともたくさんあったと思うんです。みなさんに愛される一面とまた別の一面がある中で、セツさんの八雲さんを守ろうとする強さが本当にかっこいいなと感じました。
セツさんは私の憧れのようなカッコいい女性像なので、そこをエッセンスとして取り入れていきたいなと思って演じています。

トミー:撮影をすればするほど、トキとヘブンの夫婦の関係は“青春のような愛”に感じます。なぜなら、トキさんとヘブンさんは子どものころにとても大変な時期を過ごし、早く大人にならざるを得なかった。そんなふたりが出会って、楽しめなかった子ども時代を味わっているように感じます。

ヘブンを演じるにあたっては、若々しいエッセンスを取り入れながら、正義感が強いところや彼の情熱も見せていきたいと思います。

小泉八雲さんのことを調べれば調べるほど、彼のことを尊敬しますし、彼を演じることに責任感も感じています。

――トキとヘブンの夫婦関係はおふたりの目にはどのように映りますか?

高石:参考にした『思い出の記』という本に書かれているセツさんと八雲さんおふたりが、とにかくかわいらしいなって思いました。ふたりにしか分からない「ヘルンさん言葉」という言葉で話をしたり、お互いがお互いのことを大好きで、八雲さんはセツさんを「世界一のママさん」と呼んだりしているんです。

素直に相手に気持ちを伝えてくれる八雲さんや、それを受け止めるセツさんの関係性がすごく好きなので、ぜひ見てくださる方にも、言葉が通じないことで生まれるかわいらしさも楽しみにしていただければと思います。

トミー:言葉よりもフィーリングです。別の言語を使っていても、お互いの文化さえ尊重さえすれば愛が育まれると思いました。ふたりの間には「青春の愛」があります。


高石:文化の違いや言葉が違うことでの難しさもたくさんあったと思いますが、それをはるかに超える驚き、通じ合った時のうれしさ、知らない文化を知る楽しさ、もっといろんな楽しいこともあったんだろうなとも感じました。

◆主題歌のハーモニーに感動「いつか一緒に歌いたい」(トミー)

――夫となるヘブン、妻となるトキというキャラクターの素敵なところはどんなところでしょう。

高石:ヘブンさんは、すごくいろんなものが見えていて、自分の好きな日本に来て、言語は違うけれど好きなものは好きって言える強さや、逆に嫌いって言える強さも持っている。怒るし、楽しいときはすごく笑っているし、一見自由奔放に見えますが、そんな中に自分の正義というものがあるんです。

それは誰かを守るための正義であったりするので、トキもそれを見逃さなかったと思うんです。怒っているという表面上のことじゃなくて、何を考えているんだろう?と心の中を考えた時に、きっと自分と似ているところを見つけて、共感や守りたいなという感情が生まれたのかなと思います。

トミー:トキさんは家族のためにちゃんと働いていて、親切で飾らない性格。トキさんがヘブンさんを差別せずに受け入れるところは素晴らしいなと思います。

――トキとヘブンとしてお芝居を交わされての感想はいかがですか?

高石:トミーさんと作っていくお芝居は、すごくお互いを思い合いながらお芝居できている感じがします。言葉が分からないからどうしても心で読むしかないのですが、ヘブンとトキとしてもそうですし、トミーさんと私としても、心を読み合いながらお芝居していくというのがとても印象的です。

トミー:初回のシーンはめっちゃ緊張しましたが、あかりさんのおかげで上手くいったと思います。セットでいつも笑ったり応援し合ったりして、リラックスして演じられるようになりました。


――ハンバート ハンバートによる主題歌「笑ったり転んだり」が流れるオープニングもとても素敵でした。

高石:音楽を聴いた時に涙が出そうになるほど素敵な曲だなと思いました。「『ばけばけ』に合う曲ってどんな曲だろう?」とずっと思っていたんですけど、今はもうこの曲しかないなと強く思います。

トミー:主題歌も大好き。何回聴いても飽きない曲だと思いますし、特にハーモニーが大好きで、感動しました。

高石:歌詞でいうと、最初の「毎日難儀なことばかり」が、まさに難儀で世の中をうらめしく思っている人たちを描く『ばけばけ』の世界だなと思いました。最後の「今夜も散歩しましょうか」のところも、日々小さいことかもしれないけれど笑い合えることの素晴らしさが伝わってきて好きです。

トミー:外国人としては、歌詞は読めるけど特に好きな歌詞を選ぶのは難しいです。だけど、ハーモニーがいいから大好きです。ハーモニーを学んで、一緒にカラオケで歌いたいですね。

高石:あははは(笑)。いつか歌えるようになりたいですよね。
楽しみです。

◆撮影開始から5ヵ月 お互いの魅力はどんなところ?

――役を離れて、高石さん、トミーさんとしてそれぞれの魅力をどんなところに感じていますか?

高石:5ヵ月くらいになりますが、ゆっくりと役としても人としても知っていく中で、とにかく日本のことが大好きなんだなと感じています。10年間独学で日本語を勉強されて、今も撮影中に勉強を続けていらっしゃいますし、よりもっと知りたいという日本への情熱を感じるとやっぱりうれしいですね。そこは八雲さんとすごく似ているところかなと思います。トミーさんも優しい方ですし、八雲さんに近しいところがあると思います。

トミー:あかりさんのいいところは山ほどあります。すごく優しく話してくれて、私のたどたどしい日本語にも頑張って付き合ってくれたり、簡単な日本語を使ってくれたりと、会った瞬間から波長が合う気持ちでした。

先日撮影していた時に大きなアブが飛んできたので、私はめっちゃ焦って対応できなかったのですが、あかりさんはプロらしく対処していてすごくカッコいいと思いました。

高石:(笑)。私がずっと正座していたんですけど、私の周りをアブが飛ぶので、トミーさんが一生懸命遠ざけようとしてくれたのが楽しかったです。

――撮影の合間の休憩時間にはどんなコミュニケーションを取られていますか?

高石:トミーさんは最近擬音を覚え始めていて、肩がカチカチと言っていたのでガチガチのほうが言うかなってスタッフさんも含めてお話したりしています。一緒に話していると改めて気付くこともたくさんあってすごく面白いです。


トミー:毎日のように異文化交換がありますね。

高石:トミーさんはジャーキーがすごく好きなんです。私がお土産で買ってきたジャーキーを食べ比べしたりもしました。

トミー:あかりさんにもらったジンギスカンジャーキーが美味しかった! あかりさんのお母さんが見学に来た時にもジャーキーをもらいました(笑)。

高石:トミーさんは毎回私にも「はい」ってジャーキーを分けてくれるんです。

トミー:(嫌々な顔をしながら渡すふり)

高石:仕方なく渡しているみたいじゃないですか!(笑) あと、リンゴを1個丸かじりされるのでそれを見ていると爽快です(笑)。

トミー:『DEATH NOTE』みたいにね(笑)。

――撮影でお忙しい毎日かと思いますが、お休みのリラックス方法はありますか?

高石:私は山登りに行ったりしています。自然が好きなので、自然を浴びに出かけることが趣味ですね。

トミー:ムエタイが大好きで、お休みにはキックボクシングをしに行きます。あと最近のマイブームは銭湯に行くことです。

(取材・文:渡那拳 写真:高野広美)

 連続テレビ小説『ばけばけ』は、NHK総合ほかにて9月29日より毎週月曜~土曜8時放送。
※土曜は一週間の振り返り

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